濃厚接触者調べる「疫学調査」されず…オミクロン株急拡大で対応に自治体で格差 保健所の今【福岡発】
感染拡大… 新型コロナウイルス

濃厚接触者調べる「疫学調査」されず…オミクロン株急拡大で対応に自治体で格差 保健所の今【福岡発】

医療機関や学校を優先させるためというが…

保健所から連絡がない…。今、福岡市の保健所の対応が波紋を広げている。

福岡市内の企業の関係者:
1月18日に感染者が出た。保健所からのヒアリングがあって、そこで濃厚接触者が分かってからの対応と思っていた。保健所からの連絡はなかった

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連日、1000人を超える感染者が確認されている福岡市では保健所の対応が追いつかず、1月12日から感染者が発生した企業に対し、濃厚接触者を特定する疫学調査を縮小している。

市によると、重症化リスクの高い医療機関や高齢者施設、クラスターが発生しやすい学校などの疫学調査を優先させるためだとしているが…。

福岡市内の小学校に子供が通う母親:
「お嬢さんが通っているクラスで陽性者が出ました」と。保健所の方が回らないということみたいで、濃厚接触者の可能性が高いという認識の元に自宅待機などをしてくださいと

福岡市内の小学校に長男と長女を通わせる女性。長女のクラスで児童の感染が確認されたが、保健所の業務ひっ迫を理由に、優先されるはずの濃厚接触者の調査が実施されなかった。

感染しているかもしれないという不安を払拭するため、県が実施している無料のPCR検査を受けようとしたが、予約はいっぱいだった。

福岡市内の小学校に子供が通う母親:
(濃厚接触者の)特定ができないのであれば、自分から検査を受けたいときに検査を受けられる場所があった方がいいというのは感じた

子供から広がる家庭内感染が増加 業務ひっ迫

一方、久留米市役所の会議室では朝からひっきりなしに電話が鳴り続け、保健所の新型コロナ対策チームが対応に追われていた。

感染者の急増で多忙を極める中、いま一番ひっ迫している業務が、感染に至った経緯や濃厚接触者などを調べる「疫学調査」だ。

保健所職員:
スピードですね、感染力と。正直、本当に(感染者が)多いので、今まで通りの疫学が追えなくなってきている

オミクロン株の感染力が強く次々と感染者が確認されるため、疫学調査が追いつかない状況だという。

先週、感染が確認された男性。濃厚接触者として家族6人が検査を受け、4人が陽性と判明した。

保健師:
17日に病院に来ていただいて検査結果が出ているんですが、陽性者の方が複数確認されていて…。どうされました、落ち着いてからにしますか? 途中で話を続けるのが厳しいなと思ったら、いつでもお電話できるからいいですよ

男性の妻は、感染対策を徹底していたのにもかかわらず家庭内で感染が広がったことを知り、泣き出してしまった。陽性になったことを知りショックを受ける人も多く、時間をかけて聞き取る必要がある。

保健師:
(子どもは)最後、いつ登校していますか? 13日ですか。その日は1日、学校にいた感じですかね

この電話だけで、実に1時間以上。感染が分かった人は周囲に知られたくないとの心理も働くため、信頼を得て正確な情報を聞き取りするには、膨大な時間と労力がかかる。状況によっては、1人が1日に聞き取れるのは数人が限界だという。

保健師:
ほかの都道府県もそうであるように、倍々で増えていくから追いつかない。息切れするような感じ

久留米市では、この家族のように家庭内で感染が広がり、子どもから陽性だと判明するケースが増えてきている。

久留米市保健予防課・田中浩之課長:
年末年始にかけて、いわゆる感染拡大している地域からの往来が非常に多かったということで、家庭の中で持ち込まれて広がってる状況かと思う

久留米市内の小中高では、2022年に入って既に数校が休校。児童・生徒が感染すると、クラスメートなどを対象にした一度に多くの調査が必要となり、業務量が一気に増える。

このままでは疫学調査だけで保健所の業務がパンクしてしまうおそれがあるため、市は積極的な疫学調査を縮小し、当面は学校や高齢者施設などを優先的に調査することを決めた。

久留米市保健予防課・田中浩之課長:
例えば学校とかでやった場合は、広く検査をするよう対応しておりますので、できる限り感染を広げないような形で検査につなげたい

医師でもある所長にすべての調査内容を報告

別の自治体でも、住民の命を守るため懸命に取り組む保健所の職員たちの姿があった。午前8時過ぎ、糸島保健所の1日が始まる。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
感染者は1月17日からうちで35人。18日が39人、21日が46人

第5波での1日あたりの感染者は、最も多い日で40人前後だった。今、それ以上の波が絶え間なく襲っている。宿泊療養や自宅待機となっている感染者数は、1週間前から10倍以上に増加。中には入院の必要な人も出てきている。

成人の日の3連休をきっかけとした若い世代の感染が始まり、感染者リストの年齢を示す欄には、20という数字が並んでいた1月14日。今回、同じリストを見ると、感染者の年齢層が広がっていることを示していた。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
20代の子から引っ張ったのもあるけど、その中で兄弟がいれば…。今週は小学生とか保育園とか、その関係者が出ている。高齢者だとか(感染者の)年齢層がばらけてきた

感染者に電話をかけ、健康状態や濃厚接触者の有無などを調べる「疫学調査」。

糸島保健所では、疫学調査の内容をすべて医師でもある宮﨑所長に報告する。ときには、住民の命に関わる判断を求められることもあり、少しでも職員の精神的な負担を減らすため、新型コロナへの対応が始まった2年前からこのやり方を続けている。

そのため感染者が増えると、ひっきりなしに職員が宮﨑所長の元を訪れる。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
とにかく早く検査をして、広く検査をして、そして感染者がなるべくウイルスをまき散らす前に発見して。この人から次に行かないように、そこで歯止めをかけていくということで、この2年間やり続けている

その一方で、保健所の疫学調査を縮小する動きについては否定していない。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
あと10年だとか経ってみないと、何が正解で何が間違いかはわからない。ただ現状では、今のやり方が一番、感染拡大を防ぐということ

 

職員が調査を終えて、宮﨑所長のもとに相談にやってきた。

職員:
職場のほか3人のうち、2人が福岡市と平尾

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
なら向こう(福岡市)

職員:
向こうなんですけど、(糸島市の)職場に来てる

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
ならいい。検査しよ

感染者が出た糸島市の会社。濃厚接触者の疑いがある従業員2人は福岡市在住で、本来は福岡市で検査を受ける必要があるが、出勤していたため糸島保健所で検査をすることになった。住民のために、常に臨機応変に対応する。

しかし、どうにもできないこともある。

職員:
1月18日から症状があるそうです。行動歴は、仕事にしか行っていないということで、職場が福岡市城南区の方になります

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
そしたら職場の方に「陽性になったので、関係があると思われる人は自分で医療機関に連絡して検査を受けてください」って。保健所から連絡がいかないので

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
うちの管内だったら、検査しますとなる。逆にこっちはうちで発生したけど、福岡市に職場があるから本人で(職場に)言ってくださいと。職場の判断で検査が必要となれば、自分で電話するかたちで検査センターだったり、医療機関だったりという仕組みで福岡市は動いているので

第6波による感染拡大で、保健所の対応に大きな差が生まれていた。

疫学調査の縮小「決してそうなりたくない」

定時を過ぎても保健所の仕事は続く。この時間は、一日の中で一番、緊張が走る。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
今日午前中に検査した200ちょっとの検体の結果が、もうすぐ出ます。そこで陽性者が出たら、その陽性者の人に連絡をして。今日中じゃないと、本人が入院が必要かもしれないし、(濃厚接触者について)家族のことを聞かないと。保育園とか小学校とかであれば、明日の朝に検査を出せば、夕方の時間に検査結果が出る。その時間に陽性が分かれば、学校のどれくらいの集団の検査をするかというのをつかめる

感染者を1人でも減らし、住民の命を守る。宮﨑所長が考える保健所の役割だった。

結局この日、糸島市内で感染が確認されたのは過去最多の56人となった。

感染者が増え続ければ、いつか疫学調査を縮小せざるを得ない日はくる。宮﨑所長は、その可能性は否定しないが、決してそうなりたくないと話す。

福岡県糸島保健所・宮﨑親所長:
なりたくない。自分の仕事を否定することになる。個人的な意見だけど、だから全力でそうならないように。ありがたいことに、うちの職員はみんなそう思ってくれている。とにかく1人でも感染者を増やさないようにと、みんなそう思ってくれている。これは僕は本当に幸せ。みんなが、糸島の住民のためと思って頑張ってくれている

感染症対策の最後の砦、保健所。終わりが見えない中でも、職員たちが現場を支えていた。

(テレビ西日本)

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