「SDGs」持続可能な社会の実現に向けて、多くの人たちが取り組みを続けている。
幅広い分野で17の目標が掲げられている中で、今回は最初のアクション「貧困をなくそう」、そして8番目「働きがいも経済成長も」への取り組みだ。
超高齢社会が進む中、問題となっている「高齢者の貧困」をどう防ぐのか。生きがいや働きがいを求める高齢者のために取り組む、北海道を代表するスープカレー店がある。
ジャガイモやニンジン、ネギなど具材がたっぷり入ったスープカレー。

さらに、大きなエビやマイタケをサクサクに揚げた天ぷらが自慢のお店「おくしばぁちゃん」。

スープカレーの名店「奥芝商店」の系列店であるが、他の店とはちょっと違う。
(Q.失礼ですが、今おいくつですか)
従業員:
67歳
従業員:
72歳
従業員:
78歳

従業員は60歳以上…これからのシニアライフのヒント
従業員は「高齢者」が中心。持続可能な社会の実現に向けて取り組むこの店に、これからのシニアライフのヒントがあった。
札幌市のスープカレー店を代表する店の系列店「おくしばぁちゃん」。店内を見渡すとこの日は従業員4人のうち、3人が60歳以上。
実はこの店、従業員を60歳以上に限定しているのだ。
従業員(72):
楽しいです
従業員(78):
生きがい

客:
とても温かい感じがして、安心して食事できる
客:
家庭的で話しやすいし、メニューも頼みやすい
独特の雰囲気が客にも好評のこの店。超高齢社会を生き抜く場を提供しようと取り組んでいる。

深刻化する「高齢者の貧困」
実は、高齢者の貧困は年々深刻化している。札幌市の生活保護受給者の世帯数は、2010年からの10年間で約24%増加し、5万5000世帯あまり。政令指定都市の中で、大阪市に次いで2番目に多くなっているのだ。
このうち65歳以上の高齢者の割合も年々増加し、2021年は半数を超えている。

札幌市は「社会の高齢化が一つの要因」としていて、高齢者の貧困は現実の問題となっている。
札幌で高齢者の就労を支援する人材サービス会社には、相談件数などが年々増えていると言う。
「高齢者の就労支援」でも増加する相談
総合人材情報サービス キャリアフィット 椎原大直さん:
将来の年金の問題や住宅ローンの情報に敏感になってきて、このままで大丈夫か、元気なうちはお金を稼ぎたいという人が増えている。そういった人の就労の窓口を、これから増やして行かなければ

年金が目減りし、「社会貢献」というよりも出勤の回数や時間などを具体的に示し、「収入」を重視する傾向にあるという。
2014年から働く金沢千代美さん(67):
いらっしゃいませー、おかけになってお待ちください
「おくしばぁちゃん」がオープンした2014年から働いている金沢千代美さん。働く前は40年間主婦だった。

従業員からは「やりがい」実感の声も
2014年から働く金沢千代美さん(67):
夫も退職して2年くらいたって、今度は私が好きなことやってもいいかなと
千代美さんは働く前まで、口下手な自分が接客できるのか不安に思っていたというが…
2014年から働く金沢千代美さん(67):
今はお客さんや従業員と話したり、年代の違う人と友達になれたり、仕事ってこんなに楽しかったんだと気付いた。最初はお客さんが来たら一歩下がって『いらっしゃいませ』だったけど、今は走りながら『いらっしゃいませ』。階段を2~3段飛び降りたりして

高齢者の生きがいや働きがいの場となっているこの店。もう一つ重要な役割を果たしている。
高齢者の雇用で「経済格差」の是正にも
おくしばぁちゃんを運営するNEXT LEVEL 巻口桂 部長:
働く場を設けて給料を支払うことで、経済格差や貧困を少なくするということにつながる。『お母さんの知恵』を入れた接客。おばあちゃんにしかできないものを提供している

年をとってもいきいきと、生活を心配せず働ける場所をいかに増やしていけるか。社会全体で考える時が目の前に来ている。
(北海道文化放送)