「ヤングケアラー」という言葉を耳にしたことは?

ヤングケアラーは、病気や障がいなど家庭の事情によって、親や兄弟などの世話を担う18歳未満の子どものことを指す。
国の調査では、中学生で17人に1人、高校生では24人に1人が当てはまった。ヤングケアラーは何が問題なのか…かつて、当事者だった女性が自身の経験を語ってくれた。

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沖縄県出身で、今は東京の大学に通う仲宗根杏珠さん。

仲宗根杏珠さん:
私が物心が付いた時には、母が精神疾患を抱えていて、いろいろ混乱しているような症状に巻き込まれながら過ごしたという感じです

仲宗根杏珠さん
仲宗根杏珠さん

仲宗根さんが小学3年生の時に両親は離婚し、そのあとからは精神疾患を持つ母親と二人暮らし。気持ちが不安定な母親は仲宗根さんを強く叱ったり、自殺をほのめかしたり、自傷行為を目の前で繰り返した。

仲宗根杏珠さん:
飛び降りようとした時は止めましたし、一度ガスを漏らしていた事があって「何考えているの」って言って止めたりとか。二人暮らしの時は、本当にいつ死ぬか分からない張り詰めた空気っていうか…

母親は服用する薬の影響で朝早く起きれなくなり、仲宗根さんは小学5年生の時に学校に通わなくなり不登校になった。

ヤングケアラーに当てはまるのは「介護」だけではない。

日本ケアラー連盟の定義では、介護以外に親が外国人で「通訳」を子どもが担ったりする事例や、うつ病や依存症など精神疾患を抱える親の「心情面」のサポートをする子どもも含まれている。

仲宗根さんも当時、自分の気持ちを話す事はほぼ無く、母親の言葉を受け止めていた。

仲宗根杏珠さん:
母が死にたいという事を口にしても、そんなこと言わないでとか言えなくて、ただただ聞いているだけっていう感じで、何も声を掛けてあげる事は出来ませんでした

子どもの権利侵害が最大の問題

ヤングケアラーへの理解を深めようと、2021年10月学校関係者向けの講演会が開かれた。講師を務めたのはスクールソーシャルワークが専門で、沖縄県内でヤングケアラーの調査をしている沖縄大学の名城健二教授。

沖縄大学 名城健二教授:
親が頼ってくるから、自分も子どもだけど親の役割を演じてしまう。子どもの権利を侵害してるっていうところが一番問題なんです。いわゆる学ぶ権利、学習権とかですね、もうちょっと言ったら友達と遊ぶ権利とか、子どもとしての時間をなかなか過ごせないくらい家族をケアしているという状況が問題となっています

沖縄大学 名城健二教授
沖縄大学 名城健二教授

ヤングケアラーの一つの事例では、子どもたちが介護や世話に追われ、部活や習い事を諦めたり、中には親の生活リズムの影響で不登校になる子どももいる。
その一方で、ヤングケアラーに当てはまる子どもの全員が権利を侵害されているわけではないとしている。

沖縄大学 名城教授:
「ヤングケアラー」=「大変な子どもたち」という認識をしないようにした方が良いかと思います。親や兄弟の面倒を見ていた事で、将来保育士になりたいとかですね、そういう将来の職業選択に繋がるっていう事実もあります

名城教授は、「ヤングケアラー」がきちんと理解されず言葉だけが広まってしまうと、偏見に繋がりかねないとして、周囲が子どもたちの環境を丁寧に見ていく必要があると指摘する。

沖縄大学 名城教授:
言葉がひとり歩きすることで、当事者のご家庭の皆さんが委縮しちゃってバレない様にするっていう…じっくり丁寧に、やんわりと関わっていく仕組みが出来ていったらなと思いますね

ヤングケアラーを社会全体で支える

仲宗根さんは自身の経験を発信したり、同じ境遇の子どもが経験を語り合える機会を作る団体「ハピんちゅokina輪」を2020年に立ち上げた。

仲宗根杏珠さん:
世間が私たちみたいな子どもの立場・存在を知って、どういう風に苦しんでいたとか、どういう風に生活していたかというのを知らない事には、何も進められないんじゃないかって思って

ヤングケアラーの子どもは、自分が当事者であることに気づかない傾向があり、必要な支援に結びつかない事例が多くある。

仲宗根杏珠さん:
何かしら有効な支援を受けていたら、もしかしたらもっと幸せっていうか、今と比べてもっといい人生が遅れていたという可能性もあるんじゃないかって思って。
自分が知らないだけで、自分の近くで苦しんでいる人たちもいると思うので、ヤングケアラーが幸せに過ごせるように、手助けをするっていうのが今のハピんちゅの活動目的です

「ヤングケアラーを知ってもらい、社会全体で支えてほしい」
自身の経験とこうした思いが、仲宗根さんの活動の根底にある。大人たちの支えを必要としている子どもたちに支援が行き届くように、仲宗根さんの活動は続く・・・。

(沖縄テレビ)

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