オミクロン株と物価上昇で大幅下方修正
財務省が3月11日に公表した「法人企業景気予測調査」によると、2022年1月から3月までの大企業の景況感は3四半期ぶりのマイナスだった。
この調査は2月15日を基準日としたもので、オミクロン株の感染拡大真っ只中。
また、ロシアによるウクライナ侵攻(2月24日)前にはほぼ回収し終わったものだが、財務省担当者は「実態的なウクライナ情勢の影響についての声はなかったが、先行きについては世界経済の不透明さ、原油をはじめとした資源価格の動向を心配する声はあった」と話す。

調査は約1万1000社が答えたアンケートを集計したもの。うち約3700社が大企業、2900社が中堅企業、4300社が中小企業だ。

予測から大きな下方修正になり、大企業の景況感は3四半期ぶりのマイナスに転じた。
中でも目立つのは食料品製造業で、今回37.9ポイントのマイナスだった。
原料の仕入れ価格の上昇と、オミクロン感染拡大による外食の需要減が響いているという。同様の理由で飲食店などのサービス業や、運輸・郵便業もマイナスになっている。
一方で、自動車や半導体関連、建設業は好調でプラスだった。

財務省と内閣府は、来期(4月~6月)の景況感について、大企業と中堅企業はプラスに転じると予測している。オミクロン株の感染の落ち着きや、半導体などの供給の制約が緩和されるとみている。
一方で、ウクライナ情勢を受けた原油などの物価の上昇については不透明で、2022年度の全企業の経常利益については0.3%の減益の見通しを打ち出している。

賃上げにつながるか?利益配分のスタンス
また、この調査では利益配分の考え方も各企業に聞いている。

内訳を見てみると、大企業は「設備投資」の重要度が最も高く、次に「株主への還元」「内部留保」がつづく。
一方で中小企業では「従業員への還元(=賃上げ)」を最も重視している。
内部留保とは利益剰余ともよばれ、企業の利益から税金や株主への配当金などによる支出を除いて残った分を指す。財務省は以前から、「企業が内部留保を減らさずにため込んでいる」と指摘している。
岸田政権が進める賃上げ政策。新型コロナやウクライナ情勢など先行きの見通しが不透明な今、どこまで従業員への還元にまわせるか注視したい。