いわゆる"核のごみ"をめぐり、マチを二分する選挙戦が10月26日に終わった北海道後志の寿都町。推進派の現職が勝利したが、住民の亀裂は修復されるのだろうか。

「ばんざーい、ばんざーい」

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235票差で現職が勝利…20年ぶりの町長選挙

20年ぶりに行われた寿都町長選。わずか235票差の一騎打ちを制し,6回目の当選を果たしたのは現職の片岡春雄さんだ。
選挙の最大の争点だったのは…"核のごみ"調査継続の是非。

片岡 春雄 氏:(2020年10月の発言)
私が言う"肌感覚"というのは、私の判断が間違っていない。現時点で住民投票は必要ない

2020年10月に原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる"核のごみ"の最終処分場選定に向けた文献調査に名乗りを挙げた片岡さん。

対抗馬の出現で「文献調査の是非」が争点に

対抗馬は調査の撤回を公約に掲げ、町民に是非を問う戦いとなったが、当初から繰り返してきた片岡さんの"肌感覚"が形になった。

しかし、得票数はわずか235票差。同時に行われた町議の補選では、調査に反対する新人の吉野卓寿さんが当選するなど厳しい戦いとなった。
吉野さんの家族は…

吉野さんの父親:
越前谷さんの意志をついで、息子に徹底的に戦うよう言っていきたいです

「反省のスタート」で始まった6期目

片岡 春雄 氏:
核のごみに対して多くの町民が不安に思う気持ちも、今回の投票結果に表れたと思います。朝起きた時は、さわやかというより反省のスタートの一日です

"反省のスタート"という独特の言い回しで、一夜明けた朝を表現した片岡さん。人口減少や新型コロナウイルスで疲弊した町の経済の活性化に向けて、6期目の決意を新たにした。
"核のごみ"については…

片岡 春雄 氏:
選挙の公約でも住民の意思を尊重する話はしているから、反対が多ければストップだし、もっと調査をしてもいいなら前に進みます。知事はいま反対を表明しているので、ハードルが出てくると思います

次の「概要調査」は"住民投票"で判断へ

次の概要調査に進む際には住民投票を行い、知事と協議する姿勢を明らかにした。
町民は…

町民:
よかったです。今まで通りにやってくれれば

町民:
片岡さんに任せて町政を続けてもらって、"核のごみ"に関しては最終的には反対してほしいです

片岡さんの町政運営に期待の声が上がる中、調査には慎重な意見も聞かれた。
注目の町長選を、周辺の自治体はどう受けとめたのだろうか。

推進派の当選に周辺町村は…

"核のごみ"を持ち込ませない"核抜き条例"がある隣町の黒松内町では…

黒松内町 企画環境課 新川 雅幸 課長:
核のごみは町の方針としては変わらず、引き続き(調査の)再考を求めたい

同じく隣接する島牧村は…

島牧村 藤澤 克 村長:
次に進むときに住民投票のほかに、知事の意見が大きい。知事には(反対の)対応をしっかり続けてほしいです

調査反対を示す自治体がある一方で…

一方、寿都町と同じく文献調査が進む神恵内村。高橋村長は10月26日夜、片岡さんの勝利を祝いに駆け付けていた。

神恵内村 高橋 昌幸 村長:
神恵内は神恵内で進めているので、寿都町のこの状況が影響を与えることはありません

"核のごみ"をめぐり分断した寿都町は、再び推進にかじを切った。調査の是非とともに、周辺自治体の動きにも今後 注目が集まりそうだ。

知事は改めて「調査反対」の姿勢

推進派の現職が再選されたことを受け、鈴木知事は10月28日、改めて調査に反対の姿勢を示した。

鈴木 知事:
住民が判断する話だから、町長選はその結果だと受け止めています。文献調査から概要調査に移行する場合には、現時点において反対と言ってきている。そこは今も変わりません

文献調査から次の段階の概要調査に進むためには知事の賛成が必要で、現時点では簡単に進みそうにないこの問題。
片岡新町長が思い描く「議論を深める」ことが、賛否の立場を超えて求められているとも言えそうだ。

(北海道文化放送)

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