親鳥の後を追いかけるひな鳥たちの様子を見かけたことがあるだろう。癒やされる光景だが、いま動物園で撮影された、シナガチョウの様子が「かわいい」と話題になっている。

それが、動物園巡りが趣味のまめさん(@mamefish4)が東武動物公園で撮影した約15秒の動画。最初に登場するのは、台車に乗った白い大きなガチョウの置物だ。

大きなガチョウの置物が登場(提供:まめさん)
大きなガチョウの置物が登場(提供:まめさん)
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そして、後ろからひな鳥のように追いかけているのはシナガチョウ。「クワァークワァー」と鳴き声をあげながら姿を現した。

数が多いものの一羽も集団から外れることなく、懸命に先を行くガチョウの置物を追いかけているようにも見える。

置物の後ろを行くシナガチョウたち(提供:まめさん)
置物の後ろを行くシナガチョウたち(提供:まめさん)

このシナガチョウの様子を見たまめさんは「散らばることなく付いて行く様子はとても利口だと思い、何より愛おしいです!」と話していた。

またTwitterでも「可愛すぎます」「保育園かな?」「思ってた以上にいっぱいいる」といったコメントが寄せられ、5万9000のいいねがつく話題となっている(2月15日時点)。

ガチョウの置物に先導されているわけではない

これは東武動物公園で毎週土曜日に行われる「ガーガーウォーキング」の様子だそう。

では毎回、この大きなガチョウの置物が先頭で歩いているのだろうか? そもそもなぜシナガチョウは列を乱すことなく、追いかけているのだろうか?

東武動物公園・動物園事業部のガチョウ担当・石井貴清さんに聞いてみた。

ーーそもそもシナガチョウとはどのような鳥なの?

シナガチョウは、サカツラガンという鳥が家畜化された種なので野生にはいません。体長は40~60センチ、体重は4~5キロ程あり、当園ではキャベツや、白菜、水鳥の餌や鶏はい(鶏の餌)等を食べています。

特徴はくちばしの根元にコブがあります。よく鳴くので番犬の代わりになり、羽は布団やダウン、ジャケット、バドミントンのシャトル等になったりします。

シナガチョウ(提供:東武動物公園)
シナガチョウ(提供:東武動物公園)

ーーなぜ、そのシナガチョウは先を行くガチョウの置物を追いかけていた?

追いかけているように見えますが、旗を持っているスタッフが(後ろから)追っているので歩いています。

シナガチョウたちは(ガチョウの置物に)先導されているのではなく、通路に沿って進んでいるだけです。置物から音が出るのでスタッフが先頭を歩き、通路確保の役割もしています。


ーーこのガチョウの置物は一体なに?

高さ約140センチに、重さは感覚で80キロくらいのものです。ウォーキングのために作られたものだと思います。音楽機器に繋げて音が出るようになっています。ウォーキングの際には毎回使用しています。

通路確保の役目も担っているという(提供:まめさん)
通路確保の役目も担っているという(提供:まめさん)

ーースタッフが後ろから追いかけているということは、ガチョウの置物でなくてもいいということ?

(他のものでも)何でも大丈夫です。


ーー柵などはないようだが、飛んでいったり列から外れてしまったりはしないの?

シナガチョウは4~5キロ程あるので、元々飛んでいくことは出来ません(一瞬飛ぶことは出来ます)。また、旗を持っているスタッフが誘導しているので、列から外れることはありません。

ウォーキングは基本、先頭を行くガチョウに先導され進みます。後ろから飼育係が旗の付いた棒で、時には追う感じで進みます。道から外れそうになった際は、後ろから飼育係が棒で外れないようにプレッシャーをかけます。

実は後ろからプレッシャーをかけられていた(提供:まめさん)
実は後ろからプレッシャーをかけられていた(提供:まめさん)

なお旗を使用するのは、旗はなびくためシナガチョウたちにも分かりやすいといった理由からだという。

訓練は必要なし。本能によるもの

ーーそもそも、なぜシナガチョウを散歩させているの?

お客さまに喜んでいただくためです。約30羽で行進するので迫力もあります。シナガチョウたちは実際のところ喜んでいないのかもしれません。追われているので歩いているのだと思います。


ーー何歳頃からウォーキングに参加しているの?訓練はしているの?

訓練は必要ありません。生後半年~1年程で先輩ガチョウたちと歩きます。集団でいる事で安全と安心感を持てるため、そのような動きになります。本能です。

(提供:東武動物公園)
(提供:東武動物公園)

ーー旗を持つスタッフは何人いるの?

2名で追っています。1人で出来ない事はないですが大変です。2名以上が好ましいです。


ーースタッフはこのウォーキングを見てどう思っている?

ガチョウの行進は羽数が多ければその分圧倒されます。そして、やっぱりかわいいです。


ーー最後にシナガチョウの魅力を教えて。

人になれやすく、餌もたくさん食べてくれます。歩き方やお尻もかわいいです。水に入っている優雅な姿も魅力的です。

(提供:東武動物公園)
(提供:東武動物公園)

ひな鳥のように後を追いかけているように見えていたが、重要な役割を担っていたのは、ガチョウの置物ではなく後ろから誘導する旗を持つスタッフだった。ウォーキングを見る際には、シナガチョウのかわいらしいお尻と共に、後を追うスタッフに注目してみるのもいいかもしれない。

ガーガーウォーキングの後ろ姿(提供:まめさん)
ガーガーウォーキングの後ろ姿(提供:まめさん)

なお東武動物公園は現在123羽のシナガチョウを飼育している。毎週土曜日に行われる「ガーガーウォーキング」では、特に元気のある子を優先して約30羽が参加。15~20分ほど園内を歩いているという。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。