キャリアアップや生活の安定を考え、働きながら「資格」の取得を目指している人は少なくないだろう。そんな従業員をバックアップするため、株式会社KADOKAWAが3月1日に「資格」に合格したら奨励金を支給する「資格取得一時金」制度をスタートさせた。

対象となるのは正社員のほか、契約社員、嘱託社員、特務社員、継続雇用契約社員を含めた約2000人。資格は制度導入時点で116種が定められており、弁護士資格やMBAをはじめ、世界遺産検定なども含まれている。

【対象資格】
言語(英語、中国語、韓国語、インドネシア語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、
フランス語、タイ語、ロシア語)、出版(校正技能検定など)、デザイン(ウェブデザイン技能検定など)、情報処理(IT ストラテジストなど)、経営(MBA など)、法務(弁護士など)、歴史(歴史能力検定など)、世界遺産(世界遺産検定など)、旅行などの領域におけるハイレベルな資格、など全116種

従業員は現在の業務に関係なく、これらの資格に合格すれば難易度に応じて1万~100万円が支給されるという。

外国語も支給の対象となっている(画像はイメージ)
外国語も支給の対象となっている(画像はイメージ)
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なお資格の申請数は無制限で、また対象外の資格についても業務に必要と認められれば受験料を全額支給するとしており、今後はアンケートなどを通じて対象資格をアップデートするそうだ。

ちなみに同社では、他にも従業員への「学びの支援」を行っている。2021年から、学習アプリ「N予備校」でプログラミングやWebデザインなどが無料で学べる制度を導入しており、2022年3月では200人の社員が利用しているという。

学びを社員本人の将来に活かしてほしい

企業が、従業員の「学ぶ」気持ちを後押してくれる制度はとてもありがたい。ところで、それぞれの資格の奨励金の額はどうやって決めたのだろうか? また社内の反応は?

KADOKAWAの担当者に聞いてみた。


――制度導入の狙いは?会社にはどんなメリットがある?

社員の主体的な学びへのモチベーションを高め、一人ひとりの社員が自律的にキャリアを形成する一助となることです。

本制度では、社員の現在の業務にかかわらず奨励金を支給しています。今の仕事で役に立つ知識やスキルだけでなく、キャリアにおいて長期的な財産となる多様な知識やスキルを習得することで、学びを社員本人の将来に活かしてほしい、という思いからです。

「会社のためではなく、自分のための学びでいいのか?」と疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、変化の著しいエンターテインメント業界においては、会社の用意したレールではなく、自ら道を拓きレールを敷いて、活躍する人材こそが求められており、そのためには手に入れる知識やスキルも、自ら選び取ってほしい考えています。

そうした多様で自律的な人材によってクリエイティビティが自由に発揮されることが、エンターテインメント業界やKADOKAWAにとっても大きな財産になると思います。

(画像はイメージ)
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――奨励金の金額はどうやって決めた?弁護士などかなり大変なのでは?

各資格・階級の難易度や業務との関連性などを総合的に判断して設定しています。リリースで例にあった弁護士資格も含め、最大100万円と設定していますが、本制度はあくまでも取得時に支給する「奨励金」であり、資格の取得までにかかる時間や労力、費用などを全て補填するという考え方ではありません。

資格取得のための休暇制度などの予定はない

――資格取得の勉強をするため、勤務時間などを配慮することはある?

個人のキャリア形成を支援する制度のため、資格取得のための休暇制度や、勤務時間の確保を行う予定はありません。学びのための時間は社員一人ひとりの創意工夫で生み出してもらうことになりますが、会社としては、本制度を通じて社員のモチベーションアップを図るほか、今後も引き続き、DXや働き方改革を進め、自宅やオフィスなどどこでも快適に働ける環境づくりを通じて社員の学びを後押ししていきます。


――導入以降、社内の雰囲気はどう変わった?

社内のコミュニケーションツールでおこなった広報に対して、「すごい」や「モチベーションが上がる」などの好意的なリアクションが多くありました。


――ちなみに取得できなかったときの救済措置はある?

資格取得に対する奨励金のため、取得できなかった際の受験料補助などはありません。社員の皆さんにはぜひ合格に向かって頑張ってほしいと思います。

(画像はイメージ)
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なお奨励金の支給の現状は、資格取得後に申請する制度ではあるがすでに数名が申請をしているという。

この制度があれば資格を取るモチベーションは上がりそうだ。自律的にキャリアを形成することを支援する取り組みは、これからの働き方にマッチしているのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。