年50回以上の座談会

「どれか当たれば」という確率ではなくて、どれだけいいものを集中して提供できるか。
人気の月刊女性誌に迫った。

定期購読のみの販売スタイルでありながら、販売部数は女性誌トップの月刊誌を発行する『ハルメク』。

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2万5,000食を売り上げるおせちや「ポケモンGO」の体験イベントは満員御礼。
雑誌の領域を超えて、新たなコンテンツを次々と生み出している、その秘訣は・・・

7月に行われていたのは、ハルメクが販売する靴の購入者との座談会。
ハルメクでは日頃から座談会を行っていて、その数は年に50回以上。

参加者:
インソールがきれいな色だと嬉しい。脱いだときに褒めてもらえる。

そこから生まれた今回のシューズは、「靴の脱ぎ履きに時間がかかるため、腰に負担がかからないようにしてほしい」という意見を反映し、ファスナータイプとなっている。

ハルメク・宮澤孝夫社長:
お客さまが本当に必要なもの、それは、お客さま自身が意識できていないもの、気づいていないものもある。お客さまにじかに触れて、そこでお客さまをある意味観察する。
"共創型コンテンツ"という仕事の進め方によって理解することができる。

顧客の声は、イノベーションのヒント

月2,000枚ほど寄せられる読者はがきなど、膨大な量の意見を社内で共有することで新たな企画も生まれた。

ある読者からの情報をもとに、自宅で簡単にできる体操を雑誌で取り上げたところ、大きな反響があった。

そこで、イベントを開催する文化事業室が、その体操の考案者を招きイベントを開催。
すると多くの読者が参加し、ハルメクの人気コンテンツとなった。

また2018年からは、移住施策を進める北海道・旭川市と連携。
これも読者や顧客を大切にする共創型コンテンツの強みを生かしたもので、旭川市に住む読者と一緒に体験ツアーを展開している。

ハルメク・宮澤社長:
"aですかbですか"ということについてはアンケートでも答えは聞けるが、(座談会などは)われわれが全然考えもしないことがお客さまと話している中で発見できる。
あとは、色んなものをたくさん作り、どれか当たればいいという確率でやるのでなく、できるだけ良いと思うものを集中して作り、それでヒット率を上げてやる。
(共創型コンテンツは)お客さんにとって価値あるものを私どもが提供できる効果がある。

“共創”こそ“価格競争”脱却のカギ

三田友梨佳キャスター:
経営コンサルタントで経営戦略やマーケティングに詳しい、ストラテジーパートナーズ代表の 西口一希さんに聞きます。
読者自身も気づいていない心の奥にある 「あったらいいな」という思いをカタチにする雑誌はどうご覧になりますか?

ストラテジーパートナーズ代表・西口一希さん:
ハルメクさんは自分たちが作りたいものではなく、まるでお客様に憑依するがごとく、お客様の視点で商品を開発されています。これは非常に特徴的ですね。

三田キャスター:
お客さんが本当に求めているものを探り当てるためにどのようなアプローチを行えばいいのでしょうか?

西口一希さん:
大勢の不特定多数に共通する平均的なニーズを探そうとするのではなく、1人のお客様と向き合い、お客様自身も気づいていない潜在ニーズをとことん深掘りすることが大切なんです。

三田キャスター:
先程のVTRでもお客さんとの会話の中から発見できることがある、という言葉がありましたが、ここに本当のニーズを探り当てるヒントがあるようですね。

西口一希さん:
ハルメクさんの話には、他企業との競争の話が全くでてきません。
一方でお客様と一緒に創る「共創」が新しい価値を生み出すということが言えると思います。

三田キャスター:
価格競争で消耗してしまうのではなく、新しい市場を切り開けると企業の成長にとって大きなチカラになりますよね。

西口一希さん:
これまでのシニア向けの商品は、年をとれば足が痛いでしょ、重いものは持てないでしょ、など明らかに見えているニーズに多数の企業がこぞって参入して価格競争を繰り返し、いつまでもデフレから抜け出せず、社員の給与も上がらない歴史が続いています。

顧客を起点とした、顧客すら気づいていない新しい需要の創造こそ、日本企業が目指す姿であり、 ハルメクさんはその素晴らしい先行例だと思います。

三田キャスター:
マーケットにおもねるのではなくて利用者のニーズにしっかり寄り添う、こうした考え方がものがあふれる時代だからこそより大切なのかもしれません。

(「Live News α」11月30日放送分)