ここ数年、購読者に定期的にメールで情報を配信するメールマガジン、すなわち「メルマガ」の事を「ニュースレター」と呼ぶケースが増えている。

2017年にサンフランシスコに本社を置くSubstack(サブスタック)がニュースレター配信プラットフォームを開始。フェイスブックやインスタグラム、ツイッターといった既存SNSのビジネスモデルに問題意識を投げかけながら、プラットフォームではなく書き手と読者が主役となる新たな機能を提供し、順調にサービスを拡大させてきた。

この潮流の中で、日本でもニュースレター領域で起業するスタートアップが登場している。2021年10月に「theLetter」を開始した、株式会社OutNow代表取締役の濱本至(はまもといたる)さんに話を聞いた。

「メルマガ」と「ニュースレター」の違い

――ニュースレター配信プラットフォーム「theLetter」とは、どのようなサービスですか?

書き手の方がご自身のメディアとしてニュースレターを持ち、読者の方にメールとウェブ上の記事という形で同時に配信します。ブログのみの場合と異なり、手紙を書く時のように常に読者の顔が思い浮かぶという点も特徴です。

theLetter」サービス画面
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―― 「メルマガ」と呼ばずに「ニュースレター」という言葉を使うのは、なぜでしょう?

「良くない体験のリブランディング」という側面があります。日本のメルマガも開始した当初は個人が発信するものでしたが、2010年頃から企業がマーケティングのチャネルとしてメールを使い始めた事で、読者としては登録した覚えが無いのにメールが届き続けるといった、良くない体験となっていました。

一方で、今、海外でニュースレターってすごく熱いんですね。それはやっぱり、読者はそのニュースレターが読みたくて登録し、登録した人にだけ届いているからなのです。これは本来の姿なのですが、既存のメルマガは使われ方が異なってしまっています。ですので、古くからあるものですが、新しいものとしてリブランディングする意味でも「ニュースレター」という言葉を使うようにしています。

個人の「好き」を発信

――ニュースレターの書き手の方は、どのような方々ですか?

本当に色々なタイプの方がいますが、共通しているのは何かしらの個性を持っている事です。

たとえば、こちらは「高橋ユキの事件簿」という、毎日のように裁判の傍聴に通っているフリーライターの高橋ユキさんが発行されているニュースレターです。

高橋ユキの事件簿

もともと裁判傍聴マニアとしてお仕事をされていて、普段は週刊誌に執筆もされているプロのライターさんです。ただ、やはりマスメディアで伝えられる事は事件全体の数パーセント。事件が起きた時に、なぜその殺人犯が生まれてしまったのかを、裁判傍聴で周辺の人の証言を聞きながら描かれています。

――報道の仕事をしている関係者には必要な情報に感じますが、広く一般の方も興味を持つのでしょうか?

残忍な事件が起きると、その経緯を多くの人が検索し続けているんです。ニュースで見聞きする以上のことを知りたい、というニーズはあると思います。

――元々メディア企業に所属されていた方が独立して、ニュースレターを活用するといった事例もありますか?

元NHKの記者で森友・加計学園問題の取材でも有名な相澤冬樹さんが「相澤冬樹のリアル徒然草」というニュースレターを配信しています。独立後はよりご自身の名前が露出する機会が増えますが、その際に名前を冠したニュースレターの登録者数もセットで増えていくという好循環が生まれる事があります。

――たとえ有名な方でも独立してマネタイズも自分でとなると、不安な部分もあると思いますが、「theLetter」として書き手のサポートもされていますか?

我々は「書き手さん同士のコミュニティ作り」を意識してやっています。「オフィスアワー」という形でオンラインのミーティングを開催し、悩み相談はこの時間に話しましょうという機会を作ったり、ニュースレター配信以外での取り組みをお互いにシェアしています。

――書き手さん同士でつながれるのですね。

最近では、ニュースレター同士のコラボも生まれています。YouTuberの方って、お互いのYouTubeチャンネルを行き来して、コラボ動画を作りますよね。そのニュースレター版です。

濱本至さん(渋谷のラジオ「渋谷社会部×FNNプライムオンライン」)

収入は年間1000万円超えも

――金額設定について教えて頂けますか?

ほとんどの書き手さんが、無料での配信もされていて、読者はどのような内容かを把握した上で、課金に進みます。金額は書き手が自由に決められて、月額680円だったり、2000円という方もいたり。個人で活動されている場合には、収入源としても柱になってきます。収入が年に1000万円を超えている方もいます。

――広告ではなく直接課金なので、誰もが興味を持つような広いテーマではなく、深くニッチなものが成立するのですね。

はい。例えば他の事例ですと「Kostas Beauty News」というニュースレターがあります。美容代に年間500万円くらい使われている美容マニアの方なのですが、いわゆるインフルエンサーマーケティングと呼ばれるような、企業からの広告案件を一切受けないんですね。ですので、あらゆる物に辛口コメントが出来るというスタイルが支持されて、女性の方を中心に人気を集めているニュースレターになります。

――KostasさんとtheLetterはどのように出会ったのですか?

我々がβ版をテスト運営していた時に、Kostasさんに我々のサービスを見つけて頂きました。美容関係のレビューは、広告を受けてしまうと本当の事が言えなくなってしまう。ネット上で自分のやりたいことをやれる手法を探されていて、そこにニュースレターのビジネスモデルがマッチしました。

直接課金で専門カテゴリが増えてくる

――これからネット上では、多様なコンテンツ展開と収益化が両立していくのでしょうか?

実はメディアビジネスの世界には、ずっとロングテールはありませんでした。EC業界ではロングテールが成立していて、年間数冊だけ売れるという本もネット上には置いてありますが、メディアの場合は広告モデルが中心なので、10万PV以下のサイトでは収益はほとんど得られません。

しかし環境は変わってきました。個人の発信が影響力を持ち、直接課金もできる。10万人集められなくても、500人、1000人といった方から毎月500円、1000円を頂く事が出来れば、生きていけます。専門カテゴリが生き残るためのインセンティブが、これからますます増えてくるのだと、私は見ています。

――それでは最後にお聞きします、これからニュースレターを始めるとしたら、どんな方が向いていますか?

何か自分の好きなことがあって、それを誰かに伝えたいという欲求に駆られている人ですとか、あるいは周りから発信して欲しいと懇願されている方とか、でしょうか。でも、本当にどんな方でも大丈夫です(笑)。

theLetter : https://lp.theletter.jp/

渋谷のラジオ「渋谷社会部」2022年3月29日放送 / 進行 : FNNプライムオンライン編集部 寺 記夫)

寺 記夫
寺 記夫


ITベンチャーを経てフジテレビ入社。各種ネット系サービスの立ち上げや番組連動企画を担当。フジ・スタートアップ・ベンチャーズ、Fuji&gumi Games兼務などを経て、2016年4月よりデジタルニュース事業を担当。FNNプライムオンライン プロダクトマネジャー。岐阜県出身。

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