暮らしの息遣いが心に豊かさを与えてくれる、根強い人気となっている“ビンテージ”の世界。今、住環境に取り入れようという人が増えている。

広島市中区住吉町のビルの2階にある店舗。
中に入ると、椅子や器などの雑貨が並んでいる。

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ここ「Shinktank」は、ビンテージ家具や雑貨のセレクトショップ。
特に椅子は、イームズなど「ミッドセンチュリー」と呼ばれる20世紀中頃に作られた貴重なものが数多くある。

しかし、このお店は家具や雑貨だけを扱っている訳ではない。
ドアをよくみると…「広島ビンテージマンション」の文字。

一体、どういうことなのか?

Shinktank・赤木伸さん:
私の考えるビンテージマンションの定義としては2つあって、築40年とか30年とか古い時代に建てられた建物なので。立地のよさと管理、メンテナンスの2つを満たしていれば、ビンテージマンションと定義しています

中古マンションでありながら、年月がたっても色あせない良質なマンション。
それが、赤木さんのいうビンテージマンション。

ここは、そんな「ビンテージマンション専門」の不動産店だ。
赤木さんは、ビンテージマンションには、今の物件にはない魅力があるという。

Shinktank・赤木伸さん:
時代の余裕が感じられるのがひとつの要素で、余裕のある作りであったりとか、バルコニーの広さであったりとか、今では使われない材料、建材だったりとかも、古いマンションの魅力のひとつだと思っています

丸いガラスにロビーの吹き抜け…魅力は“当時の贅沢な作り”

実際のマンションで、その魅力を教えてもらった。

Shinktank・赤木伸さん:
玄関のエントランスが丸い。湾曲したガラスを作るだけでも、かなり手が込んでいる証拠

Shinktank・赤木伸さん:
こちらのロビーは、普通なら2階部分も部屋を作りますが、あえて作らずにガラス張りの吹き抜けにしたところも、当時の贅沢な作り

デパートのようなガラス張りのエレベーターや、上から見るとVの字の形になっている建物など、今のマンションではなかなか見ることはできない。

実際に住んでいる花田夫妻は、築年数を経ているからこその利点があると言う。

花田将資さん・志織さん夫妻:
ピカピカの新品というよりも、こういう感じの方が住んだ初日からリラックスできる。周りの人も長く住んでいる人が多くて、安心感もありますし

とはいえ、中古のマンションに抵抗がある人も多いのでは?

Shinktank・赤木伸さん:
今は、古いものに対しての固定概念がない人も増えてきていると思う。環境問題だったり、壊せばゴミが出るとか。古いものを残していこうという風潮も出てきているのかなと思います

戸建住宅の場合、築後20年で価格はほぼゼロになるなど、新築が大好きな日本人。

しかし、国土交通省が2013年に「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」を開くなど、新築一辺倒だった日本の住宅事情も変わりつつある。

写真の冊子も作成 「カッコよく撮る」にこだわり

ビンテージマンションの魅力を伝えるため、赤木さんは空き時間を使って、マンションの撮影を続けている。

Shinktank・赤木伸さん:
仕事とは別で、ただマンションの写真を撮りたいというか。窓が並んでいる所だけのアップだったり、空を7割にして建物が3割くらいだったりとか。古いマンションをいかに味のあるようにカッコよく撮るかということは考えて撮影しています

こうして撮影した写真で冊子も作った。
赤木さんが考える「ビンテージマンションの魅力」がいっぱいに詰まっている。

こちらの宮本一家は、そんな赤木さんの思いに共感して、ビンテージの物件を購入した。

宮本竜太さん:
古いんだけれど、それが味にも見えるよっていうのを、その冊子からなんとなくメッセージが伝わって。何もリフォームせずに、傷とかついたまま、そのまま生活しています。人が使ったものをそのまま繋いで使い続けるのもいいなという思いもあって、そのまま使い続けています

宮本竜太さん:
以前住まわれていた方と顔合わせすることもあったりとか、お話する機会もあって、この人の所ならそのまま使い続けたいというのがわかって…

「100年以上もつ建物に」新たな視点で“価値”を

建物の歴史を受け継いでいくビンテージマンション。
建物には個性があり、すぐに好みの物件が見つかるとは限らないため、家を探す人とのマッチングが難しいという側面もある。

Shinktank・赤木伸さん:
多い人で、25件とか物件を見た方もいます。内覧の回数を重ねる方が僕としてはうれしいです。効率は全然考えていないですね

一般的に価値が下がる、築30年以上のマンションに新しい視点を与えることで、100年以上長持ちして欲しい。「ビンテージマンション広島」というプロジェクトには、そんな赤木さんの思いが込められている。

Shinktank・赤木伸さん:
もっと建物自体の魅力に気付いてもらって、自分たちが知らない後世の人たちに残すような動きをしてもらいたいですね。そうすれば、もっともっと良いビンテージマンションが出てくると思います

(テレビ新広島)

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