プーチン「50%くれれば逮捕しない」と“ビジネスパートナー”に

ウクライナへの侵攻で様々な面からの“制裁”がされているロシア政府。そのような中で、プーチン大統領を公私に渡って支える存在「オリガルヒ」の大富豪たちをめぐって、離反を示唆するような動きも。彼らに今、何が起きているのでしょうか。

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筑波大学 中村逸郎教授:
プーチン政権の元で、富を築いてきた財閥の人たち。巨額の利益を得てきた集団の人たちです。
 

「オリガルヒ」とは、ソ連崩壊に乗じて石油や鉄鋼などの国営企業を安値で獲得し、財をなしてきた新興財閥のこと。中村教授によると、プーチン大統領の権力維持を支える見返りに、「オリガルヒ」が自分たちの既得権を維持・拡大してきたといいます。

筑波大学 中村逸郎教授
筑波大学 中村逸郎教授

そこで、めざまし8が話を聞いたのは、かつてロシアで外国人投資家として活動したビル・ブラウダー氏。2005年にオリガルヒらが絡む大規模不正事件を暴露した後、入国を拒否されてしまった人物です。プーチン大統領とオリガルヒの関係についてこう話します。

かつてロシアで投資家として活動 ビル・ブラウダー氏:
元々オリガルヒは、ロシアを支配していました。プーチンが大統領になったとき、彼の目標はオリガルヒを排除することでした。最も裕福なオリガルヒを逮捕し、残りのオリガルヒは「何をすれば逮捕されずに済むか」とプーチンのもとに来ました。プーチンは50%のお金をくれれば逮捕しないと言いました。彼らを抑え、ビジネスパートナーにしたのです。
 

プーチン大統領は、オリガルヒたちと密接な関係を築いて個人資産を増やす一方で、オリガルヒたちもプーチン大統領を通じて、政治的影響を強めてきたといいます。

プーチン大統領の側近として、我が世の春を謳歌してきたオリガルヒ。その生活ぶりを追いかけると、桁違いの富豪ぶりが見えてきました。

資産“約8500億円”も…ウクライナへ寄付金「侵攻を把握」か

まず、“プーチンの料理人”エウゲニー・プリゴジン氏です。プリゴジン氏は、ロシア国内で高級レストランなどを数多く経営。クレムリン宮殿御用達のケータリングサービスも運営していることから「プーチンの料理人」とも言われています。2006年に、ロシアでG8サミットが開かれた時には、各国首脳が居並ぶワーキングランチに顔を見せ、プーチン大統領からの信頼の厚さをうかがわせました。その資産は、146億ルーブル、日本円でおよそ206億円に及びます。

“プーチンの料理人”エウゲニー・プリゴジン氏
“プーチンの料理人”エウゲニー・プリゴジン氏

次に、ロシア有数の資産家のアレクセイ・モルダショフ氏。ロシア最大の鉄鋼会社「セベルスターリ」の会長で、世界鉄鋼生産者協会の副会長も務めています。2020年、ロシアメディアが発表した億万長者ランキングでは、1位を獲得。その資産は、1100億ルーブル、日本円でおよそ1550億円です。

そして、プーチン氏の“黒い金庫番”とも呼ばれるゲンナジー・ティムチェンコ氏。プーチン大統領の旧友です。民間投資ファンドを立ち上げると、ロシア国内や東ヨーロッパなどに投資し、莫大な利益を得ています。さらに、ROC・ロシアオリンピック委員会の副委員長も務めていて、スポーツ界にも大きな影響力を持つ人物です。その資産は、なんと6048億ルーブル、およそ8500億円にものぼります。

“黒い金庫番”ゲンナジー・ティムチェンコ氏
“黒い金庫番”ゲンナジー・ティムチェンコ氏

一方で、こんな富豪も。元石油王のロマン・アブラモビッチ氏です。2003年、イギリスの名門サッカーチーム「チェルシー」を買収した人物です。しかし、3月になって突然「現在の状況から、クラブを売却することを決定しました」とクラブチームの売却を発表。

それによって得たお金は、ウクライナのために寄付すると発表したのです。ウクライナ侵攻を把握していたのではないかと言われています。ウクライナ侵攻8日前にアブラモビッチ氏自らが海外企業に持っていた分の名義を自分名義に変更。これで売却しやすくなった可能性があるとされ、ウクライナ侵攻の8日前の動きということで、プーチン大統領側から情報が来ていたのでは、と取り沙汰されています。

プーチン大統領の資産に関係…“停戦”呼びかけるオリガルヒも

新興財閥のオリガルヒ。なぜ彼らは、これほどの巨万の富を築くことができたのでしょうか。ブラウダー氏によるとオリガルヒの資産の全てが彼らのものではないといいます。

かつてロシアで投資家として活動 ビル・ブラウダー氏:
オリガルヒは、ビジネスパートナーであり、プーチンの資産管理にも関わっています。オリガルヒは、プーチンのためにお金を持っていて、例えばオリガルヒが200億ドル保有していても、100億ドルはプーチンのものなのです。
 

オリガルヒを隠れみのに、自身の富を増やし続けていると指摘されるプーチン大統領。そうした中、世界各国で、オリガルヒの資産凍結に向けた動きが本格化しています。イタリア政府は、経済制裁としてオリガルヒがイタリアに所有する船や別荘など、少なくとも1億5300万ドル、日本円でおよそ177億円の資産を押収しました。こうした各国の動きについて、ブラウダー氏は。

かつてロシアで投資家として活動 ビル・ブラウダー氏:
今後、数ヶ月の間に、オリガルヒはヨーロッパにある資産を全て凍結されると思います。プーチンがウクライナ侵攻を強めるにつれて、さらに多くの資産に西側の措置が取られるため、オリガルヒにとって非常に厳しい事態となるでしょう。
 

プーチン大統領のみならず、オリガルヒにも強まっている世界の包囲網。その結果、盤石を誇っていた両者の関係にも亀裂が入り始めています。

ロシアの富豪の1人であるオレグ・デリパスカ氏は、SNSで「平和が極めて重要!停戦交渉を引き延ばすのはおかしい」と発信。軍事作戦をやめないプーチン大統領に反対するかのように早期の事態終結を訴えたのです。そして、ミハエル・フリードマン氏は「両親はウクライナ国籍。ロシアとウクライナの人々に愛着がある。現在の紛争は両方にとっても悲劇だ」などと言っています。
さらに、海外メディアによるとオルガルヒたちが海外に脱出している動きもあるといいます。かつては「懐刀」だった大富豪たちから徐々に距離を置かれ始めたプーチン大統領。しかし、ここにきて、新たな強硬策に出ました。

筑波大学 中村逸郎教授:
反戦活動をした人を拘束します。ウクライナの戦場に送るという法案なんです。今審議中なのでそれが採択されてプーチン大統領が署名したらすぐ発効ですよ。反プーチン運動も広がっている中で見せしめというか、もう脅しです。
 

プーチン大統領を支えた国内の土台も決して盤石とは言えず、締め付けを強めている状況です。

(「めざまし8」3月9日放送)