この円形のお菓子売り場を見たことがあるだろうか。量り売りでお菓子を販売する、通称「回るお菓子売り場」だ。
静岡市の松坂屋静岡店に設置されている回るお菓子売り場は、3月23日をもって引退することになり、昔を懐かしむ人でにぎわっている。

回るお菓子売り場 正式名は「Gram(グラム)」

番組MC:菰田玲子
地下の食品売り場の一角に、「回るお菓子売り場」があります。ここに立つだけで子供のときのわくわくした気持ちを思い出しますし、色とりどりのお菓子が回っているのを見ると大人でも楽しい気持ちになりますよね

こちらの回るお菓子売り場、正式名称は「Gram(グラム)」と言う。

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アメやキャラメル、ポップコーンなど、好きなお菓子を量り売りで買うことができ、値段は100g当たり税抜で200円か250円。
子供たちがお目当てのお菓子をみつけると…

子供:
このまえ食べた!

子供:
あった!

回るお菓子売り場を前に目が輝く子供たち
回るお菓子売り場を前に目が輝く子供たち

気になるものをかごの中に。なんと言っても、回るお菓子の中から自分の好きなものを選ぶ楽しさが魅力だ。

この回るお菓子の歴史は古く、松坂屋静岡店では開店当初の1971年から現役で活躍し続けてきた。

しかし、春からの店舗の大規模リニューアルに伴い、やむなく廃止に。51年の歴史に幕を閉じることとなった。

回るお菓子売り場…その歴史は?

回るお菓子売り場「Gram」を製造しているのは、名古屋市に本社を置く菓子メーカー「松風屋」だ。全国の回るお菓子売り場のほとんどが松風屋製で、1959年に最初に導入されたのは名古屋市の名鉄百貨店だった。

昔の回るお菓子売り場(小田急百貨店町田店)
昔の回るお菓子売り場(小田急百貨店町田店)

松風屋の担当者:
昭和33年頃、先代の会長がフランスのスーパーで、小さな円形のアイスクリーム販売台を見かけました。それは固定式で、まわりをお客様が移動して好きな物を買う形式でしたが、これを見て販売台自体を回転させ、お客様が止まったままでもいろいろなお菓子が回ってくる売場にしたら、今までにない面白い売場になるのではないかと思いつき、回転機能を持ったお菓子陳列什器を開発しました

好きなお菓子を「計る」楽しさと、「選ぶ」楽しさを提供するのがコンセプトだったという。
ちなみに当初の名前はGramではなく、100種類程のいろいろなお菓子を提供するという意味で「V100(バラエティ100)」だったそう。

1980年代の「V100」 中央には店員の姿が
1980年代の「V100」 中央には店員の姿が

1980年代の売り場の写真を見ると、中央に店員さんが立ってお菓子を量ってくれるシステムだったのがわかる。値段も最初は100g60円だったが、時代とともに現在の100g200円か250円に変わった。

人気のお菓子は?

売られているお菓子は松風屋オリジナルのものから、他メーカーのものまであり、時代とともに変遷している。

(Q.なかでも人気のお菓子はありますか)
松風屋の担当者:
足の形をしたべっこうアメの「足形べっこう」は昔から販売しており、定番の人気商品になります

定番の人気商品「足形べっこう」
定番の人気商品「足形べっこう」

しかし最盛期は全国200店舗にあった回るお菓子売り場も、現在は松坂屋静岡店を含め約32店舗にまで減ってしまった。

松風屋の担当者:
回転台が大きい分、売り場面積をとるため、他の店舗を入れにくいことが理由と考えられます。今回の松風屋静岡店の引退に関しては、とても寂しく感じております。しかしながら、これまでの長い間続けてこられたのは、多くのお客様のご支援・ご愛好のおかげだと考えております

祖母や母の思いとともに...

松坂屋静岡店にはSNSで引退を発表して以降、昔をなつかしみ別れを惜しむ多くの人が売場に詰めかけている。

引退公表後、客が増えた松坂屋静岡店
引退公表後、客が増えた松坂屋静岡店

(Q.どんなことを思い出しますか)
買い物客:
小さい頃は毎週街中に行くのが休みの楽しみで、家族4人で来て、必ずここで買う。ずっと(最近は)来ていなかったので、いつでもあると思っていたので、なくなってしまうなら絶対来たいと思いました。家族との思い出があるので感謝しつつ。天国にいるおばあちゃんとも一緒に来ている気持ちで、思い出がいっぱいあります

祖母との思い出を語る客
祖母との思い出を語る客

別の客:
病院に通ってたんですよ、それが嫌で。頑張ったご褒美に、母がここに帰りに連れてきてくれた。これが楽しみで病院に来ていた

若い世代の客:
こういうの新鮮なので、なくなるのはさみしい

松坂屋静岡店に設置されたメッセージボード
松坂屋静岡店に設置されたメッセージボード

引退を発表した後の売上げは以前の10倍に。店側は、思い出のメッセージを書き込めるコーナーを設置した。
中には長い時間をかけて書き込む客も…

(Q.たくさんメッセージ書いていましたね)
メッセージを書いた客:
母の思い出がいっぱいあるので、昔一緒に買い物に来てお菓子買ったりとか。なくなっちゃうの、さみしいなと思って、きょう来ました

松坂屋静岡店・木庭英之さん
たくさん思い出があったと思うので、最後のお別れにたくさんいらっしゃっています。ひっそりと全国から姿を消す回るお菓子売り場が多い中で、日本一愛された回るお菓子売り場として、最後は盛大にみなさんと一緒にお別れをしたいという気持ちでやっています

目移りしてしまうほど、たくさんの種類のお菓子が並ぶ
目移りしてしまうほど、たくさんの種類のお菓子が並ぶ

回るお菓子の稼働は3月23日まで。メッセージの受付は15日までで、集まった思い出や感謝の言葉たちは売り場に飾られ最終日までお菓子とともに回る。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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