各国が開発とシェア争いにしのぎを削る次世代産業のひとつであるEV(電気自動車)をめぐり、トヨタやソニーなど日本企業に新たな動きが出始めている。

日本のEVは世界で戦っていけるのか。BSフジLIVE「プライムニュース」では、EVの現状に詳しい方々を迎え、産業の行く末について伺った。

ソニーがEV参入 自動車産業はモビリティ産業に変容

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新美有加キャスター:
日本がEVの国際競争に勝つための可能性と課題について。1月4日にはソニーがEV市場への本格的な参入の検討を発表しました。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
ソニーだけではなくアップルも数年前から参入が既定路線といわれる。デジタル革命の中、自動車産業がITで変わりモビリティ産業となる流れに乗ることが一点。もう一点、従来の自動車産業では、企画して、作って、売って、修理するという一連のバリューチェーンを自動車メーカーが垂直統合してきたが、EVによってこれが水平分業化する。それぞれに別の会社が入る。企画するだけでバリューチェーンをとることも可能になる。ソニーは2024〜25年にも売り始めると思います。

反町理キャスター:
製造から販売網まで、あと2〜3年でできる?

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
自分たちでゼロベースの開発をすると時間がかかりすぎる。最初の一歩は自動車メーカーと協業する可能性が高い。話し合いがあると噂になっている日本の自動車メーカーが何社かある。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
ソニーはエンターテイメント、映像や音響技術などを得意にしている。センシング技術もある。それらをうまく取り込み、既成概念を取り払ってユニークなものを作りたいという発想だと思う。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
参入を聞いたときは嬉しかった。日本はEVにおいて海外に後れをとっていると言われていたが、そこにソニーのような、電気自動車に必要な技術を持った日本のリーディングカンパニーが参入した。

トヨタはEV販売目標の上方修正で「環境軽視」の誤解払拭

新美有加キャスター:
トヨタはこれまで世界における新車の販売台数について、2030年にEVとFCV(燃料電池車)を合わせて200万台を目標としていたが、EVだけで30車種・350万台と大幅に引き上げました。これはやはり環境を意識しての方向転換なのか、他にも背景はあるのでしょうか。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
トヨタはずっと環境を大切にしてきた会社で、考え方が変わったわけではない。2030年の二酸化炭素排出量の削減目標を各国が上方修正し、世界中の自動車メーカーが新しいEV戦略を発表していたとき、トヨタだけがちょっと外れた数字を発表してしまっていた。メディアもトヨタ対世界の流れという対立の構図を見せていた。誤解を払拭したのが350万台の発表。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
国や地域、所得のレベルによって購買層は変わる。それに対応していくのが従来のトヨタの姿勢。EVについては負担も大きく、我慢比べという面もある。

反町理キャスター:
オンライン会見で豊田社長は「自動車産業の75%が外注部品で、2次3次と多くの関係会社に支えられている。エンジンのみで部品供給をしてきた会社にとっては死活問題」と発言。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
当然出てくる大問題。EVのマーケットはちゃんと日本の企業が取りながら、部品メーカーに事業転換をどこまでうまくやってもらえるか。歪みが生じるところに最大の手当てをしていくということ。ガソリンスタンドにまで影響しますから。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
中小企業は同業他社や異業種と組むことも必要だと思う。従来のように技術を抱え込むのではなく、オープンにしていくこと。また地域の大学、高専、工業高校などと産学連携をして知恵を出し、他の分野にも進出していく努力も要る。

反町理キャスター:
EVとして、どれぐらいの値段・走行距離の自動車が出てくるのでしょうか。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
トヨタの「bZ4X」で500万円ぐらいでしょう。走行距離については、400kmから500kmぐらい走らなければ競争の軸には乗ってこない。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
ただ充電に時間がかかる問題からは、なかなか脱却できない。やはり大電力で充電するシステムが本格的に普及してこないと。バッテリーの規格の平準化も研究したことがあるが、なかなか各社の都合が調整できない。

ヨーロッパは環境よりビジネス、裏の目的はトヨタ排除

新美有加キャスター:
ここからはEVを巡る各国の戦略について。各国は地球温暖化対策の一環としてEV化を推し進めています。EUは2035年にハイブリッド車を含むガソリン車・ディーゼル車の新車販売を事実上禁止。EV化に最も積極的に取り組んでいるのはヨーロッパという印象。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
環境問題に非常に敏感なのだが、日米自動車交渉の経験からすると、絶対にそれだけではない。ヨーロッパはハイブリッド車もダメと言っている。明らかにトヨタを排除する裏の目的がある。国益をかけた駆け引き、競争でもある。

齋藤健 自民党 衆議院議員
齋藤健 自民党 衆議院議員

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
ヨーロッパは今、再生可能エネルギーに振っているが、電力消費が増大する中でそれが本当に想定どおりにいくかどうか。エネルギーの持続可能性の問題。彼らはボロが出る前にとにかく全員同じレールの上に乗せたい。そしてまた得意のルール変更をする。コロナによる経済への大打撃もあり、どちらかといえば環境よりビジネスになってきた。これに乗ってはいけない。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
ヨーロッパはなるべく域内に工場を集めてバッテリーを生産しようとしている。域外からバッテリーを持ってくるのはダメというルールを作ろうとしている。

反町理キャスター:
化石燃料のポテンシャルが高いアメリカの事情は、ヨーロッパと全然違う。アメリカはどういうスタンスをとるか。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
気候変動対策をアメリカが本気で進めると、最初に経営危機を迎えるのはGMやフォード。だからアメリカでは、経済安全保障を確立するために保護主義的な動きが出てきている。ただバイデン政権が非常に脆弱になってきており、なかなか国家としてひとつの方向に突っ走る感じではない。

中国の国を挙げてのEVブランド強化は脅威

新美有加キャスター:
中国はEV化という大きな変化を飛躍のチャンスに変えようとしています。2017年に発表した計画では自動車強国の建設を推進するとしており、2025年までの計画目標を掲げています。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
新しい電気自動車のマーケットを考えたときには大変な脅威。日本も国を挙げた取り組みを加速していかなければ、という気持ちは非常に強くあります。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
中国国内については、だいたい3500万台ぐらいの市場になると思います。世界の35%ぐらいは中国。ただメンテナンスの問題があり、持続可能性にはかなり疑問がある。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
技術力のないメーカーを絞り込んで20社以下にするのが中国の目標。ブランド力を高め、世界の市場に打って出るストーリー。我々も備えなければ。

全方位戦略はトヨタのみ、日本企業は多様なニーズに焦点を当てよ

反町理キャスター:
トヨタの全方位戦略の話があった。柔軟にマーケットに対応できる一方、あえて悪く言えばどこで勝負するのか見えないとも感じます。日本の今後のEV戦略はどうあるべきか。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
現時点ではそれでいいと思う。アメリカの場合は、多く出てきたベンチャーなどの企業がそれぞれに挑戦するので、潰れるケースが出てもしょうがないとなる。しかしトヨタのような規模では、一本に絞って失敗したというわけにはいかない。

反町理キャスター:
他にトヨタのようにできる会社は?

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
トヨタしかない。EVとハイブリッドの2つに絞りこむと言っているホンダや日産は厳しいところにいる。一方、スバルやマツダは生き残りやすい。ニッチなニーズとして残るガソリン車マーケットには小さな方がより対応しやすい。生き残れる道筋は、少なくとも10年〜15年ぐらいはある。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授:
世界のマーケットは、所得も車の使い方も多様でニーズが違う。そこに焦点を当てれば生き残っていける要素はある。EV化といっても今日明日で劇的に起こるわけではない。

大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授
大聖泰弘 早稲田大学 名誉教授

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
先進国を中心に議論が進んでしまいがちだが、インドもアフリカも状況はだいぶ違う。日本とドイツぐらいしか作れない優秀なエンジンの技術を捨てるという議論はおかしい。ポテンシャルは間違いなくある。

新美有加キャスター:
視聴者の方から。「日本は火力発電に頼っているため、電力需要が増えると二酸化炭素削減につながらないのでは。発電体制もセットで議論する必要がある」。

齋藤健 自民党 衆議院議員:
その通り。400万台が電気自動車になれば、夏場ピーク時にはさらに原発10基分、火力発電所20基分が必要になる。再生可能エネルギーとセットでなければ、温暖化対策のEVという議論は成り立たない。

反町理キャスター:
視聴者の方から。「今日はEVの話に終始したが、FCV(燃料電池自動車)の方が走行距離、充填時間、日本の優位性を考えれば進めるべき」。

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト:
日本のものづくりやエネルギー戦略上、非常に重要な戦略の一環。長期的視野に立って真剣に取り組むべき問題。水素が低コストで供給できれば、2035〜40年ごろには乗用車にも燃料電池車の可能性はある。

BSフジLIVE「プライムニュース」2月16日放送