岡山放送では9月23日、国連が定める「手話言語の国際デー」に夕方のニュースに手話通訳をつけて放送した。
「聴覚障害者とテレビを共有し、情報を届けたい」…その舞台裏を取材した。

この記事の画像(26枚)

岡山県内でも年々高まる手話への理解

9月23日放送:
こんばんはOHK LiveNewsです。きょう9月23日は、国連が定める「手話言語の国際デー」です

9月23日に放送したOHK LiveNews。国連が定める「手話言語の国際デー」に、情報のバリアフリーを図ろうと、スタジオの中にいる手話通訳士がアナウンサーの声を聞いて同時通訳した。また、防災や観光についての特集では、聴覚障害者自身が感情たっぷりに手話で内容を伝えた。

手話放送制作に参加した・佐藤美恵子さん:
私たち聞こえない者にとって「手話は言語」なので、ニュースにも手話がついて情報をすぐに知りえることを期待している

「手話が語る福祉」1回目の放送
朝の配達を前に、山本さんのお宅では豆腐作りに追われています

岡山放送で手話放送が始まったのは1993年2月。以来28年、「手話が語る福祉」というコーナーを設け、282回放送してきた。

篠田吉央キャスター:
28年の継続の中で、私たちが大切にしてきたのは、手話が“語る”福祉というタイトルが示すように、言語としての手話でした

そもそも手話は、言葉の意味をくみ取り、手の動きなどで表現するもの。

(飛行機…指で翼をイメージ)

「飛行機」を表現する手話

(歩く…2本の足で歩くイメージ)

「歩く」を表現する手話

また、音声言語と手話言語では文法体系も違う。

音声言語:
あなたは何を食べたいですか?

手話言語:
あなたは食べたい何を?

言語としての手話への理解は年々高まっていて、岡山県でも県知事などの記者会見に手話通訳がつくなど、普及が進んでる。

岡山県 聴覚障害者福祉協会 手話対策部・庄田正子部長:
文字だけでは私たちはわからない。理解力はまちまち。手話だと内容がつかめるし、情報を獲得できて安心

岡山放送でも、聴覚障害者団体や手話通訳の団体と委員会を立ち上げ、瞬時に的確に伝えるテレビだからこその手話通訳の表現方法を構築してきた。
しかし、様々なニュース項目に対応する番組全体の手話通訳は初めてで、何度も練習を重ねたり、勉強会を開いた。

東京のテレビ局で手話キャスターなどを担当・早瀬憲太郎さん:
ニュースの中身を考えて、自分のトーンを作って、それを手話で伝えることが必要です。見ている人は、手話だけを見ているのではなく、手話を通してその人を見ている

何気なく書いた“原稿”が通じない

そして、迎えた放送当日。この日伝えるのは10のニュースと天気予報で、報道部員と手話放送委員会のメンバーが3つのグループに分かれて対応する。
こちらのグループは、防災をテーマにした特集を手話通訳。まずは、防災士の資格を持つ記者が特集の意図を説明する。

防災特集を担当する・新田俊介記者(防災士):
これから10月にかけてもまだ台風はたくさん来ます。それに備えてもらおうという狙いで、今回は放送します

新田記者の言葉を手話に通訳する通訳者

今回のテーマは、高潮発生のメカニズム。災害時に特に情報不足に陥りやすい聴覚障害者に、自分たちの言葉でよりわかりやすく伝えてもらえたらと、聴覚障害者自身がカメラの前に立つことにした。事前にVTRを確認すると、思わぬ気付きもあった。

VTRの確認作業:
備えのツボはこちら(ポンっと効果音がなる)

篠田吉央キャスター:
「備えのツボはこちら」といった時に、テレビでは音が入っています

手話放送制作に参加した・佐藤美恵子さん:
今まで「ポン」という音を聞いたことがないので、ちょっとイメージができないです

篠田吉央キャスター:
(「ポン」という音は)強調するということです

手話放送制作に参加した・佐藤美恵子さん:
(手を叩いて)「ちょっと見て見て」と手話で表現する方法はあります

そこで、効果音のタイミングに合わせ、「みなさん注目して」と表現を加えることに。
また、ナレーションが聞こえないため、手話通訳者が音声に合わせて出す手話を、聴覚障害者が見てタイミングをつかみ手話表現する。その時に、いわゆる手話のネイティブだからこその細かなニュアンスや表現に変えて伝えた。

岡山・鏡野町の芸術祭について担当するこちらのグループでは、取材にあたった森アナウンサーに質問が飛んだ。

手話放送制作に参加した・梅岡光恵さん:
「重みを感じる」の「重み」の意味はどんなニュアンスでしょうか

取材して原稿を書いた・森夏美アナウンサー:
悩みますね…。重厚な感じ

手話放送制作に参加した・梅岡光恵さん:
「心に迫る」というか、「響く」と表すのは?

取材して原稿を書いた・森夏美アナウンサー:
そうですね

「色の濃淡から版画独特の重みを感じる」と原稿を書いた森アナだが、手話では具体的に表現しないと伝わらず、「迫力を感じる」と表現することにした。

取材し原稿を書いた・森夏美アナウンサー:
(言葉を)何気なく選ぶのではなくて、本当に伝えたいことが何なのかきちんと考えながらアナウンサーとして伝えることが、やはり大切なんだなと思いました

また、ナレーションをあえて無くし、作品だけを見せる部分では、画面の中の聴覚障害者も手を動かさず、作品を見つめ、シーンの意図を伝えた。

このほか、次から次に紹介されるニュースや天気予報は、スタジオ内で3人の手話通訳士が同時通訳を担当したが、その様子に多くの注目が集まっていた。
そして放送の最後は、アナウンサー自身も手話で伝えた。

放送終了の様子:
お疲れさまでした(拍手)

OHK手話放送委員会委員長・梅岡光恵さん:
(聴覚障害者にとって)社会にはまだまだ孤独に思うこともあるが、きょうここでは壁を感じなかった。みんな一体となって、ここで素晴らしい世界が体験できたと思っています

手話という言語を通じ、伝えることの意義に向き合った今回の放送。「誰一人情報から取り残さない社会の実現」に向け、これからも歩み続ける。

岡山放送では、これからも手話放送を継続します。

(岡山放送)