小学校校庭の真ん中に桜の巨木

茨城県土浦市の真鍋小学校の巨大な桜。樹齢113年の巨大な桜が咲いている。

他でもなかなか見ることがない特別な桜で有名だ。

理由は、樹齢と美しい枝振り、「真鍋のサクラ」の名称で県指定の天然記念物になっている事だけではない。

木のある場所が珍しい。

小学校の桜は、学校の校門や生徒が登校する道に沿って植えられている事が多いが、真鍋小学校は違う。桜が校庭の真ん中に植わっている。

樹齢113年の指定天然記念物

「真鍋のサクラ」として茨城県の天然記念物にも指定されているこの桜は、明治40年(1907年)に、当時の卒業生によって植えられた。5本植えられたソメイヨシノは、100年以上経った今でも1本も欠けることなく、毎年美しい花を咲かせている。

ソメイヨシノの寿命は約80年程度といわれている。「真鍋のサクラ」は国内の最高齢といわれる明治15年(1882年)に植樹された青森県弘前公園の数本に次いで古い、日本を代表する老樹だ。

昭和31年(1956年)に茨城県の天然記念物に指定されたこの桜がなぜ校庭の真ん中に植えられているのか。

明治40年(1907年)5本の桜は、確かに校庭の隅に植えられた。ところがその後、地域の再開発に伴い3回にわたって校庭の拡張工事が行われた結果、「校庭の隅」がいつの間にか「校庭の中央」になったからだ。

桜が校庭の真ん中にあることで、どんな問題が起きるのか。

生徒に聞くと『最初からずっとあるから特に気にならない』という声が返ってきた。

先生は「全校児童が、きれいに整列できない」としながらも、「夏の日差しがきつい時期の体育の授業や運動会では、この桜が児童を守ってくれる、熱中症対策の強い味方だ」と話してくれた。

2012年お花見集会

桜を守るために「クローン桜」

桜を守るためには、これまで色々な工夫や努力が続けられてきた。

約800人が通う小学校。休み時間になれば児童が校庭を走り回る。桜の根が傷つかないように校庭の地中には鉄板を敷いて、栄養が取れるよう鉄板の下には肥料を敷き詰めている。行政、学校、地域住民による桜を守るための日々の努力があって、毎年満開の桜が咲き誇る。

校長は「花は綺麗に咲いているが昔に比べると枝ぶりが寂しくなっており、いつまで保ってくれるか判らない」と話す。

そんな「真鍋のサクラ」を次世代に残したいという運動も進んでいる。平成19年当時の校長が、接ぎ木ではなく、ソメイヨシノでは世界初の組織培養によるクローン桜を作ることに挑戦し、去年開花に成功した。来年には真鍋地区にクローン桜を植樹したいと取り組んでいる。

桜と共に育んできた学校

真鍋小学校には、廊下、職員室などいろいろな場所に桜の美しい写真が飾られていて、校舎内にいても桜を感じることができる。

写真は「真鍋のサクラ」を愛するファンが撮影したもの。全国各地から寄贈されていることから、いかに多くの人に愛されているかが分かる。当然、校舎から見える桜も素晴らしい。校庭の真ん中にあるので教室のみならず、校舎のほとんどのところから楽しむことができる。

学校行事も桜と共にある。

3月の卒業式の終わりには、桜の下で記念撮影をするのが恒例行事。

春の満開時期には、「真鍋のサクラを楽しむ集い」が開催され、夜にはライトアップされる。

4月には、新入生を迎える「お花見集会」と呼ばれている行事が開催される。桜の木の周りに在校生が大きな輪を作って新一年生を出迎え、新六年生が新一年生をおんぶして輪の周りを一周する。学校に馴染んでもらうために始まった1981年から続く伝統行事だ。

10年以上前のお花見集会

新緑の季節には、若葉の下で運動会が行われ、秋には落ち葉の清掃活動、「サクラ委員会」という委員会活動もあり、桜の観察や啓蒙活動を続けている。明治、大正、昭和、平成そして令和、常に子供たちを見守ってきた桜は、これからも町や校舎、人が変わっても、校庭の真ん中で子供たちを見守り続ける。

取材後記

報道カメラマンの私は、事件や事故の現場で取材撮影している。新型コロナウイルスに関する取材をする中で、外出自粛する人にカメラマンとしてできることがないかを考え、映像を通してきれいな桜を視聴者に届けようと思った。真鍋のサクラのことを知り、調べていくうちに、ただ綺麗な映像を撮影して放送するだけでなく、113年という樹齢を支えている人たちの思いを伝えたいという気持ちになった。

「真鍋のサクラ」に関わる人たちの話を聞き、地域の人々の生活や人生と切っても切り離せない特別な存在になっていることがわかった。卒業生は「楽しい時も悲しい時もいつもやさしく見守ってくれた桜, まるでお母さんのような存在」と話してくれた。真鍋の桜から「真桜(まお)」と名付けられた人にも出会った。日本人にとって特別な桜は、この地域の人にとってかけがえのない存在であることがよくわかった。

多くの人に支えられ、また多くの人を支えている桜。ひとりひとりに、大切な思い入れがある。113年分の想いが詰まった特別な桜と少しの間でも取材に関わることができて、私も嬉しく思った。

放送終了後、先生から「今年の卒業生には何もしてあげる事が出来なかったから、本当にうれしい。良いプレゼントになりました。」と声をかけられた。真鍋小学校は、コロナウイルス対策のために休校措置がとられ毎年開催されていた「6年生を送る会」などの行事を行う事が出来なかったからだ。

「無事に卒業式が執り行われました」と放送では一言で表現されてしまうが、そんな言葉ではまとめることができない、人の思いや現実が、実際の現場にはあることを痛感した。

真鍋小学校に限らず、この時期に卒業式を迎えた全ての保護者や学校関係者は、複雑な思いを抱いていたと思う。

この思い全てを、放送を通して伝えることはできなかったが、真鍋のサクラを見た人たちの心が、少しでも癒やされればと願っている。

これからも一言では伝えることができない思いを映像で表現していきたい。

土浦市立真鍋小学校 茨城県土浦市真鍋四丁目3番1号

取材する筆者

執筆・撮影: 報道・情報技術部 カメラマン 二日市 匡男

(動画は3月27日に「Live News it!」で放送されたもの)