「国・自治体企業を挙げて、2月のできるだけ早期に一日、100万回までペースアップすることを目指して、取り組みを強化してまいりたいと思います。」

7日 予算委員会で「1日100万回接種」という具体的な目標を掲げた
7日 予算委員会で「1日100万回接種」という具体的な目標を掲げた
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岸田首相は7日の衆議院予算委員会の集中審議で、初めて「1日100万回接種」という具体的な目標を掲げた。

政府関係者によると「今のペースでいけば、今月中には1日100万回は達成しそうだ」と話していて、実現可能な数値目標を掲げることで、なかなか進まない3回目接種の加速を図る狙いがありそうだ。

自衛隊の大規模接種と職場接種は“頼みの綱”?

1月31日再開 自衛隊大規模接種会場 東京・大手町
1月31日再開 自衛隊大規模接種会場 東京・大手町

現時点で接種人数の増加が見込めそうなのが、自衛隊による大規模接種と職場接種の拡大だ。

自衛隊による大規模接種会場については、東京会場で1日あたりの接種人数が、2月10日から1日あたり5040人に拡大される。しかし自衛隊の大規模接種の拡大だけでは、「100万回」の100分の1にも満たないため、接種加速化に向けた象徴的な意味合いが強いと言えよう。

職場接種については、7日の岸田首相の指示に、経済産業相や国交相、農水相に対し、それぞれの省庁が所管する業界の企業に積極的な職場接種の活用の働きかけが盛り込まれた。さらに、国家公務員についても、治安・災害等に当たる職員から順次、接種を進める方針が示され、まさに官民あげての接種拡大を掲げた形だ。

自治体接種の課題は…「目詰まり」「過去の混乱」「モデルナ製」?

しかし1日100万回接種達成に向けては、何より自治体での接種によるところが大きい。1月から岸田首相は3回目接種が進まないことについて、自治体接種の現状について「どこに目詰まりがあるのか」と細かく確認し、危機感を強めていたと政府関係者は語る。

ただ、政府関係者は、自治体接種が思うように進まない理由は「目詰まり」だけではない、と指摘する。背景として、「1、2回目接種の際に予約が取れなくなり混乱したことから、配送スケジュールに沿った、接種できる量の範囲で予約を受け付けている」との自治体の事情があり、その点では接種の人数を「むしろコントロールできている」というのだ。

一方、首相官邸の関係者は、3回目接種に活用されているモデルナ製ワクチンについて、「副反応が強いのでは」との懸念から不人気であることを「深刻だ」として、“霞が関の裏事情”を明かす。官邸幹部が各省に対して「首相自ら3回目はモデルナを打つと明言しているのだから、政務三役(大臣・副大臣・大臣政務官)にもモデルナを打たせるように」と檄を飛ばしているというのだ。

不人気?モデルナ製ワクチン
不人気?モデルナ製ワクチン

カギは接種券の配送か。いよいよ65歳未満も本格化

7日に岸田首相が初めて掲げた「1日100万回」という具体的な目標によって、ワクチン接種は加速するだろうか?官邸幹部は自治体が発送する接種券をポイントに挙げる。「体制はできているのだから、1日100万回接種はできると思うが、接種券が来ないとどうにもならない」

ある自治体では2回目接種を行った時期に合わせて3回目の接種券を発送している。例えば去年7月1日から10日までに接種した人の接種券は6カ月の間隔を明け、今年1月26日に発送し、7月11日から20日までに接種した人の接種券は1月31日に発送するといった形だ。

しかし、この自治体も去年7月21日から31日に接種した人の接種券については、今年の2月2日に発送を前倒し、今後も前倒しでの発送予定を発表している。住民にとっては、発送スケジュールを自治体のホームページなどで確認する必要があり、「いつ接種券を受け取れるのか」わかりにくい状況となっているともいえそうだ。

4日「イット!」に出演した堀内ワクチン接種担当大臣
4日「イット!」に出演した堀内ワクチン接種担当大臣

先行している高齢者接種について、堀内ワクチン接種相は4日に出演したフジテレビ「イット!」で「接種を希望する高齢者が2月まで打ち終えられる体制を、全国1741ある自治体のうち97%がつくっている」として、高齢者の3回目接種のゴールは見えていると語る。

接種の対象の中心が、いよいよ65歳未満に移るこれからが、岸田政権のワクチン接種計画と遂行力の真価が問われるときといえるだろう。「打ちたい人が打てる」環境を政府と自治体が連携して、どのように整備していくのか。コロナとの戦いに占める接種の重みが大きいだけに、打ち出した政策の行方をしっかりと見極める必要がありそうだ。

(政治部 杉山和希)

杉山 和希
杉山 和希

義理と人情とやせ我慢を大事に取材に励みます
報道局政治部 首相官邸&麻生派担当。1992年岐阜県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、2015年フジテレビ入社。「情報プレゼンターとくダネ!」ディレクターを経て現職