岸田新内閣の発足とともに環境相のポストから外れた小泉進次郎氏。自民党総裁選で河野太郎氏を支持し、「小石河連合」を組んで岸田陣営と真っ向勝負したものの結果は「完敗」(小泉氏)。そして小泉氏は5日、2年間大臣として過ごした環境省を去った。小泉氏の環境省最後の一日を取材した。

吹っ切れた笑顔で感謝の言葉を述べた

「ありがとうございました」

小泉氏は職員からもらった花束を手に、見送りの職員40人程に頭を下げながら退庁した。そして車に乗る際に笑顔でこう感謝の言葉を述べた。

見送りに集まった職員たちに笑顔で挨拶をする小泉氏
見送りに集まった職員たちに笑顔で挨拶をする小泉氏
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その笑顔は総裁選直後の思い詰めた表情と比べ、どこか吹っ切れたように見えた。

車に乗る際に、警備員に「ありがとうございました」と深々と頭を下げた小泉氏
車に乗る際に、警備員に「ありがとうございました」と深々と頭を下げた小泉氏

大臣引き継ぎ式

これに先立ち小泉氏は、新大臣となった山口壮氏と引き継ぎ式を行った。大臣室に入室した小泉氏は「どうも大臣。今後ともぜひ頑張ってください」と山口氏に語りかけた。

これに対して山口氏は「COP26に向けて対処方針を作っていくよう、昨日総理からも指示を受けました。小泉大臣が切り開かれた新たな地平線だと思いますので、しっかりと引き継いで頑張らせて頂きます」と挨拶した。

新旧大臣の引継ぎ資料はタブレットで。
新旧大臣の引継ぎ資料はタブレットで。

「環境省は社会変革担当省になった」

その後小泉氏は環境省の幹部に向かって最後の挨拶に臨んだ。

「前大臣の小泉進次郎です(笑)。皆さん大変お世話になりました。2年前のことを思い返しても、本当に非力な私を全力で支えて頂いて、そのおかげで2年間、世の中を皆さんとともに前進させられたと思っています。大臣に就任した時に、環境省は社会変革担当省になると言いました。2年前のことを思いかえせば、その言葉は嘘でなかったと思います」

環境省、原子力規制庁の幹部に別れの挨拶をする
環境省、原子力規制庁の幹部に別れの挨拶をする

小泉氏が在任した2年間は、石炭火力政策の見直しや、2050年カーボンニュートラルの目標設定、再生エネルギー最優先の原則の位置づけなど、環境省の施策はまさに「社会変革以外の何物でもない」(小泉氏)進展を見せた。

「いろんな大変なこともこれからあると思いますがやればできる。私もどんな立場であっても、皆さんと一緒に歩んでいきたいと思います。どうぞ皆さん、私が賜った温かいご支援とご協力を山口新大臣に対しても格別のご高配を賜ればと私からも申し上げます」

「自分の人生にとって大きな節目が重なった」

そして小泉氏はこの2年間を「自分の人生にとって大きな節目が重なった」と語った。

「子どもが生まれて、大臣として『男性育休を取ってくれ』と言ったのは環境省の職員です。その後にコロナとなり、大臣という政治家としての大きな変化があった。正直言って、この変化の連続に私自身四苦八苦しながら、必死に自分を合わせていこうという2年間だった気がします。改めて私は確信をしています。政治と行政、政治家と官僚で熱い思いが一致した時、世の中の大きな変化は実現できる。それを実証してくれた2年間、心から皆さんに感謝申し上げたいと思います」

「政治家として、私自身の人生として大きな変化があった」
「政治家として、私自身の人生として大きな変化があった」

そして最後に小泉氏は幹部と職員に対してこう語った。

「心残りはコロナじゃなければ、飲み会や慰労会で『ありがとう』と言えたのに、それができなかった日々のまま終わることです。コロナが明けてその時が可能になったら、私がどんな立場でもやりましょう。そのときを楽しみに、一衆議院議員として頑張っていきます。皆さん本当にありがとうございました」

職員から花束を贈呈される
職員から花束を贈呈される

小泉氏は再び表舞台に戻ることが出来るか

小泉氏は政治の表舞台から去り、1人の衆議院議員に戻った。

ちょうど1年前、総裁選に敗れた岸田氏は「岸田は終わった」と揶揄され、党の役職に就くこともなく表舞台から姿を消した。当時まさか1年後に岸田氏が総理になると予想した者はいただろうか。

恒例の官邸での記念撮影
恒例の官邸での記念撮影

小泉氏は初当選以来、党の青年局長からスタートし、復興大臣政務官を経て党の農林部会長に抜擢され、筆頭副幹事長、厚労部会長、そして環境相と出世街道をばく進してきた。

しかし環境相就任後バッシングの嵐が吹き始め、ついに総裁選で敗れて初めて“冷や飯”を食べることになった。

かつて未来の総理ポストを嘱望された小泉氏が、捲土重来を期して再び表舞台に戻ることが出来るのか、筆者は引き続きウォッチしていく。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。