日米で処分方法を協議中に汚染水を放出

米軍が沖縄県宜野湾市の普天間基地で保管する、人体に有害な有機フッ素化合物PFASを含む汚染水の処分について2021年9月17日、日本側がその費用約9200万円を負担することが発表された。

沖縄・宜野湾市 普天間基地
沖縄・宜野湾市 普天間基地
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なぜ、1億円近い私たちの税金が投じられなければならないのか。また、再発防止に向けて政府に求められることを有識者に聞いた。

普天間基地に隣接した沖縄国際大学の研究室で、前泊博盛教授は今回の政府の対応を厳しく批判した。

沖縄国際大学 前泊博盛教授:
外交力のなさを示す、このお金の解決という在り方だと思いますよ。国民からすればコロナで大変な時に、なぜ日本が負担しなくても良いお金を負担させられるのかという、その説明を求められていると思いますよ

米軍は8月26日、汚染水の処分方法を日米で協議している最中、一方的に「日本の指針値を下回る1リットルあたり2.7ナノグラム以下に処理し安全だ」として汚染水を放出。

宜野湾市の調査では、米軍の説明とは異なる670ナノグラムと高濃度の値が検出された。

貯水槽に溜まり、排水から流出が続く可能性も

また前泊教授は、米軍に対し厳しい措置が必要だと強調する。

沖縄国際大学 前泊博盛教授:
国内の環境汚染の問題なので、汚染したものについては国際法上も責任をとらせることは可能。国際的にも「こういう事がありました」と国連で報告をするくらい、インパクトをもって動いてほしいと思いますね

目に見えない汚染物質「PFAS」は、2020年4月に普天間基地から流出した白い泡、泡消火剤に含まれていた。

沖縄テレビが入手した米国防総省の資料には、PFASを含む泡消火剤を1970年代から使い始めたと記されている。

今回の米軍による放出を受けて、沖縄県が下水を処理する宜野湾浄化センターに流入する水を検査したところ、放出前はPFOSとPFOAあわせて1リットルあたり9.9ナノグラムだったのに対し、放出後はその2倍となる21ナノグラムに上昇していた。

数値は宜野湾市が採取した下水の670ナノグラムに比べ、低くなっている。沖縄県は、浄化センターには他の地域からの排水が混ざり、普天間基地からの排水は数十分の1に留まるとしていて、希釈された可能性が否定できない。

PFAS研究を続ける京都大学の原田浩二准教授は、下水の排水量は変動が大きくデータが必要だが、仮に米軍が今回、2.7ナノグラムで放出していたとすると、次のような問題点が浮かび上がるとしている。

京都大学 原田浩二准教授:
まさにこれは、過去数十年、PFOSを含む泡消火剤、その他のものを使ってきたということが積み重なって敷地全体を汚染していると。こういった解釈があるのではないでしょうか。今回の政府の対応は一時的な解決に過ぎず、基地内の汚染が除去できない限り、いつまでも貯水槽に溜まってその他の排水からも流出が続く恐れがある、今後も沖縄県や宜野湾市による調査が必要

沖縄・金武町でもPFASが検出 発生源は米軍か

2021年9月17日、金武町の水道用水として利用される地下水源からPFASが高い濃度で検出され、その水源からの取水を停止していることがわかった。

2020年6月の金武町による調査で、キャンプハンセンのフェンスの近くにある水源からPFOSなどが国の暫定指針値の8倍となる410ナノグラムが検出され、金武町は「発生源はキャンプハンセン内」との認識を示している。

次々と明るみに出る水の汚染。しかし、日本側は日米地位協定が壁となり、汚染源の調査すら出来ない現実がある。

沖縄国際大学の前泊教授は、県民の命に直結する問題として、日本政府は毅然とした態度で臨むべきと力を込める。

沖縄国際大学 前泊博盛教授:
米軍に厳重に抗議をした上で、司令官の更迭を求める。それから流したことに対する補償。これまでの血液汚染に対する住民補償。そういったものも含めて被害の全容を明らかにした上で、米側に対して損害賠償請求を起こしていくことが必要だと思いますね。それによって次の新たな汚染問題を食い止めていく、抑止力につながっていくと思います

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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