海に大量に流れ出るプラスチック。こうした「海洋プラスチック」が世界的な問題となっている。プラスチックゴミは海を汚染し、海洋生物にも深刻な影響を与えているためだ。

では、こうしたプラごみは一体どこで発生しているのだろうか。
実は、プラごみの多くは河川から海に流れ込んでいるといわれている。その中でも、最も多くゴミが流入しているといわれる川の一つが、インドのガンジス川だ。
現地を訪れると、海洋プラスチックが増え続ける理由が見えてきた。

世界遺産タージ・マハルの裏側 ヤムナー川の様子
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世界遺産の周りは「ゴミ」だらけ

インドの古都アグラ。この町の象徴ともいえる世界遺産タージ・マハルのすぐ裏には、ガンジス川最大の支流・ヤムナー川が流れている。

記者が2月にヤムナー川を訪れると、川岸に無数のプラスチックごみが散乱していた。ごみの種類は、お菓子の袋から工業用の袋まで様々だ。

さらに川の一部は、川面の大半がごみで覆われていた。このごみは、町から出た生活排水に運ばれて川に流れ着いたという。生活排水が流れ込む場所では、石鹸のような白い泡が沸き立っていた。

ヤムナー川に流れ込む生活排水

「海」のプラごみは「川」から

現在、世界的な問題となっている海洋プラスチックのうち、陸から出るものが5割から8割を占めているとみられており、こうした河川も重要な流出源と考えられている。

その中でも、インドのガンジス川からのごみ流入量は世界第二位ともいわれる。

海洋プラスチックの対策を考えるには、アジアの河川から流れ込むプラスチックごみをどう食い止めるか、という視点が重要なのだ。

こうしたゴミはどこで発生し、なぜ川に流れ出てしまうのだろうか。
その主な原因は、市民による不法投棄やポイ捨てにある。

ヤムナー川のそばにある村を訪れると、道沿いに面した空き地は大量のゴミで埋め尽くされていた。また道路脇の排水溝も、お菓子の袋などのプラスチック製品で埋まっていた。

空き地に捨てられたプラスチックゴミ

なぜ外にゴミを捨ててしまうのか。
開発途上国では現在も、ゴミ収集などの廃棄物管理が行き届いていない地域が多い。そうした地域では、大量のゴミが空き地などに投棄されてしまう。

では、この村では自治体によるゴミ収集が行われていないのだろうか。
地元住民によると、村にはゴミ収集車が定期的に巡回してくるという。しかし多くの住人は、ゴミをまとめて捨てるという意識が希薄で、手元のプラスチックゴミを近くの空き地や道路にポイ捨てしてしまうという。
こうしたゴミ捨てに対する意識の欠如も原因となっている。

こうして捨てられたゴミは、風雨や生活排水に流されて、近くの川に運ばれる。そして大きな河川へと流れ、最終的に海に出る。

河川敷に流れ着いたプラスチックごみ

海への流出阻止のカギは「発生源の特定」

悪化の一途をたどる海の環境汚染に対処するため、インド政府も対策を強化している。モディ首相は2019年10月、2022年までに使い捨てプラスチックを全廃する方針を打ち出した。

しかし、安価で便利なプラスチックを短期間に大幅削減するのは現実的には難しい。

そこでまず必要とされているのが、ゴミ収集などが行き届いていないエリアを中心に、ゴミが集まりやすく、川に流れ込みやすい場所を特定して、その場所からごみが流出しないようにする行政の対策だ。

しかし、こうしたゴミの発生源に関する調査はこれまでほとんど行われていなかった。

海洋プラスチックに関する具体的な発生源や流出経路などについての情報は極めて少ない。このためアジア各国では、極端なプラスチックの使用量抑制など、場当たり的な政策は打ち出すものの、ゴミ流出を防ぐために本当に必要な対策は講じられていないのが実情だ。

新たな流出ゼロへ「ホットスポット」特定

国連環境計画は、こうしたプラごみ流出を防ぐ方策を探るために、2019年からゴミの流出量が多いガンジス川とメコン川で調査を行っている。

その目的の一つは、ゴミが地形的に川に流れやすく、かつプラスチックゴミが溜まりやすい「ホットスポット」と呼ばれる場所を特定する技術の確立である。

アグラのホットスポット調査資料

ホットスポットは、まず衛星写真や地図を使い、川からの距離や地形・傾斜などを考慮して、ゴミが川に流れやすいエリアを絞り込む。その上で、現地でどのようなゴミが、どの程度溜まるかを実際に分析して調べる。

アグラのヤムナー川に近い「ホットスポット」で行われていた現地調査では、およそ50メートル四方に区切ったエリアを決め、そこに2ヶ月間の間にどの程度、どのようなゴミが溜まったかを調べる作業が行われていた。調査の結果、その多くは不法に捨てられたり、生活排水とともに流されてきたりしたものだった。この場所は、地形的に川への流出が多く、かつゴミが定期的に溜まってしまうホットスポットであることが裏付けられた。

調査対象の区域 2ヶ月間のごみの量を調査する
2ヶ月間で貯まったゴミ

調査を担当するAmit Jain博士はホットスポット発見までの苦労をこう語る。

Amit Jain博士:
「地理情報システムを使用して、都市の人口密度や排水パターンを見て、いくつかの脆弱なエリアを見つけました。ホットスポットと判断するためには、廃棄物が何度も、何度も出てくるのかどうかを現地にて確認する必要があります。」

調査を担当するAmit Jain博士

川に流れるプラスチックから発生源を追う

さらに国連環境計画は、川の水に含まれる細かいプラスチックごみ「マイクロプラスチック」の調査も行っている。
プラスチックの種類を細かく分析すれば、それがどのような廃棄物から出たものなのかを判別できるという。廃棄物の種類が特定できれば、その原因に対する対策が講じやすくなるのだ。

川の水に含まれるマイクロプラスチック調査

「世界経済フォーラム」によると、このままの状態が続けば、2050年には海に貯まる「海洋プラスチックごみ」の量が海にいる魚の量を上回る、という衝撃的な予測が出ている。
先進国だけでなく、こうした開発途上国の川から流れ出るゴミへの対策も急務となっている。

【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】

※取材内容は近日中「Live News days」で放送予定