オーバーツーリズムが顕在化

沖縄・恩納村の真栄田岬。透明度が高く、多くの熱帯魚を見ることができるほか、青の洞窟と呼ばれる幻想的な光景が知られている。

この記事の画像(13枚)

ダイビング・シュノーケリングのスポットとして県内屈指の人気を誇り、国の内外から観光客が訪れる。
しかし、ここ数年サンゴ礁の劣化や交通渋滞など、顕在化したのが観光公害「オーバーツーリズム」。こうした課題を解決しようと、真栄田岬を訪れる人の数や時間を制限する国による実証実験が始まった。

恩納村ダイビング協会 内原靖夫会長:
陸域から真栄田岬の階段からエントリーされる方に関して、階段から入っていくと海岸に生えているサンゴを踏んでしまって、折ってしまうという部分が一番の大きい問題かなと思います

夏場には、1日約2000人が訪れる真栄田岬。2015年から2020年にかけて、真栄田岬周辺の海底面をサンゴが占める割合は大幅に減少した。

恩納村の海に魅せられて1996年に移住し、現在ダイビングショップを経営している内原さんは、年々サンゴが劣化していくのを目の当たりにしてきた。

恩納村ダイビング協会 内原靖夫会長:
25年前は、本当にもうすばらしいサンゴ礁の海でした。しかしこの25年間の中で白化現象、サンゴに被害が大きくあったりして、一旦はかなり悪くなりました。
それと周辺道路ですね、違法駐車があったりとか、レンタカーが集中して来られますし、駐車場が満杯になって、路上駐車ですね

問題解決に向けた国の実証実験 反対の声も…

利用客の殺到は、周辺の道路で交通渋滞を引き起こすなど、住民の生活環境にも負荷をもたらしてきた。

この問題を解決しようと11月8日から始まったのが、訪れる人の数や時間を制限する実証実験だ。国の沖縄総合事務局による取り組みで、国内の観光地で、こうした実験が実施されるのは初めてだ。

内閣府沖縄総合事務局 観光施策推進室 米山茂室長:
コロナ禍の前には、沖縄に大勢の観光客がいらっしゃることによって、その観光地の混雑を招いたという、いわゆる「オーバーツーリズム」の問題が生じておりましたが、このような海洋環境への弊害という問題を克服して、観光と環境の両立を図るような持続可能な観光推進するためのモデルを確立できないかと

実証実験に向けてこの夏からダイビング業者などを交えた会議を重ねてきた。
一方、新型コロナの感染が落ち着き、観光客が戻って来たばかりのこの時期に、利用を制限する事に業者からは反対の意見もあがった。

内閣府沖縄総合事務局 観光施策推進室 米山茂室長:
もっと人の流入が多い時期にやるのが妥当ではないかといったようなご意見。中には反対していらっしゃる事業者の方もいらっしゃるかもしれません。
けれどもこの海洋観光における持続可能な観光のモデルを確立して、沖縄における質の高い観光を実現していく

マリンレジャーの国際的ガイドライン遵守も求める

実証実験では、同じ時間帯の利用者数を200人までに制限し、1人当たりの利用時間を100分と設定している。11月8日は、駐車場にこうした制限の詳細を確認できる看板が設置された。ダイビングに向かう船が出港する近くの漁港では、実証実験のスタッフが業者に協力を呼び掛けた。

実証実験では、入域を制限するだけではなく、環境に配慮するために設けられたマリンレジャーの国際的なガイドラインを守るよう求めている。

恩納村ダイビング協会 内原靖夫会長:
安全のために、シュノーケリングをされる方は必ずライフジャケットを着けてくださいねということと、それから餌付けをしない。これはやはり環境破壊という部分と、それから生態系に対する影響が大きいので、本来の自然な形で魚を見ることができるということが一番いいのかなと。
そしてあとは日焼け止め。サンゴに優しい日焼け止めを使うとかっていうことが、大きな項目になってくるとは思います

実証実験が行われるのは12月6日までの約1か月間。結果を検証して、改めてルールなどを策定し、入域制限は今後本格的に導入される。

恩納村ダイビング協会 内原靖夫会長:
真栄田岬もこの恩納村の一つの観光地ですので、やはりそこが健全に村内の方、県内の方、観光客の方が遠慮なく利用していただいて、場所的にも、もっと観光地として発展していけるようになればいいのかなと思います

自然・生活環境を守りながら観光地として持続的に発展していくために、地元でダイビングショップを経営する内原さんは今回の取り組みを歓迎している。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
沖縄テレビ

沖縄の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。