コロナ禍で暮らしに困窮する国民が増え、多くの党が選挙に向けた目玉政策の一つとして、赤字国債発行を財源とする現金給付や消費減税などの経済対策を盛り込んでいる。そうした中、月刊誌で財務省の事務方トップが、各党の政策をバラマキ合戦と批判し、波紋が広がった。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、財政規律派と積極派の両派をゲストに迎え、日本の財政について徹底議論した。

「必要な財政出動」と「バラマキ」の境界はどこにあるか

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新美有加キャスター:
現職の財務省事務方トップによる月刊誌への寄稿が波紋を広げています。「財務次官、モノ申す このままでは国家財政は破綻する」とのタイトルで、コロナ対策は大事だが人気取りのバラマキが続けばこの国は沈むと、総選挙での各党の経済対策をバラマキ合戦と批判し、財政破綻の警鐘を鳴らしています。この内容について、賛成か反対か皆さんにお伺いしたいと思います。

西田昌司 自民党 政調会長代理:
もちろん反対。少なくとも国債が償還できなくなること、デフォルトはないと財務省自身が公式に言っている。自国建て通貨で国債を発行しているアメリカや日本で財政破綻はあり得ないと。

大塚耕平 国民民主党 代表代行:
次官の理屈は分かるが、絵に描いた餅をおっしゃっている。20~30年前の教科書の議論がそのまま通用する局面ではない。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
内容としてはごく真っ当。もちろん異論も出る。議論を喚起したことに非常に意味があった。

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
ごく普通の真っ当なことを言っている。やはり国債というのは国民の負担。批判を喚起する意義はあったかなとは思います。

新美有加キャスター:
ほとんどの政党が、総選挙の公約で現金給付を様々な形で行うとしています。コロナ禍の緊急時において日本経済を立て直すために、財政出動は必要だと西田さんはお考えですか?

西田昌司 自民党 政調会長代理:
もちろんです。生活困窮をはじめ、コロナ禍で事業経営が大変なところも含め、給付金なり何らかの補償をやっていくのは当然。現実問題、GDPが30兆円以上減額してしまっている。

大塚耕平 国民民主党 代表代行

大塚耕平 国民民主党 代表代行:
私も同じ認識。本当に困っている人と困っていない人の区別がだいぶはっきりしてきており、本当はそれを把握してできるのがいいが、時間がかかる。まず一括支給をし、その後は確定申告や累進税率などで、持っている方々からは回収させていただく。これは技術的に可能。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
もちろん困窮者への給付は必要。だが、例えば安倍政権下での保育の無償化は問題。低所得家庭の保育料は既に無料だったから、無償化にすれば相対的に豊かな人を助けることになる。むしろ格差が広がる。保育や教育に対するお金はまだまだGDP比で足りず、増やすべきだが。
私が一番憤っているのは、子どもをダシにするなということ。子どもに財・サービスを約束するが、後から請求書を送るようなもの。しかも、子どもたちには選挙権がないのに。今回に始まったことではないが。

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
企業支援において、最初に無利子無担保融資で対応したのは、危機が長く続かないことが前提だった。だが長引いてしまったので、次の段階では給付金を渡すことが必要。そしてビジネス環境が元に戻ってくれば、企業努力に対してお金をつけていくことがよいのでは。

「財政出動のために国債増発やむなし」か「分配重視・格差是正で対応」か

新美有加キャスター:
国家の収入となる歳入は、税収と国債の発行の2つが主。国債を発行して経済対策を打つということは、将来世代が負担することになる。コロナ禍だからこそ国債の増発やむなしという風潮について、木内さんは。

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
国債がすべて建設国債であれば、将来の人も負担すべきであり何の問題もない。だが、かなりの部分が赤字国債。特にコロナのような問題では、今の世代の中で融通するのが一番いい。収入が落ちた人と収入が上がった人の格差を縮める形で。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
分配に関して、日本は実は低所得者に冷たい。社会保障の分配は中高所得者に多く行っている。豊かな人たちも入っている保険に一般財源を投入しているから。岸田政権の分配重視は評価するが、社会保険の問題にメスを入れなければ分配はうまくいかない。

大塚耕平 国民民主党 代表代行:
低所得者層に対する実質的支援が足りないことが格差問題につながっており、決して保険制度だけの問題ではないと思うが、例えば医療などについてはご指摘の通りで、自己負担分を払えない人は我慢してしまう。データをちゃんと見て詰めていかなければいけない点。

「国債はいくら発行してもOK」の考えのもと、財政出動を強化すべきか

新美有加キャスター:
日本は財政赤字の状況が続いています。歳出は社会保障費の増加などで右肩上がり。税収は右肩下がりになっていたが近年増えており、バブル最盛期の水準止まり。収支の差は国債など借金で穴埋めをしています。2021年度は予算ベースで43.6兆円の借金。財政の悪化が続けば財政破綻に陥ると言われていますが。

西田昌司 自民党 政調会長代理:
根本的な誤解がある。国債を次の世代が税金で返済するということはしていない。新規国債を発行して、借り換えで償還している。だから残高は減らず、どんどん増えている。それで大丈夫かという話は30年前からずっとされているが、まったく大丈夫。国債は本当に文字通り、いくら発行しても破綻しない事実がどんどん見えてきている。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
例えば、ギリシャは当時危機的な状況になり、金利が30%ほどになっても貸してくれる人がおらず破綻した。貯金があって低金利を維持している日本がすぐそうなるとは思わないが、世代間格差は拡大していき、持続可能性という意味では将来破綻するかもしれない。

西田昌司 自民党 政調会長代理

西田昌司 自民党 政調会長代理:
経済で一番大事なのは預金量とか貨幣がしっかり回る仕組みだが、そのためには貨幣を供給するには民間がお金を借りるか、もしくは政府が国債を発行して出すか、この2つしか道はない。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
この問題は基本的に政府の役割をどう考えるか、信用できるかという話。国民が銀行に貯金し、今はそこから銀行が国債を買っている。でも、それを民間企業が借りてイノベーションを起こすのと、政府が国債で吸い上げてバラマキに使うのとどっちがいいか。ずっと役所に勤めた経験からいうと、残念ながら政府はあまり信用できない。

大塚耕平 国民民主党 代表代行:
今がどういう状況か例えてみます。岸から数百メートル離れてしまった程度に借金が増えているときは、泳いで戻ろうと頑張る。プライマリーバランスを黒字化して、ちょっとずつ陸に近づくということ。しかし、陸から数十キロも離れたところまで行っちゃった。泳いで戻れとは言えない。ならば、まず浮くものを作って、体力をつけてから戻ろうと。僕は西田さんの考えは「パイレーツ・オブ・カリビアン」だと思っている。もっと奥まで行けばパラダイスがあるという。僕はそこまでは楽観視できない。

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
金融市場としては、どこまでも国債の発行を増やせるということではなく、やはり最終的には国民が増税も受け入れ借金を返すことが前提で、今の金利になっていると思います。

西田昌司 自民党 政調会長代理:
金利を下げる今の政策には無理がある。銀行に利益が出ない、つまりお金を貸せない。この仕組みがデフレを作っている。だから財政出動を行い、インフレ率を上げる。インフレ率が2~3%上がれば当然、金利も2~3%つける。すると現在の異常事態はなくなる。

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
私は日銀が政策を中立にしても、金利水準は長期的にせいぜい1%超ぐらいだと思う。ただそれが、財政の出動でできるかは疑問。持続性のためには財政支出が呼び水になって民間の投資も出てこなければ。

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授

田中秀明 明治大学公共政策大学院 専任教授:
黒田日銀総裁は本来2%のインフレを達成すると言っていたが、物価が上がれば金利も上がるのが正常な経済。だが、今は一言で言えば低体温経済、先がない。財政は破綻しないとしても経済は成長しない、茹でガエル状態が続いていくという帰結。

反町理キャスター:
破綻するのか衰弱死していくのか、その2つの分かれ道に立っているということ?

木内登英 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト:
両方だと思います。潜在力が落ちてくれば税収もどんどん落ちていって、財政は悪化する。

西田昌司 自民党 政調会長代理:
日本の財政出動は他の国に比べてものすごく弱い。1年や2年のちょっとした景気対策ではなく、教育の負担なども含め10年で200兆円ぐらいの規模の財政出動をする。それを長期的にやっていくと、民間経済も引っ張られて金利も物価も上がり、正常状態に戻ってくる。

BSフジLIVE「プライムニュース」10月18日放送