“畜産王国”の鹿児島県 大隅地方。しかし、家畜の餌となるトウモロコシや大豆は、ほぼ全てを輸入に頼っているのが現状だ。そんな中、餌の国産化を目指した取り組みが始まっている。

飼料価格が高騰 国産化の第一歩は「麦」

鹿児島県南大隅町にある畑で、40cmほどの大きさに育った麦。

 
 
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南州エコプロジェクト・石松秋治会長:
うれしいですね。この年になると子どもは大きくなったが、なんだか(畑を)子どもを見るような目で眺めてしまう

こう話すのは、大隅で豚や牛を6万頭以上飼育している農場を経営する石松秋治さん。実はこの麦は、家畜飼料の国産化のために育てられている。

石松さんの農場の様子。豚が食べている飼料は原料をほぼ全て輸入に頼っていて、石松さんの農場だけでも1日120トンの飼料が使われている。

提供:南州農場
提供:南州農場

挑戦の背景には、この飼料価格の高騰もあった。

南州エコプロジェクト・石松秋治会長:
飼料が高騰している。コロナ禍や世界情勢などいろいろあるので、飼料がこの先輸入できなくなるかも分からない。そういったリスクがある

コロナ禍や世界情勢の不安も
コロナ禍や世界情勢の不安も

「肉のおいしさに感動」移住者の若者たちと

南州エコプロジェクトは、錦江町の中学校跡地で活動している。2021年7月、国産の飼料作りのため石松さんが立ち上げた会社だ。

縁の下の力持ちとして働くのは、福岡からIターンでやってきた2人の若者。大野徹さんは、鹿児島の肉のおいしさが一つの決め手となって移住したという。

南州エコプロジェクト・大野徹さん:
南州農場のおいしい肉を食べたときに、この肉の元になる餌を自分の手で作っていくと考えたら、早くこっちに来て仕事しなきゃなと

“肉のおいしさ”が移住の決め手の一つ
“肉のおいしさ”が移住の決め手の一つ

南州エコプロジェクト・大野徹さん:
福岡からこちらへ来て8kgくらい増えました、体重が。30人から50人ぐらいの規模で、大隅地域全体を盛り上げられるような団体にできたら

農家との交渉や広報を担当するのは、樋渡拓哉さんだ。

農家との交渉や広報を担当する樋渡さん
農家との交渉や広報を担当する樋渡さん

南州エコプロジェクト・樋渡拓哉さん:
人と話すのは嫌いではないので、初めて行ったところで「福岡から若い人が来た」と話してくれたりするとうれしい

耕作放棄地で新しい農家を育てる

南州エコプロジェクトでは、国産飼料の原料を育てる場所にもこだわっている。使われなくなった畑「耕作放棄地」だ。

南州エコプロジェクトでは、大隅にある耕作放棄地を借り上げ、既存の農家や新しく農業をしたい人に飼料作りに参加してもらう。国産の飼料を作ることで、耕作放棄地の解消や農業人口の減少という地域課題の解決も狙っている。

南州エコプロジェクト・石松秋治会長:
すごい勢いで輸入飼料が高騰しているので、5年後、10年後には国産の飼料と変わらないくらいの価格になる可能性は十分あると思う。今、大隅半島には荒廃農地がたくさんある。あと問題は、それを誰がやるかだ

南州エコプロジェクト・石松秋治会長:
私どもは人手が足りないので、都会から「関係人口」を増やしていこうと。それによって地域がどんどん活性化していけばいい

国産飼料は2022年秋の初出荷を目標に、この春から作付けが本格化する。畜産飼料の地産地消を目指して…。大隅全体を巻き込んだ挑戦が始まっている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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