秋の味覚・柿の収穫シーズンを迎えている中、柿の成分を活用したマスクが注目されている。感染予防効果も期待されるマスクを通して、地元産品の有効利用に向けた取り組みが進んでいる。

衣服のニオイ消しとして使われる柿渋をマスクや消毒液に

こちらは一見して普通のマスクのようだが、コロナ禍で注目を浴び、この1年あまりで売上が5倍以上に跳ね上がったという。その秘密とは?

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本田航太記者:
このマスクは抗菌・消毒作用があるとされています。その理由が、柿に含まれる柿渋。マスクの繊維1本1本に柿渋が含まれています

マスクを開発したのは、鳥取市内の縫製工場「ビッググロウス」。柿渋は、実が熟す前の青い柿を発酵させて作られる抽出液。

抗菌・消臭作用があるとされ、古くから染料として衣類などのにおい消しに活用されてきた。この会社では、その柿渋をマスクに活用した。

ビッググロウス・森田祐加社長:
柿渋にはタンニンという成分が含まれていて、抗菌・消臭をしてくれます

タンニンは柿の渋みの正体で、抗菌・消臭作用がある。

6年前に会社を立ち上げた森田社長。マスクの他にも靴下やベビーグッズなど、柿渋を使った商品を多数開発している。

柿渋を混ぜた消毒液、こちらもコロナ禍での売れ行きは上々だという。

ビッググロウス・森田祐加社長:
消臭・抗菌効果があるので、これをかけたらにおいが消えるんですよ

ただ、柿渋は鼻をつくにおいがすると言われているが…。

本田航太記者:
柿渋は独特なにおいだと聞いていましたが、マスクは着けてみても臭いが全く気になりません。着け心地もいいです

詳しい工程は企業秘密だが、柿渋の抽出方法を工夫し、においをなくすことに成功したという。

柿渋を抽出する工程の一部
柿渋を抽出する工程の一部

間引きで廃棄される柿は10トン「農家の衰退止めたい」

しかし、なぜ柿渋に着目したのか?

柿渋の原料の柿が生産されている八頭町の農園。特産の西条柿が育てられている。これらは森田社長の叔父である平木さんが育てているが…。

柿農家・平木雅之さん:
全部の実を木にならすと、全体的に柿が小さくなる。柿渋を取る前はすべて地面に落としていた

実が多いと全てに栄養が行き渡らず小さく育つため、良質な柿を育てるには、実が熟す前に摘み取って間引く必要があるという。

柿農家・平木雅之さん:
結構な量になる。この面積でいったら10トン

この農家では15トンの柿を生産し、3分の2にあたる10トンは廃棄していた。

ビッググロウス・森田祐加社長:
「どうせ捨てる柿だからもったいない」ということで、鳥取県でも有効活用できないかと思い、農家に協力を呼び掛けた

廃棄されるはずだった柿の有効利用にもつながっているこの取り組みは、廃棄物の削減を目指すSDGsの12番目「つくる責任 つかう責任」にも該当する。

ビッググロウス・森田祐加社長:
一番思っていたのは、柿農家がどんどん衰退している。作れる人が少なくなってきているので、「鳥取は西条柿」というイメージを持っていただき、衰退を防げるのではないかな

コロナ禍をきっかけに人気となった柿渋マスク。廃棄される地元商品を有効活用する手法は、多くの企業にとってヒントになりそうだ。

柿渋とマスク、コロナ禍でなければ出会わなかった組合せの今後に注目。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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