甲殻類の一種「ヤドカリ」は、背中の「貝殻」が印象的だ。引っ越しをする習性も有名だが、そんな中でいま、透明な器を用意することで、この内部の様子をとらえた動画が話題となっている。

ヤドカリといえば、貝殻が印象的だが…
ヤドカリといえば、貝殻が印象的だが…
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投稿したのは和歌山県にある「すさみ町立エビとカニの水族館」の公式Twitterアカウント(@ebikaniaquarium)。この水族館では甲殻類を中心に、世界から集めた150種類の生物を展示し、その一つにガラス製の貝殻でヤドカリの内部が見える展示をしている。

水族館は「クリスタルヤドカリ」と名付けていて、投稿はその様子を記録したものだという。実際の動画では、水槽内に2匹のヤドカリがいて、背中も丸見えになっているのだ。

動画では透明な貝殻を背負っている
動画では透明な貝殻を背負っている

殻にすっぽりと収まるようなイメージを持つ人もいるだろうが、動画を見ると下半身は細長く、それを殻の中で巻き付け、脚で支えるように抱えていた。

後方から見るとこんな感じ
後方から見るとこんな感じ

Twitterでは「シッポなのは知ってたけどこう見ると割とエビですね」「シッポの握力と背筋力がスゴイ。疲れそう…」などと、これまで見ていたヤドカリとのギャップが話題に。投稿には19万以上のいいねがあり、動画は300万回以上も再生されている。(1月12日時点)

“ガラス貝殻”の大きさに適したヤドカリに“引っ越し”てもらう

イメージを覆された人もいるだろうが、どのようにしてこの展示のアイデアを思いついたのだろう。透明だからこそ分かった、発見などはあるのだろうか。

すさみ町立エビとカニの水族館の担当者に聞いた。


――クリスタルヤドカリの展示を始めた経緯は?

通常のヤドカリは貝殻に入っているため、腹部などの様子を見ることができません。身体の構造や生態を知ってもらえたらと思い、10年ほど前から展示しています。ヤドカリは一緒にいるとけんかをすることがあるので、Twitterの動画では2匹いますが、実際の展示は1匹です。


――実際の展示はどのように行っている?

日本でポピュラーな「イシダタミヤドカリ」という種類を展示しています。ヤドカリは脱皮をして大きくなるのですが、それに伴い“貝殻の引っ越し”をする習性があります。そのため、ガラス製の貝殻の大きさに適したヤドカリを連れてきて、入れ替える形で展示を続けています。
※大きくなったヤドカリは一般展示に移行する

イシダタミヤドカリ
イシダタミヤドカリ

――透明な貝殻はどのようにして用意したの?

アメリカから通販で輸入しています。本来はインテリアだったようです。貝殻はヤドカリの体の大きさに合えば問題はないので、透明で入れるようなものを探して見つけました。

ガラスの貝殻
ガラスの貝殻

貝殻で普段は見えない「腹肢」とは?

――貝殻の内部が見えることで発見はあった?

ヤドカリは腹部に「腹肢」(ふくし)という、脚のようなものがあります。ヤドカリは貝殻の中で糞をするのですが、それを外にかきだしたり、雌の場合は卵を保持する役割があります。透明だからこそ、その動向を経過観察できるようになりました。

黄色い丸で囲まれているのが腹肢
黄色い丸で囲まれているのが腹肢

――貝殻が透明なことで、ヤドカリに変化などは見られた?

特に変化は見られませんでした。一般展示のヤドカリと同じような行動をとっております。


――ヤドカリはそもそもなぜ貝殻を背負っている?

他の甲殻類に比べても腹部が柔らかく、そこを守るために背負っています。例えると、お寿司に出てくる“甘えび”のような感じ。本当に柔らかいのです。貝殻の支え方は、4つの脚の後ろ2つで貝殻を支えつつ、残りの2つの脚で歩くような形ですね。

ピンク色に見えるのが卵。貝殻に守られている
ピンク色に見えるのが卵。貝殻に守られている

――貝殻を選ぶ基準や好みなどはあるの?

一般的には貝殻に入る前、脚で入口などの大きさを測ります。そして入ってみて、身体に合えば定着するような感じです。好む貝殻の傾向はそれぞれですね。大きすぎず、小さすぎず。

貝殻に入るまで(1)。入り口を確かめている
貝殻に入るまで(1)。入り口を確かめている

――話題となったことをどう受け止めている?

うれしい限りです。これを機会に甲殻類に興味をもってもらえたらと思います。


なお、すさみ町立エビとカニの水族館では、カブトガニのお腹部分見られる水槽など、普段は注目しにくいところを見ることができる展示も行っているという。ヤドカリに限らず、本当は意外な姿をしている生き物は多いのかもしれない。

(画像提供:すさみ町立エビとカニの水族館)

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。