最後の被爆地として全国に、そして世界に平和の尊さを訴えている長崎市。そんな長崎市に寄せられる「平和の象徴」を伝統工芸品に生まれ変わらせる取り組みがある。

平和の願い込めた「千羽鶴」が年間2.5トン

長崎原爆資料館。エントランスに数多く飾られているのは、平和の願いがこもった「千羽鶴」だ。

多くの千羽鶴が並ぶ長崎原爆資料館(長崎市)
多くの千羽鶴が並ぶ長崎原爆資料館(長崎市)
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毎日のように全国各地から届いている。

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
段ボールで届くのですか?

長崎原爆資料館施設マネージャー・鍋島秀幸さん:
北海道、宮城などたくさんの所から届く。この箱だけでもこれだけ入っている。結構な量

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
原爆資料館に送られる千羽鶴の1年間の量は?

長崎原爆資料館施設マネージャー・鍋島秀幸さん:
重さでいうと2.5トンくらい。紙でも一つ一つ丁寧に作っているので、それくらいの重さになる。例年320団体くらいですが、今は370団体くらいから千羽鶴が集まってきている。(新型コロナで)こちらに来られない方々がいらっしゃるから、増えていると思う

半年間の展示の後、千羽鶴は資料館の地下で保管され続ける。そして、寄せられた思いを無駄にしないように、折り鶴はある伝統工芸品に姿を変えてゆく。

折り鶴×焼き物 意外な姿に変身

その品は、焼き物の町として知られる東彼杵郡波佐見町にある。

焼き物の町・波佐見町
焼き物の町・波佐見町

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
入ってすぐのところにありました。焼き物と聞いたので皿やカップを浮かべていましたが、SDGsのバッジですね。完全な円ではなく、見た感じの優しさやファッションの馴染みの良さを感じます

波佐見焼で作られたSDGSのバッジ
波佐見焼で作られたSDGSのバッジ

折り鶴と焼き物、ちょっと意外な組み合わせのようだが、名前はストレートに「折鶴焼」という。

気になるのはその作り方。続いて訪れたのは、佐見町宿郷にある「金富良舎(こんぷらしゃ)」。

「金富良舎」 佐見町 宿郷
「金富良舎」 佐見町 宿郷

金富良舎・小柳勇司理事:
元々、焼き物には釉薬(ゆうやく)をかける工程があるが、折り鶴を灰にして、釉薬の中に混ぜて顔料として使わせてもらっている

折り鶴を灰にして釉薬の中に混ぜ、顔料に
折り鶴を灰にして釉薬の中に混ぜ、顔料に

金富良舎・小柳勇司理事:
2トントラックで、波佐見と長崎の原爆資料館を4~5往復はしている。それでもまだ足りないくらいの折り鶴がある

 
 

折り鶴の灰の匂いを嗅いでみると…

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
特別、においはないんですね。灰のにおいも感じないし、無臭。折り鶴はいろんな色があるので、バッジの17色と関係があるのかと思ったのですが、そうではないんですね。白い、地の部分の釉薬に使われていると。不思議ですね。こんなにいろんな色がある折り鶴なのに、灰にすると白い釉薬の一部に使えるんですね

モノづくりへの情熱で蘇った「折り鶴」

「折鶴焼」を作った「金富良舎」は、地元の窯元や商社などの若手が2017年に結成した集まりだ。

異業種の交流から新しいモノづくりを考えるようになり、2年前に折り鶴の灰から作るお香「千鶴香」を製作した。

その流れから「折鶴焼」も誕生。彼らの根底には平和を願う思いがある。

金富良舎・小柳勇司理事:
我々も平和学習を徹底してきた中で、それを実際に自分たちの仕事として取り組んで形に表せるというのは、すごく誇りに思える。今後はいろんな発想をしていきたいし、いろんなヒントを頂きながらモノに変えていきたい

これらの商品は、焼き物ならではの質感や手作りのお洒落さもある。

また、通常のバッジは強力な磁石を使っているため、例えば銀行員の場合は、キャッシュカードの磁気情報に悪影響があり磁石バッジは使えない。そういう人には、焼き物のバッジが役に立つという。

平和への思いを託した千羽鶴を、再び蘇らせた若者たちのモノづくりへの情熱。「千鶴香」と「折鶴焼」は金富良舎のHPなどで販売している。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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