静岡・浜松市にある中学・高校一貫校が開催した体育祭で、コンピューターゲームで対戦する「eスポーツ」が種目の1つになった。eスポーツが体育祭の種目になるのは、静岡県内では初めてのことだ。
いったい、どんな体育祭になったのだろうか。
県内初のeスポーツ部 部員が「体育祭」提案
10月12日、静岡・袋井市で私立浜松学芸中学・高等学校の体育祭が行われた。
新型コロナ対策の一環で、例年とは違い、広いエコパスタジアムが会場だ。

一見どこにでもある普通の体育祭だが、対戦型のコンピューターゲーム、いわゆる「eスポーツ」も種目になった。静岡県で初めてのことだ。

体育祭でのeスポーツを提案し運営を担ったのが、eスポーツ部の生徒たちだ。
2020年4月に、静岡県内の学校では初めてeスポーツ部を立ち上げた浜松学芸中学・高等学校。

普段は全国大会に向け練習に励む「プレイヤー」の彼らが、他の生徒にもeスポーツの魅力を知ってもらいたいと、今回は「スタッフ」として準備を進めてきた。
浜松学芸高eスポーツ部・川端大介部長:
今回体育祭でeスポーツを取り扱うのは、運動神経に自信のない生徒たちにも普段慣れ親しんでいるゲームで、自信をもって取り組んでもらえるからです。全力で楽しんで頂けたらと思います

体育祭本番の4日前、学校の理科室を使って予選会が開かれた。1チームは4人、男女混合チームや教員が参加したチームもある。
運動苦手な控えめ男子がトラに変身
決勝の舞台となるエコパスタジアムを目指し、熱い戦いが続く中、控えめに喜ぶ男子生徒の姿があった。
浜松学芸高校1年・川合陽斗さんだ。運動はあまり得意ではない。

好きな科目は社会で、放課後は歴史を調べる活動に参加している川合さん。
これまで体育祭は、決して「楽しいイベント」ではなかった。
川合陽斗さん:
体育大会が近づいて来るといつも走るのが苦手なので、すごく不安と緊張が大きかった。(体育祭でeスポーツと聞いて)面白そうだなと思っていたら、友達に誘われて頑張ろうと思いました。eスポーツは、子供のころからゲームもしていて得意分野なので楽しみです

迎えた本番当日。
少し緊張気味の川合さんだが…
チームメート:
(グータッチ)やった!よかった
チームに誘ってくれた仲間3人と声を掛け合いながら、1回戦・2回戦と順調に勝ち上がる。

そして迎えた決勝戦。
川合さん:
手が震えてる
チームメート:
まさかゲームでここまで来るとは思わなかったよ
川合さん:
最初、敵があまり前に来てない
チームメート:
左に抜けられている。手前、手前!
別のチームメート:
こっち2人抑えてる。いやダメだ
別のチームメート:
(川合)陽斗、ナイス。陽斗、ナイス

場内アナウンス:
3,2,1 終了~
惜しくも優勝はならなかったが、見事な準優勝。

川合さんの戦いぶりを見たチームメートからは…
チームメート:
いつも静かなんですけど、トラになりましたね!
別のチームメート:
クラスでゲームをする時よりも、前線で戦ってくれたので頼りがいがあります

「走る・投げるが苦手でもeスポーツで活躍を」
浜松学芸高校・内藤純一校長:
走ることが苦手でも、投げるのが苦手でも、eスポーツでは最高のパフォーマンスが発揮できるかもしれない。
今までの学校は禁止するものがたくさんあった。最初からダメではなくて、学校というモラルが整ったところで、(eスポーツについて)正しい使い方を学ぶことはとても大事だと思います

ゲームということもあり、学校ではeスポーツ部の部員に対し、テストの成績が下位20%に入った場合は活動停止となる条件をつけているそうだ。
川合さんにとって、高校生で初めて参加した体育祭が無事終わった。
川合陽斗さん:
すごいドキドキしました。他校にはなかなかないeスポーツの大会ができて、チームで協力して決勝まで上がることができたので、今までで一番楽しい体育祭でした

県内で初めてeスポーツを取り入れた体育祭。
勝利を目指し精一杯取り組んだ生徒たちの表情は、これまで味わうことができなかった充実感であふれていた。
(テレビ静岡)