世界が認めた「クラフトジン」。 ウッディな香りに秘められた物語に迫る。

地方の魅力を“香りに込めて” 

紀州材のスギ・ヒノキから、高野山の霊木まで地元の素材を香り高い“クラフトジン”に。 
地域発信の新たなカタチとは?

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「和歌山を蒸留する」をコンセプトに県内素材にこだわった商品づくりを行う酒造メーカー「中野BC」。

開発したクラフトジン「槙-KOZUE-」には、世界遺産「高野山」で、霊木として大切にされ、希少価値の高い針葉樹 「コウヤマキ」が使われている。 

ファーストクラスのおしぼりに使われるほどの香りの良さが特長の「コウヤマキ」。

その香りをお酒に生かすのは難しく、中野BCは5年もの歳月をかけ研究を重ねた。

その末にたどり着いたのが、温州ミカン、レモン、山椒の3つの和歌山素材と共にアルコールに漬け込み、手作業で丁寧に攪拌、バランスのとれた香りを引き出すという方法。 

世界で初めて食用コウヤマキを使用したクラフトジンの商品化に成功した。

木の香りが強く、森林浴をしているような、森の中にいるようなすごく香りが高いクラフトジン。

さらに、地元特産の南高梅を使った梅スピリッツや、紀州材のスギ・ヒノキを使ったジンも作った。

――なぜ県内素材にこだわる?

ジンの開発を担当 中野BC西日本地区営業 課長・西浦啓木さん:
郷土愛しかないですね。和歌山は本当に自然豊かな県、ボタニカルにも豊富なところに恵まれていたおかげでそういった考え方、発想になった

日本で作られたジン、特にクラフトジンの輸出額は2021年に25億6600万円と過去最高を更新。

そんな海外人気を追い風に、「KOZUE」はフランスで開かれたコンテストで金賞を受賞。

さらに、イタリアで開催されたイベントで世界的なバーテンダーが「KOZUE」を選んでカクテルを作るなど、和歌山こだわりの香りは世界で高い評価を得ている。

ジンの開発を担当 中野BC西日本地区営業 課長・西浦啓木さん:
地域活性にゆくゆくつながるような商品を育てていきたいということもありましたので、できるだけ身近なところから素材を集めている。地元素材をもっともっと活用して、世界で認めていただくような蒸留酒を販売して行きたいなと思っております

原材料にまつわる“地域ストーリー”がカギ

三田友梨佳キャスター:
和歌山の素材にこだわったクラフトジン。マーケティングや消費者行動を研究されている鈴木さんの目には、どのように映りましたか? 

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
世界のジン市場は、この10年で140%以上も拡大しています。 なかでもボタニカル、地域に根ざした植物由来の素材などにこだわったプレミアムなクラフトジンが世界的に流行しています。 こうした競争の激しいクラフトジンでブランドを築くためには口が喜ぶ美味しさに加え、耳を傾けたくなる地域のストーリーが鍵になります

三田友梨佳キャスター:
なぜ、地域のストーリーがブランド価値の向上につながるのでしょうか? 

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
もともとアルコールは価値を創造する上で文化的な側面が重要な要素となります。 例えば、和歌山のクラフトジンは、高野山の霊木として大切にされてきた「コウヤマキ」が使われていますが、このボタニカルについては、高野山を開いた弘法大師・空海が、山で利益につながる花や果物などの栽培を禁じたため、香りのよい「コウヤマキ」が聖なる捧げ物となったという言い伝えがあるようです。 こうした物語、原材料にまつわるストーリーが、消費者の感性に訴えかける差別化のポイントとなりブランド価値の向上へとつながるのです

三田友梨佳キャスター:
日本のクラフトジンがグローバル市場でさらに評価され、成長していくといいですよね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
日本には4つの季節があり、各地の食文化も豊かなので、それぞれの地域からユニークなクラフトジンを生み出せるポテンシャルがあります。 日本の文化的商品の創造力が世界に認められ、プレミアム市場で日本のプレゼンスが高まっていくと良いなと思います

三田友梨佳キャスター:
お酒の一つ一つにも地域の風土や歴史が詰まっているんですね。 香りと味と物語、その魅力を伝えていくことで世界に向けても市場は更に広がっていきそうです

(「Live News α」3月24日放送より)