影を落とした4回目の緊急事態宣言

新型コロナの感染拡大で落ち込んだ国内景気の持ち直しの遅れが鮮明になった。

15日朝、内閣府が発表した2021年7月から9月のGDPの速報値は、物価変動の影響を除いた実質で、前の3カ月と比べマイナス0.8%だった。このペースが1年間続くと仮定した年率換算ではマイナス3.0%で、2四半期ぶりのマイナス成長となった。

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東京オリンピック・パラリンピックが開催される一方で、政府が、東京などへの4回目の緊急事態宣言の発令に追い込まれたのがこの時期だ。大阪や首都圏3県が加わった対象地域は、段階的にあわせて21都道府県にまで広がった。

1日の新規感染者数が8月13日に全国で初めて2万人を超えるなど、感染拡大に歯止めがかからない傾向が強まるなか、飲食店への営業短縮などの要請が続けられ、お盆の期間も不要不急の帰省や旅行を控える動きが広がった。

消費に大きく影響した車の減産

今回のGDPを項目別に見てみよう。GDPの半分以上を占め内需の柱である個人消費が、前の3カ月と比べマイナス1.1%となった。外食や旅行などが打撃を受けたほか、東京大会もほとんどの競技会場が無観客開催となったため、消費を押し上げる効果は弱まったとみられる。

さらに、個人消費を落ち込ませる大きな要因となったのが自動車の減産だ。

世界的な半導体不足に加え、感染拡大で東南アジアからの部品調達が滞るなどして、自動車産業で減産の動きが相次ぐなか車の販売が落ち込んだ。

個人消費を落ち込ませた大きな要因となったのが自動車の減産

減産などの影響で輸出もマイナス1.1%となったほか、設備投資もマイナス3.8%で、景気改善への動きの弱さが見てとれる。

政府は、GDPが年内にコロナ前の水準にまで回復するとの見通しを示しているが、達成には黄信号が灯った形だ。

日本と欧米の差が改めて浮き彫りに

欧米は、日本に先んじて7月から9月のGDPを公表している。

アメリカは、実質の成長率が年率換算で前期比プラス2.0%となった。物流の混乱による供給面での制約などを背景に、4月から6月のプラス6.7%からは大幅にペースを落としたものの、5四半期連続のプラス成長だ。

ユーロ圏は、年率換算でプラス9.1%と高水準を記録した。経済活動の再開が進むなか個人消費の力強い回復が景気を押し上げ、国別ではドイツがプラス7.3%、イタリアがプラス10.8%、フランスがプラス12.6%などとなっている。イギリスは前の3カ月から大きく減速したが、プラス5.1%を保った。

欧米では、物流面での混乱や物価高の逆風が今後の景気に水を差しかねないとの慎重な見方が出て来ているなかではあるが、いずれもプラス成長を確保した。

国内景気は回復軌道に向かえるか

欧米との間で回復力の差が改めて浮き彫りになった日本の国内景気だが、10月から12月はプラス成長になるとみる専門家は多い。

緊急事態宣言が9月末で解除され、新規感染者数も減少傾向が続くなか、個人消費に薄日が差し始めているとの見方が広がるとともに、自動車の生産も正常化に向けての動きが出てきていることによるものだ。

一方で、燃料や食品価格の値上げをもたらす「原油・原材料の高騰」や、輸入品の価格を押し上げる「円安」の進行が、消費拡大や企業業績の回復の足を引っ張ることへの懸念は強まっている。

問われる経済対策の実効性

こうしたなか、岸田政権は19日、成長と分配の好循環につなげるとする大型の経済対策をとりまとめる。

所得制限を設けての18歳以下への10万円給付や保育士・介護職員の賃上げ、中小事業者支援などさまざまなメニューが盛り込まれる見通しだ。

成長力底上げに実効性のある内容をどこまで打ち出すことができるのかが、正念場を迎えている国内景気の今後の回復軌道を左右することになる。

【執筆:フジテレビ 経済部長兼解説委員 智田裕一】