コロナにより生活で必要不可欠となったマスク。長時間のマスク着用による肌荒れや耳の痛みなど、マスクについて悩む人が多くいるだろう。そんな中で今、マスクによる新たな悩みが出ているという。

この悩みとは、長時間のマスク着用による“もみあげ”部分の脱毛症状だ。

提供:なおさん
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画像のもみあげ部分に注目してほしい。マスクヒモが触れていたと思われる部分だけ毛が薄くなっているのだ。

ネットでも「マスクしすぎで、もみあげがハゲてきた」「マスクを四六時中しているせいなのか、もみあげがハゲ始めてきたんだけど」「毎日マスクしてたらもみあげがハゲてきた」などの同じ症状を明かす投稿があり、もみあげ部分に脱毛症状があるようだ。

SNSにマスクによる脱毛症状を投稿した大畑さんに話を聞くと、「なんかハゲてるな~なんでだろうと思っていたら、翌朝、マスクをするとひもの部分と一致し気付きました」ということだ。それまでは全く気が付かなかったという。

提供:大畑さん
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マスクヒモで毛髪や頭皮が擦れる

マスク生活はまだまだ続きそうで、このような症状が今後、さらに多くの人に生じる可能性もある。そもそも、なぜマスクヒモで脱毛症状が起きるのだろうか? また何か防ぐ方法はないのだろうか?

頭髪診療を専門に行う東京メモリアルクリニック・柳澤正之院長に話を伺った。


ーーもみあげ部分の脱毛症状の原因は何だと考えられる?

「マスクのヒモ部分」と完全に一致した脱毛であれば、まずは外的刺激による脱毛を考えます。マスクのヒモは口、顎の動きに合わせて若干動きますので、「毛髪との擦れ」と「頭皮との擦れ」の2種類の外的刺激が生じます。

・「毛髪との擦れ」について
マスクヒモが毛髪自体と繰り返し擦れる、もしくは引っ張られることで毛髪が抜ける(牽引性脱毛)、もしくは千切れることが推測できます。

花の幹などを繰り返し曲げていると、最初はたわむだけですがそのうちにぽっきり折れてしまう、もしくはひっかかって引っ張れば根っこから抜けてしまう、というのに近いと思います。マスクヒモ素材と毛髪(キューティクル)などとの引っ掛かりやすさも影響するのかもしれません。

・「頭皮との擦れ」について
文字通り頭皮への繰り返しの刺激によるものです。アメフト選手のヘルメットのクッション材が当たる部分に限局した薄毛、というのが有名で外来でも良く見かけます。

マスクヒモが頭皮に強く当たっているようには思えませんが、1日の大半マスクをつけることによる頻回の刺激が頭皮ダメージ、脱毛の原因となる可能性は否定できません。

提供:なおさん
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もう一つ可能性としては、円形脱毛症が挙げられます。

この場合ヒモによる外的刺激は関係ありませんが、円形脱毛症はストレスで誘発されることもあると言われています。長いコロナ生活によるストレスが原因で、たまたまもみあげ(マスクヒモ部分)に円形脱毛症ができてしまった、というのも可能性は低いですがあり得ます。

新型コロナ感染後、または新型コロナワクチン接種後の脱毛症というニュースもあり、これもまだ原因解明されてはいませんが、私個人の見解としては円形脱毛症や新型コロナ感染による血流障害症状の一つでは、と想像しています。今回のもみあげ脱毛にも関係しているかもしれません。

また左右片側だけの脱毛、という場合には円形脱毛や血流障害症状の可能性を考慮します。(外的刺激、擦れの場合には、ほぼ左右同様に脱毛するはずです)

(イメージ)
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ーー脱毛を防ぐ方法を教えて。

予防対策は脱毛の原因によります。

外的刺激が原因であれば、刺激の少ない形状のマスク(ヒモ)や、引っ掛かりの少ないヒモ素材などで対策できるかもしれません。

円形脱毛症については、ストレス軽減による予防効果もはっきりしていません。症状が出たら専門の皮膚科などで相談するのが良いと思います。

(イメージ)
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ーー「外的刺激」の場合はどうしたらよい?

一番簡単なのは、マスクのヒモを毎日ずらすことです。

ヒモを普通に耳にかけるのと、ヒモをクロスして耳にかけることでヒモの位置が変わります。またウイルス感染対策としての是非は別として、ウレタンマスクやバンダナなどのフェイスマスクなどバリエーションを変えることでも接触部分が変わり、刺激の回数を減らすことができると思います。

ウレタンマスクの上に不織布マスクをすることで、ヒモの擦れがウレタン帯部分で保護されたりもします。


ーーちなみに、この脱毛症の悩みで来院した人はいる?

当院ではまだそういった患者さんは拝見しておりません。

(イメージ)
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“薄毛”になると治りにくい事も

ーーメガネによる脱毛症状を聞かないけど、マスクとの違いは?

メガネは口など顔の動きで動きませんし、メガネの柄が直接毛髪、頭皮に当たっていることは少ないので、もみあげの脱毛につながる事はあまりありません。

ですが実は、まれにメガネの柄がもみあげ部頭皮に食い込んでいる方がいて、そういう方は食い込み部分だけ毛が薄くなっていることがあります。そういう方は常に(特に鏡を見るときは)眼鏡をかけていて、さらにメガネの柄が常に食い込み部分の凹みにフィットしているので、薄毛を自覚したり、第三者から指摘されることがほとんどありません。

この場合、頭皮への圧迫が原因なので材質は関係ないと思います。

(イメージ)
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ーー脱毛した部分の毛は生えてくるの?

原因によります。

<外的刺激による毛髪の折れの場合>
毛髪が途中で折れているだけなので、また毛髪は問題なく伸び続けます。

<外的刺激による毛根の引き抜き(牽引性脱毛)の場合>
毛髪を数回引き抜いてもまた生えてきますが、引き抜きを繰り返すうちに毛髪は細くなり薄毛になっていきます。牽引性脱毛の場合、引き抜きをやめても薄毛は治りにくい事が多いです。

<円形脱毛症の場合>
部分的な円形脱毛症の場合、無治療でも半年から1年程度で元通り毛が生えてくることがほとんどです。ごく一部の病型でもみあげを含めて広範囲に抜ける円形脱毛があり、その場合は治療が難しいことがありますので専門の皮膚科を受診することをお勧めします。


ーーマスクによる脱毛症状を聞いて、どう思った?

「マスクによるもみあげ部分の脱毛」というのは予想外でとても興味深く感じました。マスク生活がさらに長期化してもみあげ脱毛問題が深刻化するようであれば、それはそれで我々にとっては治療、研究のしどころになります。

提供:大畑さん
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ーーマスクによる相談は、どんな内容が多い?

マスク生活によるマスク部分のニキビ、肌荒れトラブルはかなり増えています。特に10-20歳代の方のニキビは適切な保険治療で改善することが多いので、早めに病院で相談する事をお勧めします。

脱毛については例年通りの夏の抜け毛相談があるくらいで、新型コロナ、マスクによる脱毛相談は今のところ拝見していません。今後長期化、深刻化することがあれば変化があるかもしれません。


誰もこんなに長くマスク生活が続くとは思っていなかったことだろう。マスクを手放せる日が来るまでは、この“もみあげ部分の脱毛”に悩む人がさらに増えるかもしれない。

マスクヒモによる外的刺激が主な原因のようなので、柳澤院長が話すように、ヒモの位置を毎日ずらすなどの対策を取ってほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。