自分の親が年老いたとき、最期まで見守る気持ちはあるだろうか。

1月特集は「毒親…悩ましい親子の距離感」。
「毒親」とは、ネグレクトや過干渉、暴力などのさまざまな行為によって、子供の成長に悪影響を及ぼす「毒になる親」のことだ。
毒親に育てられた人は、子ども時代につらい経験を受けてなぜ、老後の面倒を見なければならないのか。関わりたくない…などと考えることもあるだろう。

そんな影響からか、介護や葬儀といった家族関係の見守りをお金で“代行”してもらい、毒親との縁を断ち切るケースも出てきているという。

子が毒親の“見守り代行”を依頼する実情

その一つとして利用されているのが、一般社団法人LMNが提供する「生活サポートサービス」。LMNはもともと、介護が必要になった人を支えようと設立された組織で、毒親対策に特化しているわけではない。組織名も「生活(Life​)」「医療(Medical)」「介護(Nursing)の頭文字からとっている。

LMNの方針(LMNの公式サイトより)
この記事の画像(6枚)

ただ、この生活サポートサービスには「定期訪問、緊急時の駆け付け・同行援助」「終末期サポート」「逝去時以降の対応」なども含まれている。そのため使い方によっては、毒親でなくても見守りを全て代行してもらい親との関わりを絶つこともできるのだ。

具体的な利用の流れは、LMNの相談員と依頼者が話し合い、サポートを頼みたい範囲などをヒアリング。その要望に合ったサービスを紹介し、費用面で合意すれば契約となる。その後はLMNが業務提携先やサポーターを通じて、見守りを行う。

サービスの利用の流れ(LMN公式サイトより)

サポートの内容は多岐にわたり、介護施設の入居や在宅医療の相談といったものから、葬儀・供養、遺品整理までも頼むことができる。

費用はケースバイケースだが、例えば、80代の親の(1)医療・介護(2)相続関連(3)自宅の片付け(4)葬儀・供養(5)5年間、月1回の定期的なサポートを依頼した場合で、約100万円が目安になるという。※介護施設への入居費用などは別途必要 

LMNは2016年に設立され、2022年1月時点での生活サポートサービスの契約者は約50名。見守りの代行に関する問い合わせや相談は増えていて、中でも親と関わりたくない人が依頼するケースが次第に多くなっているという。

過干渉や暴力…親に見つけられたくない人もいる

極端な表現をすると、お金を払って“親を捨てる”ようなケースもあり得るが、LMNの代表に話を聞くと、中高年になっても苦労を抱える、毒親育ちの実情が見えてきた。

――生活サポートサービスの依頼者はどんな理由で相談・契約している?

大きく3パターンの傾向がみられます。一つ目は数年~数十年会っていない親の介護をしてほしいと親族や行政から要望があり、それが難しいというものです。 

二つ目は成人後に毒親と離れて、自分の居場所を知られたくない場合。見つけられる前に親に連絡をしてサポートをしてほしいというものです。日本では住民票の登録、戸籍はついて回り、親戚のつながりもあるので、親に子どもが探し当てられることもあるそうです。

三つ目は自分の生活で精いっぱい、自分の生活があるというものです。一つ目と二つ目の傾向で相談・契約理由の約8割を占めています。年齢は子が50代~40代、親は70代以上が多いです。依頼する皆さん、家族全体の問題と捉えていますね。

離れた子どもを毒親が探すこともある(画像はイメージ)

――毒親から離れた人はどんな状況にある?

実際の例だと、親が過剰に子どもに干渉するケースがあります。「旅行に連れて行け、物を買ってくれ」などと依存したり、子どもに関わる人を排除しようとします。パートナーや職場にまで電話をする人もいて、思うように生活できないそうです。

小さなころから暴力を受け、学校の卒業後に離れたケースもあります。そうした親は「親の介護は子どもがするもの」という方もいて、自分の主張はするけど子どもの話は聞きません。介護というよりは、親の面倒を見ることそのものが大変だといいます。
 

――LMNではどんな見守りを行う?その費用は?

基本の見守りは、24時間対応の緊急連絡先、介護から納骨までのコンサルティング、介護施設などの紹介、自宅の片付けや亡くなった際の遺品整理などの手配も行います。これらとLMNの登録料も含めて、最初にかかる費用が約33万円となります。

このほかは必要に応じて、生活サポートサービス・各種代行業務(価格は月1回、4時間・1万1000円から)を行います。使い方は人それぞれで、買い物や病院、通院のサポート、生活のお手伝い、一緒にご飯を食べる、話を聞くというものもあります。

LMNの料金体制(LMN公式サイトより)

――依頼側はかかる費用を確認できるの?

介護から納骨までを想定して、費用を10年ならこう、15年ならこうと試算を出していきます。それを定期的に見直します。契約後の費用は基本的には動いたらいくら、という形です。
 

――LMNを立ち上げたきっかけを教えて。

私は両親の最期を看取りましたが、介護が一番大変でした。どこまで頑張ればいいか、自分のお金でどこまでできるのか。時間が経てば経つほど不安になっていました。そうした相談の場になれればと、活動を始めたのがきっかけです。

「仕方ない」と受け入れる毒親も多い

――子ども(依頼側)の情報は親に伝わらない?親の体調が急変した時などはどうなる?

依頼側の個人情報は漏らしません。そこは厳守させていただきます。親の情報は、依頼側が希望すればお伝えしますがそうでなければお伝えしません。体調が急変した時なども同じで必要であれば逐一報告します。ただ、実際にはいらないという方が多いです。基本的に命にかかわるようなことは、契約時にどうするかの意思を聞きます。
 

――毒親は第三者のサポートを受け入れるの?

親の反応はさまざまです。「子どもが面倒を見てくれると思っていた」という方もいますが、毒親のような方は「自分は子にいいことはしなかった。納得はしていないが、仕方ない」などと受け入れる人も多く、きょとんとすることあります。怒られることもありますが、その場合は何回も訪問をして理解をしていただけるように努力します。

毒親がすんなり受け入れるケースは多い(画像はイメージ)

――見守りを代行することのメリット、デメリットをどう思う?

依頼側(子ども)の立場だと、心配事がなくなるのがメリット。デメリットは費用、お金がかかることでしょうか。親の立場だと、判断が難しいですね。老後は安心できるのでそこはメリットかもしれませんが…。なぜ、と思われる方もいるかもしれません。
 

――親の代行を検討している人に伝えたいことは?

私たちは親子に特化した組織ではありませんが、いろんな状況には応じられます。介護などでの心の負担は大変なものがあると思います。中途半端な対応はしませんので、毒親を含めて現状に不安があるなら、まずは相談をしていただければと思います。

 

お金を使ってでもつながりを絶つ。文字で見ると冷たく感じるかもしれないが、介護が必要になった毒親が子どもを巻き込むと、互いに傷つくようなことも考えられる。第三者に見守りを代行してもらうのは、現実的な選択肢なのかもしれない。

※LMNのサービスは関東地方、関西地方を中心に展開している。詳細や相談の問い合わせは、LMN公式サイトの専用フォーム、フリーダイヤルの電話(0120-003-867)から申し込める。

 

【親子の距離感が悩ましい…あなたの「毒親」エピソード募集!】
「聞きコミ PRIME online」に、周囲と比べると何か違う、生きづらいと感じる原因はこれかも…あなたが体験した・もしくは聞いたことがある毒親エピソードを聞かせて下さい。


・「この子は私がいないとだめなのよ」が口癖で、実家を離れた今も、毎日電話でダメ出しをされ、電話に出ないと執拗にかけてくる
・「産まなきゃよかった」が口癖の母、私が自己肯定感が低いのはその影響だ
・子供の幸せに嫉妬する親、「ああいうタイプは信用できない」と難クセをつけ、恋人と強引に別れさせられた