東京五輪で29年ぶりベスト8進出、パリ五輪での活躍が期待されるバレーボール日本代表の石川祐希(25)が、10月から始まるセリエAの開幕戦を前に決意を語った。

「今シーズンのテーマは“勝つ”。世界で勝つためにはトップチームを倒すことをテーマに戦っていきたいと思います」

7シーズン目となるイタリア・セリエAでのプレーを前に語ったのは「勝つ」ことへの執念だった。

屈辱から5年…29年ぶりベスト8進出

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2016年のリオ五輪で出場権を逃した日本。当時20歳の石川はバレーボール会場のスタンドにいた。

「やっぱうらやましいですし、この舞台に自分も立ちたい」

目の前で繰り広げられる光景をただ見つめることしかできなかった男は、5年後、東京五輪の舞台で躍動した。

男子バレーでは実に29年ぶりとなるベスト8(最終順位7位)に進出。傍から見れば歴史的快挙だった。それでも今、エースの胸に去来する思いは「悔しさ」だった。

「(準々決勝で)負けたことが悔しいですし、もっと勝ちたかったのが本音。チームを勝たせる役割がキャプテンだと思うので、実現できなかったのはまだまだ自分の力不足だと反省しています」

チームを大舞台で勝利に導いてこそ「真のエース」。そんな存在へと成長を遂げるため、再び世界最高峰のリーグで己を高める戦いが始まる。

世界の頂点に挑む7年目の誓い

イタリアに渡って7シーズン目を迎える石川は、「大学の頃から短期でいかせてもらって、プロになって本格的にいくようになって、もう7シーズン目かと。本当にあっという間に時が過ぎているなと思う」と振り返る。

石川がプレーするイタリアのセリエAは今シーズンまさに世界のオールスター状態となる。

イタリアの絶対的スターのI.ザイツェフに、東京五輪MVPでフランス金メダルメンバーのE.ヌガペト。さらにブラジルの世界トップのセッター、ブルーノ.RがこぞってセリエAに復帰する。それに加え、地上最強アタッカーと呼ばれるポーランドのW.レオンなど、世界のモンスターが一挙集結している。

その最強リーグで石川は、「世界一のプレーヤー目指して今も取り組んでいますし、そう言われる選手になりたいと思います」と、より「高み」を目指す。

昨シーズンは強豪ミラノで、助っ人外国人としてプレーし、チームトップでリーグ8位となる470得点をマーク。イタリアでも年々、存在感は増している。

「やっぱりイタリア人の選手よりも年俸とか多くもらっているので、結果出さないといけないですし、役割を果たさないと生き残っていけない」

イタリアで知った日本バレーに足りないもの

そんなハイレベルな環境の中でこそ手にした武器がある。

「高いブロックに対してどう得点を取るか、今世界がどのような技を使って得点をしているのかを知れるというのは、海外のトップリーグでやる強みだと思う」

多彩なフェイクプレーなど世界のトレンドを体感することで吸収し、自分のプレーとしてアウトプットする。

石川がさらにもう一つ、イタリアに行って急激な変化を遂げたのが、メンタル面での成長だ。

表現力というのは大事だと改めて海外にいって思いました」

日本のエース石川がイタリアで学んだのがバレーボールにおける「表現力」。

「やっぱり活躍している選手は表現がしっかりできていて、時には怒ったり、時には笑ったり、自分の思ったことを伝えてチームメートを動かすとか、トップの選手は上手いと思っていた」

イタリアに渡った時には感情を表現することが苦手だった石川も、東京五輪ではキャプテンとして、感情を爆発させチームの士気を高めるシーンが何度もあった。

「今回のオリンピックでも吠えたりとか、チームを鼓舞するだけじゃなく、自分自身に喝を入れる。表現力と自己主張、まだ日本チームでも足りていないことだと思う」

表現力を武器に世界一のプレーヤーへ

自分自身が変わることで、日本が変わる。
次こそは大舞台で勝ち切るために、「世界一のプレーヤー」になる。

「あと一歩二歩ぐらいまではきていると思う。もうワンステップ、ツーステップいくためには勝つことが必要だと思っているので、勝つ選手に今シーズンはなりたいと思っています」

10月11日に開幕するセリエA、究極の高みを目指すエースの戦いは続く。