シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は救急・在宅医療の専門医で、新型コロナ訪問診療チームメンバーの「よしき往診クリニック」宮本雄気医師が、感染割合が増加中の新型コロナウイルスのステルスオミクロン株(BA.2)について解説。

症状やワクチンの有効性などオミクロン株との違いについても語る。

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ステルスオミクロンとは

ステルスオミクロンは、「オミクロン」と呼ばれる新型コロナウイルス感染症の変異株の一種になります。

なぜ「ステルス」という言葉がついているかというと、「ステルスオミクロン」の正式名称は「BA.2」と呼ばれる物ですが、この存在は2021年10~11月頃から南アフリカではすでに言われていました。

もともと「デルタ株」か「オミクロン株」かを見分ける検査にひっかからないということで、デルタ株に分類されてしまうようなオミクロンのことを「ステルスオミクロン」と言いました。

「ステルス」というのは、「光学迷彩」といった意味なので、オミクロンの検査をすり抜けてしまうので「ステルスオミクロン」という名前がつきました。

しかし、実際には日本のオミクロンの検査ではしっかりとひっかかるので、その点は安心していただければと思います。

オミクロン株との違い

一般的な「オミクロン」と「ステルスオミクロン」に大きな違いはありません。症状であったり、重症化というところは大きな違いは無いと言われています。

ただし、感染力はステルスオミクロンの方がやや高いのではと言われています。

例えば家族内感染。家族内感染は感染力の1つの指標となりますが、ステルスオミクロン「BA.2」の場合、少し高いと言われています。

東京の例では、2月末頃は10%だったのが、3月頭では20%弱まで増えてきて、4月中旬から後半にかけては7~8割がステルスオミクロン「BA.2」に置き換わると言われています。

コロナ感染3つのフェーズ

新型コロナウイルスは、皮膚に当たったからといって感染するわけではなく、鼻、口、喉の奥といった粘膜のところから侵入すると言われています。

まず、フェーズ1では、外界から入ってきたコロナウイルスが喉や肺などの粘膜の細胞の中に入ってくる。そして、一旦入って細胞の中で増殖するのがフェーズ2になります。

ウイルスが入って細胞の中で増殖するというフェーズでは、いわゆるインフルエンザのような症状が出ることが非常に多いです。

ここで終われば新型コロナウイルスもただの風邪と言えますが、そこから約1~2割の人は発症から7日前後に自己免疫による重症化が見られます。自分の免疫で炎症が起きて悪くなるというフェーズが発症から7日目ぐらいに見られるということです。

このように3つのフェーズに分けることができます。

フェーズごとの治療薬

ウイルスの侵入、侵入後の増殖、そして増えた後自分の免疫で悪くなるという3つのフェーズを紹介しましたが、一番最初の侵入を予防・阻止するための薬は、昔は抗体カクテル療法と言っていましたが、今は「抗体療法」「抗体医薬」と言っています。こういった治療がまずあります。

ウイルスが細胞に入ってしまったという段階のお薬もあります。例えばコロナの飲み薬で一時期話題となった薬も含めて、細胞内の増殖を予防する薬があります。

この2つがコロナの早期治療に結びつくものです。こうした薬は早く投与すればするほど重症化を予防できると言われています。

一方で、発症から日が経ってしまい重症化してしまった人に対しては、自己免疫で悪くなっているので、自己免疫を抑える薬、例えばステロイドを使うことが多いです。

ワクチンの有効性

まず一般的なオミクロンに対して、3回目のワクチン接種がどれくらいの効果があるか?

2回目のワクチンから半年以上経つと発症予防効果は8~9割ぐらい落ちるのではないかと言われていました。

一方で、3回目接種をしてから一番効くと言われている2~4週間くらいの間は7割ぐらいの発症予防効果があると言われています。ただ、これも時間が経つにつれて段々と予防効果は弱まってきて、2~3カ月経った頃には7~5割まで落ちてしまうと言われています。

しかし、重症化の予防効果は8~9割の高い割合で効果があると言われています。なので、ワクチンが全く無駄だというわけではありません。

コロナウイルス感染症で一番怖いのは死んでしまうことなので、重症化を予防する意味では非常に重要だと思っています。

ステルスオミクロン「BA.2」に対するワクチンの効果は、今言った、いわゆる一般的なオミクロン「BA.1」と比較してほぼ変わりないと言われています。これはイギリスなど他の国で発表されたデータですが、一般的なオミクロンと変わりないだろうと言われています。

感染対策を再確認 

感染経路のほとんどは飛沫感染、唾です。

もちろん接触感染や空気感染の可能性はゼロではありませんが、飛沫感染に比べると圧倒的に少ないと言われています。

従って、どうやったら皆で唾を飛ばし合わないかということを考えると、その1つがマスクということになります。

近い場所でマスク無しで会話をするとうつってしまうので、リスクのない範囲でマスクを着けていきましょうということです。

ただ、マスクが着けられない人も一定数います。

小さな子供や診療する中ではマスクを着けてくださらない認知症を有する方など、マスクの重要性を言葉ではしっかり理解しきれない方もいます。

そういった方々は仕方ありませんが、一方でマスクを着けられる人はマスクを着用して予防に努めることが重要だと思います。

つまらない話で代わり映えしないことこそ一番大事かなと思います。

 
記事 1 宮本雄気

【所属】
医療法人 双樹会よしき往診クリニック
【略歴】
2012年 京都府立医科大学卒業。
湘南鎌倉総合病院・京都府立医科大学 救急医療学教室などで救急・集中治療に携わり、2016年より医療法人双樹会 よしき往診クリニックにて在宅医療に従事。
その後、東京大学 医学系研究科 公共健康医学専攻を経て2021年より現所属。
2021年2月より京都府新型コロナウイルス感染症 在宅フォローアップチームを立ち上げ、全国に先駆けて新型コロナウイルス感染症患者に対する在宅医療の提供を行っている。
【資格など】
日本在宅医療連合学会 評議員日本在宅ケアアライアンス 新型コロナウイルス感染症対策班公衆衛生学修士日本救急医学会 救急科専門医NPO法人 EM Alliance 理事