地方都市で問題となっている商店街のお客離れ。長崎市内の商店街でも、人口減少や高齢化などから客足が遠のく傾向にある。

そんな中、市北部の住吉中園商店街でポスターを使ったユニークな町おこしが始まった。

ダジャレに合成写真も 遊び心たっぷりのポスター

「ヤジもヤキも本場仕込み」と、アツアツのたこ焼きを作る店主の姿は、熱狂的な野球ファンだと一目で分かる。

一方、アゴだし唐揚げでおなじみの店には、顔のマッサージを受ける女性と唐揚げの写真に「アゴにもこだわり つやもいい。」と、シャレの効いたポスターが。

アゴだし唐揚げ店に貼られたユニークなポスター
アゴだし唐揚げ店に貼られたユニークなポスター
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住吉中園商店街のいたるところで目にする、ダジャレや合成写真を使った遊び心たっぷりの“おもしろポスター”だ。

2020年12月のGoTo商店街事業の一環として企画・デザインをはじめ、看板製作やTシャツプリントなどを手掛ける一ノ瀬卓さんの事務所が企画した。

「アート・ワン」代表 一ノ瀬卓さん:
このポスターは数年前より他県で話題になっていて、お店の特徴を表す個性的なポスターを作って活気づけようと、いろいろな商店街でやられています

おもしろポスターを企画した「アート・ワン」代表の一ノ瀬卓さん
おもしろポスターを企画した「アート・ワン」代表の一ノ瀬卓さん

ポスターは、パッと目を引くインパクトのあるものから、子どもたちが「酒まんじゅう 酔うはずないのに 上機嫌」とまんじゅうを頬張る、思わず笑みがこぼれるハートフルな1枚も。また、立ち止まってじっくり読み込みたくなるようなものまで様々だ。

クスッと笑えるポスターも
クスッと笑えるポスターも

ポスター制作では“住吉らしさ”をより出すため、住吉に密着したまちづくり活動を行う「就労支援B型事業所 たまご」のメンバーも協力した。

「たまご」は、働きづらさを抱える人も生き生きと働ける社会を目指して、モノ作りや人とのコミュニケーションを通して新しい働き方を提案している。

今回は長崎商業高校の商業クラブも加わり、ポスター作りに参加した。

「たまご」井谷浩一さん:
たまごの事業所の利用者さんと高校生とで一緒に話し合ってもらって、なるべく一目で分かって面白さが伝わるように、商店街の人たちの良さが伝わるような感じで作っていきました

住吉に密着したまちづくり活動を行う就労支援施設メンバーも参加
住吉に密着したまちづくり活動を行う就労支援施設メンバーも参加

「たまご」光永由佳里さん:
インタビューのところから一緒に高校生も関わっていただいて。そのお店を知るっていうところから始めて、そこから写真を撮ってもらったりとか。そういうことも高校生と一緒に作っていった

第1弾は一ノ瀬さんの「アート・ワン」で10店舗。「たまご」と高校生が10店舗を担当して、計20店舗のポスターを作った。

「アート・ワン」代表 一ノ瀬卓さん:
ここは総菜屋さんですけど、隠れた人気メニューとしてドーナツが結構出ている。某有名店さんにもちょっと負けないドーナツなので、「ミセスドーナツて呼んでくれんね」という形で作りました。反響はそれなりにありまして、ドーナツがさらに売り上げを伸ばしてくれる、そういう声はいただいております

ポスター効果でドーナツの売り上げもアップ
ポスター効果でドーナツの売り上げもアップ

「かっこよか!」反響も上々 みんなが笑顔に

おもしろポスターは、商店街の人たちにも好評だ。

精肉店:
うれしかったですよ!女子高校生たちが写してくれてね。お客さんがポスターを見て「かっこよかですね!よか男ですね」って褒めてくれる。それで肉も買っていかないとって、買っていかれる

精肉店のポスター
精肉店のポスター

――お肉の売れ行きは?

精肉店:
売れています!牛肉が特に売れています。おいしいです!黒毛和牛です。以上!

たこ焼き店:
結構みんな、じーっと見ていますね、店頭に出したときは。ウチは一応、阪神ファンのカラーで出しているので。それと大阪の食べ物、たこ焼きと結び付けて「ヤジもヤキも本場仕込み」と感じにしたんですけど、意外と皆さん「面白い」と言って見てくれていますね

たこ焼き店:
以前、ウチは電車通りの2階にあって。ちょうど縦のラインは阪神好きな人のお店が並んでいて、同じ阪神ファンの魚屋さんもあったけど。その魚屋さんもこっちの通りに移って、ウチもこっちに移った。このラインに巨人ファンの店がいて、同じ列に阪神と巨人ファンの店がほぼ並んじゃって(笑) 最初、上手に分かれていたんですけど、今はごっちゃになってます

たこ焼き店:
いろんなお店が、いろんな個性があると思うので、それぞれが出してもらってお客さんに知ってもらった方が、商店街としても魅力は出てくると思う。そういうの面白いなって思いますよ

「たまご」光永由佳里さん:
お店が閉まってしまってシャッターとかも増えているんですけど、昔からやっている方たちが、皆さん元気でやってくれています。目立つところにポスターも貼ってくれているんですよ。うれしいですね、表に貼ってくれているので

フルーツ店のポスター
フルーツ店のポスター

鮮魚店:
すごくいい反響をもらってます。このポスターを見て皆さん笑顔になっていただいたり、「どういうお魚がおいしいの?」と言われて、そこから会話が広がる部分では、一役買っていると思います

鮮魚店のポスターには「人生安鯛」の文字が
鮮魚店のポスターには「人生安鯛」の文字が

鮮魚店:
いま商店街は、人が離れた場所になってきているんですけど、商店街一同で一生懸命頑張っていますので、よかったらぜひ来てください

さらに、プロレス好きのオーナーならではの1枚がある飲食店も。プロレスマスクを着け乾杯する客の写真に「トランキーロ!あっせんなよ!」と書かれている。

飲食店オーナー:
反応はやっぱり、ウケはいいですね。特にマスク着用っていうのが、このプロレスマスクに代わっていたりとか。あとは、プロレスファンは見たら爆笑です、これは

マスクの代わりにプロレスマスク?
マスクの代わりにプロレスマスク?

飲食店オーナー:
「トランキーロ」はスペイン語で「焦んなよ」っていう意味。プロレス団体の「新日本プロレス」のリーダーがよく言う言葉なんですよね。キメ言葉みたいな。ポスターに書いてあるように、ウチは手作りの料理をしっかり出すので、イチから作って、ちょっとお時間をいただきますので。その時は皆さん、「トランキーロであっせんなよ!」って

プロレス好きのオーナーならでは
プロレス好きのオーナーならでは

街を元気に…将来は「ポスター総選挙」も? 

「たまご」光永由佳里さん:
大事に額に入れて飾ってくれてる店舗さんとかもいらっしゃったので、すごくうれしかった。商業高校の生徒さんが、登校の時に通り過ぎるだけの町だったんだけど、インタビューをするなど関わっていく中で「もっと良さを知ってもらいたい」と言ってくれたのが、とてもうれしかった

「就労支援B型事業所 たまご」のメンバーたち
「就労支援B型事業所 たまご」のメンバーたち

「たまご」光永由佳里さん:
「たまご」の利用者さんが関わって取材に行ったことで、商店街の方から声をかけてもらうということが起こっていて、利用者さんも外に出やすくなってくる。こういう形で利用者さんが関わって、もっと町に出やすい人たちが増えてくれるといいなと思います

「アート・ワン」代表 一ノ瀬卓さん:
コロナ禍で商店街になかなか人が集まれないという状況でしたので、こういうポスターを作って、お店もお客さんもクスッと笑ってもらえるような形で活気づける、一つのパーツというか。今年、来年と、第2回、第3回と継続していけるような事業になっていけばいいかなと思います

従来からのお客離れ、そしてコロナ禍の逆風。取り巻く環境は厳しいが、メンバーは今後も事業を継続しながら、いずれは「おもしろポスター総選挙」を実施して、さらに街を元気にしていきたいと意気込んでいる。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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