新型コロナウイルスの感染拡大という厳しい状況の中でも、新しい切り口のツアーを提案し、売上げを回復している旅行会社が新潟市にある。この会社の取り組みを通して、県内観光の可能性を探った。
「歩く」を主役に…コロナ禍の旅行会社の取り組み
2021年12月に新潟市で行われたのは、かつて新潟市と燕市を結んだ新潟電鉄の跡地を歩くツアー。
この記事の画像(17枚)「一万歩倶楽部」と題したこのツアーを企画・運営しているのが、新潟市西蒲区の旅行会社トラベルマスターズ。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
今までは、山に行くにも花を見に行くにも、歩くのはサブ的要素だった。それを主役にしてみよう、そこから着想したのが“一万歩倶楽部”
社長の鹿島純一さん(61)が1995年に立ち上げたトラベルマスターズ。県外ツアーを中心に展開し、順調に業績を伸ばしていた矢先…
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
正直(売り上げ)ゼロの月もあった
新型コロナ感染拡大後、これまでに500件ものツアーがキャンセルに。2020年の売り上げは、感染拡大前の約25%にまで落ち込んだという。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
苦しいですよ、本当に。今までこんなことなかった
それでも…
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
一番大事なのは、折れない心。絶対諦めない、何か方法があるんじゃないかって
県内ツアー1本に絞らざるを得ない状況の中、まさに第5波に見舞われた2021年夏に生まれたのが、この「一万歩倶楽部」だった。
「歩いて楽しむ健康旅」をテーマに、これまで14のツアーを実施。そのほとんどが満員となる好評ぶりで、売り上げも徐々に回復。2021年は、新型コロナ感染拡大前の50%にまで戻ってきているという。
地域に伝わる歴史を学んだり、風景を楽しんだりしながら、参加者は思い思いに歩みを進めていた。
参加者:
いいですよね。歩くと気持ちいいし
参加者:
こうやって外で歩いていれば、さほど(感染の)心配をしないでいい
参加者:
こんなところがあったのかとか、発見できるので楽しい
この日、新潟電鉄の跡地を歩いた参加者が次に向かったのは、なんと船の中。
新日本海フェリーは、ウイルス禍の利用者減少を受け、2021年11月から減便。新潟港に停泊している船を活用しようと、「船内見学」と「ランチの提供」という形で、トラベルマスターズとの協力が実現した。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
困ったときはお互いさま。横の連携をとって、そこから新しい商品が生まれるんじゃないか
ワクチン接種が進むにつれて徐々に客足が戻るなど、回復の兆しが見えた2021年。鹿島社長は、県内ツアーを企画する中で、ある「気づき」があったと話す。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
(新潟の)観光の潜在的な力は、ものすごく大きいものがある。インバウンドが復活した時に、ものすごい大きな力になる
魅力ある新たな観光地発掘…アフターコロナに向けて必要なこと
この日、鹿島社長が向かったのは、新潟県と福島県の県境。一万歩倶楽部の新たな企画の下見。
新発田から会津若松に至る92kmの会津街道の一部を歩くツアーを、実際にイメージしながら歩みを進める。
新発田藩・村上藩が参勤交代に利用し、「殿様街道」とも呼ばれる会津街道。景観の美しさや歴史の深さに、新たな企画への手応えを感じていた。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
なんでここが観光地にならないのかわからない。すごくインスピレーションが湧いてますよ。こんなにいいところがあるんだね
会津街道をガイドしている阿賀まちづくり 堀口一彦さん:
本格的に旅行業を持っている方が、どんどんお客さんを(阿賀町に)呼んでもらえたら、僕もありがたい
こうして地元に目を向け、魅力ある新たな観光地を発掘することが、目先だけでなく、アフターコロナを見据えた今、必要なことだと鹿島社長は考えている。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
新潟は、見るべきものがいっぱいある。それを磨き上げて、本当に稼げる1つの商品コンテンツにしていくことが大事
「今できること」を追求し続けた2021年…謝恩会開催
2021年12月下旬、新発田市の月岡温泉に、鹿島社長の姿があった。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
きょうは謝恩会ということで。まだ秘密だが、目玉企画も
この日、トラベルマスターズ毎年恒例の謝恩会が、2年ぶりに開かれた。感染症対策のため、人数を例年の半分に制限して行われた。
あいさつを終えた鹿島社長は、なにやら控え室で化粧を始めた。これが、鹿島社長が目玉企画と話していた謝恩会名物・社員による余興。
(Q.なぜ花魁の姿に?)
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
(社員)全員一致の意見だったので
2021年に好評だった花魁の仮装を盛り込んだツアーを再現しようと、今度は鹿島社長自ら花魁姿になって、お客さんたちを楽しませていた。
こうしたお客さんと従業員の距離の近さも、トラベルマスターズの大きな特徴。
常連客:
(トラベルマスターズは)新しいことに常に挑戦して、どんどんいろんなことをやっている
常連客:
みんな明るくて、気持ちのいい人たちばかり。旅行はここしかない
地元の魅力を発掘し、新たな旅の提案をするなど、ウイルス禍でも「今できること」を追求し続けた2021年。
2022年は、その土台を大切にしながら前に進み続けたいと、鹿島社長は考えている。
トラベルマスターズ 鹿島純一社長:
お客様がイメージしている半歩先を常に考えながら、ユニークなもの、お客様にわたしたちの気持ちが伝わる、そんな旅の提供をしていきたい
(NST新潟総合テレビ)