予算委員会トップバッターの冒頭から
国会では1月24日から衆議院予算委員会が始まった。質疑者のトップバッターに立った自民党の高市政調会長は、冒頭から、文化庁の文化審議会がユネスコの世界文化遺産の国内候補に選んだ「佐渡島の金山」について、推薦に慎重な姿勢を示す政府側の対応を追及した。
高市氏は「佐渡島の金山」について「江戸時代に独自性を持って発展した貴重な産業遺産で、戦時中とは全く関係がない」と指摘。その上で韓国政府が、朝鮮半島出身者が過酷な労働を強いられたことなどを理由に反発を強めていることに関連し、推薦見送り検討が3月に大統領選挙を控える韓国への外交的配慮に当たるかなどについて質した。
これに対し、林外相は「韓国への外交的配慮を行うことは全くない。韓国側の独自の主張については、日本側としては全く受け入れられず、韓国側に強く申し入れを行ったところだ」と述べた。
来年の推薦になると韓国が…
さらに、高市氏は次のように指摘。
自民党・高市政調会長:
ユネスコの世界遺産委員会は、締約国のうち21カ国で構成されていて、日本も2021年11月から2025年秋まで委員国である。世界遺産委員会では委員国にのみ意思表示の権利があり、現在韓国は委員国ではない。日本政府が今年2月1日までに推薦した場合、世界遺産委員会における審議決定は23年6月。しかし、「23年秋に終了となる委員国が9カ国あり、23年秋から27年秋までの任期の委員国に韓国が立候補する可能性が高い」と外務省から聞いている。
来年の推薦、そして再来年の審議決定となると、委員国として韓国が反対するという最悪の状況を招く。その後の27年秋から31年までの任期には中国が委員国に立候補する可能性が高いことから、来年から8年間にわたり、韓国と中国による“歴史戦”に持ち込まれるということは容易に想像できる。

今年度に推薦しないと、今後、中韓による反発がより深刻になる可能性に強い懸念を示した。
「来年度に向けた戦略あるのか」
その上で高市氏は「仮に今年度の推薦を見送ることになった場合、来年度までに確実に『佐渡の金山』は世界遺産一覧表に記載できるような環境を作れる自信と戦略を持っているのか」と林外相に迫った。これに対し、林外相は「まだ今年の推薦をしないと決めたということではない。どうやったらこの登録が実現できるのかを考えながら、十分な準備をした上で検討していきたい」と応じた。
しかし、高市氏は「2月1日に日本から推薦して、世界遺産に決定するまでに1年4カ月ある。十分な準備をして進めながら是非とも今年度の推薦をできるようにお願いしたい」と今年度の推薦を重ねて求めた。
高市氏は、党内保守派の代表格。20日には同じく保守派の安倍元首相が「論戦を避けて登録を申請しないのは間違っている」と指摘するなど、自民党内で推薦見送りへの反発が広がる中、政府に対応の変更を促す狙いがあったとみられる。政府が推薦期限である2月1日までにどのような説明をするのか、注目が集まる。
(政治部)