出場機会を求めてJFLの鈴鹿ポイントゲッターズに移籍した、日本サッカー界のレジェンド・三浦知良選手は3月13日、開幕戦にスタメンで出場。得点こそならなかったが、競技場は大歓声に包まれた。

新天地で55歳とプロ37年目のシーズンを迎えた三浦選手は、勝利のために他の仕事をしながらサッカーを続けている若い選手たちと汗を流している。

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新たなピッチで…55歳で挑むプロ37年目

3月13日、日本フットボールリーグ(JFL)が開幕。三浦知良選手が、移籍した鈴鹿ポイントゲッターズのユニフォームを着てピッチに立った。

2月で55歳になった三浦選手は、15歳でサッカー王国・ブラジルに渡り、異例のプロデビューを果たすと帰国後もJリーグ初代MVPに輝くなど、草創期を支えてきた。しかし、2021年シーズンは所属した横浜FCでの出場はわずか1試合で、たった1分だけだった。

三浦知良選手:
試合に出られない、やっぱり悔しい。こうやってみんな気持ちが続かなくなって、やめていくのかなって。でも俺はそれが嫌だから。俺はやめないぞって、ずっとやっています

「引退」の2文字を封印して新たな戦いの舞台に選んだのは、兄の泰年さんが監督を務める鈴鹿ポイントゲッターズ。J1から4部にあたるJFLのチームだ。

三浦知良選手(1月31日の会見):
今までやってきた情熱を鈴鹿という新しい場所で、さらに自分を燃え上がらせて

日本代表の看板だった三浦選手が練習場に現れると…。

子供のファン:
カズを見に来ました

男性のファン:
鈴鹿のグラウンドにキングカズがいるというのは、それだけで嬉しい

自らゴールポストを運び、練習では自分の息子とほぼ同じ年齢の選手と激しくぶつかりあった。

「カズさんのポジティブさに感銘」米作りをしながらサッカーを続ける選手

三浦選手と一緒に汗を流すポイントゲッターズの選手のほとんどが、仕事をしながらサッカーを続けている。

ポイントゲッターズの選手A:
四日市の工場のプラント整備の会社で事務職を

ポイントゲッターズの選手B:
建設会社で働かせてもらっています

2021年にJ3リーグのロアッソ熊本から鈴鹿に移籍した、中京大学出身の坂本広大選手(26)にも、もう一つの顔がある。愛車の軽トラックに乗って、両サイド畑に囲まれた一本道を10分走らせた先には…。

坂本広大選手:
また違うピッチに。田んぼっていう後半戦

坂本選手は、サッカーを続けながら米作りをしている。この日は、5月の田植えに向けてトラクターで田んぼを耕していた。

坂本広大選手:
休みはないんですけど、トラクターに乗っている時間もリフレッシュに。サッカーから離れて無心で

坂本選手が作っている「千年米(ちとせまい)」は、普通のお米より食物繊維やビタミンEが豊富。アスリートならではの考えで、この玄米を作り始めた。「芯が残り固くなるので、しっかり水を吸わせて…」と話す坂本選手、玄米の炊き方にもこだわりがある。

坂本広大選手:
いい感じですね。穴が開いて、これがうまく炊けた証拠。全体に熱が入っている

キャンプでも他の選手やスタッフにお米をプレゼントし、喜ばれたという。

坂本選手は米作りの様子をYouTubeで公開している。その忙しい生活の支えになっているのは、8カ月になる娘の存在だ。

坂本広大選手:
時間があれば家族と過ごしたり、YouTubeで発信したり…。誰かのためになれば嬉しいし、それがサッカー選手として与えられた使命かな

今シーズンから同じチームメイトとなった三浦選手の影響は大きいと話す。

坂本広大選手:
カズさん、すごくポジティブで「どんどんチャレンジしていこう」って。「ミスしてもOK」って次に切り替えられるメンタルの部分は、すごく影響を受けています

カズダンスはお預けも開幕戦は見事勝利 挑戦は続く

開幕戦の前日、三浦選手は幼稚園にいた。クラブは専用練習場がないため、この日は幼稚園のグラウンドでの練習だ。選手たちは開幕戦に向けてリラックスしながら最終調整をした。

三浦知良選手:
いろんな所でやってますので気にならないし、グラウンドがあればサッカーはできるので。ゴール前でいい仕事したい

そして迎えた、開幕戦のラインメール青森戦当日。開場1時間前から、会場には早くも長い行列ができていた。

男性ファン:
来たのは朝6時

男性ファン:
当然、カズさんとポイントゲッターズの開幕勝利を見に

男性ファン:
踊りまくってもらえるように、ゴールをいくらでも決めてもらえれば最高

この日は、クラブ史上最高の4620人のファンが会場に。

新天地で新たなシーズンがスタートした三浦選手は、センターフォワードで先発出場。前半から激しく競り合い、スタンドを湧かせた。後半20分で途中交代し、待望のカズダンスはお預けとなったが、チームは2得点。完封勝利を飾った。

三浦知良選手:
兄でもあり、監督でもあるヤスさんに先発で使ってもらって。勝利がヤスさんも欲しかったと思いますし、僕も欲しかったので。勝てたことは本当に嬉しかった

三浦泰年監督:
18歳の選手だけが成長するわけでなく、55歳の選手も成長しなければいけない。プロの監督として強い信念をもってやれば、カズを活かすことが必ずできると信じてやっていきたい

鈴鹿ポイントゲッターズと三浦選手の挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。

(東海テレビ)

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