2021年、鹿児島市の国道10号線で大学生が飲酒運転の車にはねられ死亡した。車を運転していた男は裁判で懲役9年の実刑判決を受けたが、その後、ひき逃げの罪でも起訴。今後、新たに裁判が開かれることになる。

事件から2月9日で1年となるのを前に、大学生の父親が鹿児島テレビの電話取材に応じ、胸の内を語った。

もう息もしていないと聞き、目の前が真っ暗に

宮崎大喜さんの父親:
1年というのが、来る度にまた思い出して。家内も私も苦しい思い

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2021年2月9日に亡くなった宮崎大喜さん(当時20歳)。

宮崎さんは鹿児島市大竜町の国道10号線で、自転車で横断歩道を渡っていた際、赤信号を無視した飲酒運転の車にはねられ死亡した。

宮崎大喜さんの父親:
朝起きて仕事に行こうと思って準備をしている時だった。事故に遭って、もう息もしていないと伺ったので気が動転して。目の前が真っ暗という感じ

鹿児島大学共同獣医学部の1年生で、馬術部に所属していた宮崎さん。この日も早朝から馬の世話のため大学に向かう途中だったとみられている。

宮崎さんは小さいころから本と生き物が大好きで、将来は「馬専門の獣医師になりたい」と話していた。

宮崎大喜さんの父親:
本を読んでとせがんできて、寝るまで読んであげたりとか。犬を飼い始めてかわいがって、散歩に嫌がらずに行ってくれたこともあって。本当に生き物が好きになってくれたことから、獣医学部に行きたいという思いも出始めたのかなと思うと、本当に僕にとっても夢をかなえさせてあげたかった

はねた車は約300m離れた場所でも別の事故

突然奪われた宮崎さんの夢。

事件から約8カ月後に始まった裁判で、車を運転していた八木優斗被告(26)は「早朝から仕事があり、代行(運転)を呼ぶ時間が惜しかった」と飲酒運転をした理由を述べた。

八木被告には懲役9年の実刑判決が言い渡され、刑は確定した。

宮崎大喜さんの父親:
殺されたこと自体も許せないし、それが9年で償われるものなのかと思うと、とてもやりきれない

しかし、この裁判では明らかになっていないことがあった。父親の手記にはこう書かれていた。

「大喜が無残な姿で道路に投げ出されたにもかかわらず、救護せずに立ち去ったこと」

八木被告は宮崎さんをはねた交差点を通り過ぎ、約300メートル離れた場所でも別の事故を起こしていた。

検察は当初、ひき逃げについては一度不起訴としたものの、父親らの申し立てを受けた検察審査会が「起訴相当」と議決。再捜査に乗り出した鹿児島地検はひき逃げについても2月1日、起訴した。

八木被告は逮捕当時「ブレーキが利かなかった」と話していて、父親は今後開かれる裁判での真相解明を望んでいる。

宮崎大喜さんの父親:
まだ振り返るのは胸が張り裂けそうで苦しいことではあるが、前回の裁判もひいたあとが争点にはできなかったので、今回起訴になったことで一つでも真実が明らかになってほしい

事件現場の近くでも…後を絶たない飲酒運転

身勝手な飲酒運転で息子を失って1年。事件のあとも飲酒運転は後を絶たず、2021年3月から2022年1月までに飲酒運転による事故が40件起きている。

中でも、1月21日には宮崎さんが亡くなった現場のすぐそばで飲酒が絡む事故が発生していて、父親はこの事故をきっかけに取材に応じることを決意したいう。

「飲酒運転がなくなれば。そして、同じように苦しむ人がいなくなれば」と、息子を亡くした父親は静かに訴える。

宮崎大喜さんの父親:
インタビューを受けたことも、少しでも伝わって共感してくれる人がいたらいいなという思いで

宮崎大喜さんの父親:
ひき逃げの事に関しても、飲酒運転の事に関しても、世間に少しでもやってはいけないんだと伝わったら。もう二度と同じような思いで苦しむ人がいなくなったらいいなと思う

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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