新型コロナウイルスの影響で、さまざまな業界が対応の変化を強いられている。
「ゴミ処理」の業界もその一つ。
使用済みマスクなどがリサイクル用のゴミに混入し、従業員は感染リスクと隣り合わせの環境の下で、神経をすり減らしながら業務にあたっている。

資源ゴミが運び込まれる工場にある「異変」が

大型の運搬車が次々に到着しているのは、北九州市八幡西区にある、産業廃棄物の収集と中間処理を行う西原商事。
中でも第7工場は、福岡全域や佐賀からリサイクルされる大量の資源ゴミが運び込まれる「重要拠点」。

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西原商事施設課・平嶋敏彦課長:
今の時期で20トン半ばくらいから、真夏になると50トン近く入ることになります。基本的には、ビン・カン・ペットボトル、それとさまざまなものですね

西日本最大級の処理能力を誇るこの工場では、コロナ感染の拡大とともにある「異変」起きているという。

西原商事施設課・平嶋敏彦課長:
中には、マスクとかPCR検査キットとか流れてきますので

リサイクルされる資源ゴミの中に、使用済みのマスクなどが多く混じっている。

こうしたコロナ関連のゴミは、その多くが自動販売機の横に置かれた「リサイクルボックス」に、ルールを守らず捨てられたもの。
リサイクルできない使用済みのマスクは、「異物」として手で分別する必要があり、従業員は日々、感染のリスクにさらされているのだ。

分別ラインに流れる廃棄物を消毒する装置導入

このため会社では、九州でも感染が広がり始めた2020年の春、新たな装置を導入した。

西原商事施設課・平嶋敏彦課長:
ここはですね、分別ラインに流れる廃棄物を消毒しているところです。

(Q.ゴミを消毒?)
西原商事施設課・平嶋敏彦課長:

そうです

従業員を感染から守るための消毒装置。コロナ前には全く必要がなかった設備だ。

西原商事施設課・平嶋敏彦課長:
うちの工場のメンバーの安全確保のために、次亜塩素酸をまいて消毒しているところです

分別作業を担う15人のチームリーダーを務めているのは、フィリピン人のマリテルさん。

(Q.ここで働き始めてどれぐらい?)
マリテルさん:

もう3年になります

(Q.コロナになってゴミの出し方は変わりました?)
マリテルさん:

全然、変わりましたね。周りの機械で消毒していますから、安心して働いています

この工場では、マリテルさんをはじめ、在留資格を持つ4人のフィリピン人が働いている。
外国人の労働力は、ゴミ処理の現場でも欠かすことのできない大きな力となっている。

(Q.もし工場内でクラスターなどが発生してしまった場合は?)
西原商事施設課・平嶋敏彦課長:

うちの本社とか各工場、まだメンバーがいますので、そちらの要員から移動してもらって運営する。とにかく毎日、荷が止まることがないので、工場自体止められないんで、回し続けることが僕たちの使命なんですね。どうにかこうにか回しています

ビンの分別にAIロボット活用へ

気を抜けない感染リスクに加え、日々の作業負担を減らすため、この会社はさらに特殊な装置の導入を進めている。

ドーワテクノス・山本弘隆さん:
ビンやペットボトルを選別する際に、ロボットで自動で吸引して廃棄するロボットです

世界的に知られた産業用ロボットの大手である安川電機の関連会社・ドーワテクノスと共同開発したAIロボット。4台を同時に稼働すれば、1分間に120本のビンを分別する能力がある。

資源ゴミとして集められたビンは大きさがバラバラで、中に飲み残しが残っていることも多いため、リサイクルのための分別は手作業で行っているのが現状だ。

また、カンなどと違ってベルトコンベヤーでの運搬中に割れて破損することもあり、従業員がけがをする要因の一つとなっている。
ビンの分別にこのAIロボットを活用すれ、作業の効率が向上すると同時に、従業員の危険を減らすこともできる。

西原商事は、4月から稼働する新工場にこのロボットを導入する計画で、国から「環境未来都市」に選ばれている北九州市も「コロナ禍の課題解決」の取り組みとして注目している。

西原商事HD・成田詩歩さん:
現場でも新たな開発でも常に改善、また発展というのを考えて。安定的なサービスを提供したいという気持ちで全社一丸でやっています

コロナ感染のリスクと向き合いながら、ゴミ処理の分野で日々の暮らしを支える人たち。
ルールを守らない捨て方が、その負担を増やしていることを、1人ひとりが認識することが必要だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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