競技用の義足をつけて小学校最後の運動会にのぞんだ小学生がいる。
静岡県にある市立下田小学校に通う、6年生の高木翔梧君は右足の膝から下が義足だ。
高木君は小学3年生の時、骨に悪性腫瘍ができる「骨肉腫」の診断を受けた。病状から足を切断するしかなかった。今は義足での生活を続けている。

高木君は、一般的な義足のほかに、高い反発力を得ることができる競技用の義足「ブレード」も普段の生活で使っている。
(Q.ブレードには慣れましたか?)
高木翔梧君:
すごい慣れて…最初はすごい難しかったんだけど、慣れてから使いやすくなりました

ブレードとの出会いはパラリンピックのイベント
高木君がブレードと初めて出会ったのは2020年9月。静岡市駿河区で行われたパラリンピックのイベントだった。普通の義足とは違うブレードを付けた高木君は、ぎこちなさがあるものの、頑張って駆け抜けた。

パラリンピック選手の山本篤さんからも、義足の付け方や走り方を教わり、走ることの楽しさを感じていた。

ブレード装着 初めての運動会は…
2020年の運動会。初めてブレードを付けて参加した高木君は、まだバランスが上手にとれず途中で転んでしまった。
それでも直ぐに立ち上がり、みんなの後を追いかけた。最後まで走りきることをあきらめない。
映像提供:高木舞さん
高木翔梧君:
ブレードと初めて出会って、そこから運動会とか持久走とかで使うようになって、最近はすごい役に立ってます。走りやすい方法とか、そういうのをたまに教えてもらっています
イベントが終わったあとも、高木君と山本選手の交流は続き、定期的に走り方の指導も受けた。

そして競技用義足に出会ってから1年。小学校生活最後の運動会が開かれた。
勝つぞ! 小学校最後の運動会
高木翔梧君:
小学校生活最後なので、全力を出し切ってやりたいです

最後の運動会に緊張気味の高木君。目標は赤組の優勝。
高木翔梧君:
目標は勝つことです。結構義足を付けてから速く走れるようになったので、すごい友達にもついていけてうれしいです

高木君のお母さんも応援に駆け付けた。
母・舞さん:
本人も頑張ってますし、体育の先生にもしごかれているみたいなので、かなり頑張ってやってきたのではないかなと思います。頑張ってファイトって、グータッチしてきました
目標は「勝つこと」…徒競走でリベンジ
いよいよ高木君の小学校最後の運動会が始まった。
まず徒競走からスタート。号砲とともに勢いよくスタートを切った高木君は、足を切断した方の右手を大きく振り、左右のバランスをとりながら、力強く地面を蹴るように走った。
最後まで転ぶことなく、走り抜け2位。満足のいく結果だった。
高木翔梧君:
いっぱい練習して2番だったけど、悔いがなかったのでよかったです
(Q.速かった。気持ちよかったかな?)
はい!
次の種目の大玉転がしも、クラスメイトと協力して転ぶことなくゴール。
赤組の勝利の行方は?
そして運動会の目玉、クラス対抗リレーが始まった。
2位でバトンを受け取った高木君。みんなの思いが詰まったバトンを持ち、一生懸命、前を走るランナーの背中を追った。

前のランナーは追い抜くことはできなかったが、無事に次のランナーにバトンをつなぎ、赤組は優勝した。
高木翔梧君:
最後の運動会、全力を出し切れて、優勝できたのでよかったです

将来は病気を治してくれた医療の世界へ
優勝で小学校最後の運動会を終えた高木君。中学校生活の目標を語ってくれた。
高木翔梧君:
本気を出せたから、次は中学校の運動会で本気を出して、もっと足が速くなりたいです
そして、将来は自分と同じ様な境遇の人々を助けたいと話す。
高木翔梧君:
医療系の仕事に就きたいです。自分の病気も治してもらったし、元から好きだったから医療系につきたいと思いました

さらに速く走るために。そして医療の仕事に就くために。
高木君の挑戦はこれからも続く。