武装勢力タリバンがアフガニスタンを実効支配してから約2カ月が経過し、世界各国がこの事態に対してどう向き合おうとしているのか、それぞれの出方が明らかになりつつある。

カブール市内の市場(2021年9月27日)
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タリバン支援に積極的な中国

タリバン当局と最も緊密な関係を構築しているのが中国、ロシア、パキスタンの3カ国だ。
これら3カ国はアフガンに特使を派遣し、9月21日、タリバン暫定政権のアフンド首相らと会談したことを明らかにしている。中国外交部の趙立堅報道官は「3カ国とタリバン当局は、アフガニスタンの平和と繁栄、地域の安定と発展を促進するため建設的な接触を維持することで合意した」と述べた。

なかでも中国とタリバンの親密さは突出している。
9月7日にタリバン当局が暫定政権発足を宣言した際、2億元(約34億円)相当の支援をいち早く発表したのも中国だ。タリバン側も頻繁に中国への謝意を示し、中国を最重要パートナーと位置づけ「友好関係」を築きたいと繰り返しているのに加え、中国が推進する「一帯一路」構想への参加意志も表明している。

アフガニスタンへの支援を表明する王毅 国務委員兼外相(北京 2021年9月8日)

中国とタリバンは「利益」が一致

互いに全く異なる政治イデオロギーを掲げる中国とタリバンが接近するのは、そこから得られる利益ゆえに他ならない。中国が協力相手国に求めるのはいわゆる内政不干渉政策であり、ゆえにタリバンもイスラム教の同宗者であるウイグル人問題には干渉しないとしている。

中国は2008年には既にアフガンのアイナック鉱山の開発権を獲得、インフラ整備などの経済協力についても数年前から旧アフガン政権とタリバン双方に話を持ちかけていたとされる。
国連開発計画(UNDP)がアフガンは来年には国民の97%が貧困に陥る可能性があると予測しているように、国の再建と経済対策は待ったなしの危機的状況にある。タリバンが中国を頼みとする背景だ。 

“残骸”から機密情報が抜き取られるおそれも

中国がタリバン支配下のアフガンで得られる利益は経済的なものだけではない。
米軍がアフガンに残していった軍の装備品が中国に引き渡されれば、そこから中国が得ることのできる情報の価値は計り知れない。

壊された米軍のヘリコプターを調査するタリバン戦闘員ら(カブール 2021年8月31日)

米軍がアフガニスタンで使用していたIT機器のセキュリティを担ってきたサイバーセキュリティ会社Shift5のCEOジョシュ・ロスピノソ氏は、米軍はアフガンに残した航空機や装甲車などを「無効化した」と言うが、そこに搭載された無線機や通信機が一部でも残されていれば、時間をかけてそれを分解・解析し、システムの脆弱性を見つけ同種のシステムを攻撃する方法をあみだすことは可能だと指摘する。

米軍装備品には米軍の通信・暗号システムなど多種多様な技術が詰まっており、それが「敵」の手に渡れば米軍の手の内が明かされることになる。これは将来に渡って米軍が危険に晒されることを意味する。

米軍の技術、それにかかるコスト、米軍の計画といった「秘密」を暴くことができれば、中国はそれを自国の武器開発や戦略構築に役立てることができる。それは米と対立し、米に対抗する中国にとっては願ってもない恩恵となろう。

米軍の軍用車両に乗ったタリバンの戦闘員ら(カンダハル 2021年9月1日)

中国は、アフガンを荒廃させたのは米であり、ゆえに米にアフガン再建の責任があると批判、西側諸国はタリバン当局への経済制裁を解除しタリバン政権を「指導」していくべきだと主張している。

スウェーデンの安全保障開発政策研究所(ISDP)は日本政府のタリバンへの対応について、「日本はアフガンに埋蔵されているガス、石炭、ウランなどの豊富な鉱物資源から利益を得ることに大きな関心を持っている」と指摘している。

日本は中国のように、自国の利益のためにタリバンの人権侵害を見て見ぬふりをし、タリバンとの「よい関係」を構築していくつもりなのか。世界が注目していることを忘れてはならない。

【執筆:イスラム思想研究者 飯山陽】