中国で芸能界に厳しい“締めつけ”が起きている。中国当局は8月、低俗な番組をテレビなどから排除し、中国の文化を重視するように通達を出した。

富裕層を叩くことで庶民の支持を得たい思惑の一方で、共産党への忠誠心を求めることは政治闘争を思い出させるとの声もある。

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FNN記者のイチオシのネタを集めた「ネタプレ」。今回は中国・北京支局の山崎文博支局長が「芸能界への圧力に見る中国指導者の本音は」を伝える。

アイドルや“推し活”も…芸能界が規制対象に

FNN北京支局 山崎文博支局長:
中国当局による規制は日常茶飯事なんですけれども、今回対象になったのは芸能界、特にアイドルなんです。中国芸能界のアイドル人気はどれほどのものか映像をご覧ください。アイドルの男性が移動するのと同時にたくさんの人が一緒に移動していきます。違う場面を見てもこの人だかりですし、いたる所にファンの姿が見られます。エスカレーターを移動する際には人がぎゅうぎゅうで、身動きすらとれなくなっているのがわかると思います

FNN北京支局 山崎文博支局長:
このアイドルをめぐって、今回は様々な規制が実施されました。まずは「アイドル育成番組」の禁止です。中国ではテレビやネットでのアイドル育成番組が人気で、歌やダンスを披露するアイドルの卵に若者らが投票したり、審査員がアドバイスする番組がいくつもありました。これらの放送が規制の対象となったわけです

FNN北京支局 山崎文博支局長:
ネット上でファンが好きなアイドルにいいねをしたり、投げ銭をして応援する“推し活”も過熱しています。画面上に「求投」とあるのは「投げ銭をお願いします」の意味ですし、画面上のイラストなどは投げ銭の金額を表したりしています

FNN北京支局 山崎文博支局長:
しかし“推し”をめぐってはネット上での中傷があふれたり、投げ銭で親の金まで使い込む未成年が増加したりして、ファンの行動が社会問題化していました。そこで当局が今回こうした行為を禁止したというわけです

韓国「BTS」のファンアカウントは発言停止に

FNN北京支局 山崎文博支局長:
中国版のツイッターのウェイボでは、韓国の男性アイドルグループ「BTS」のファンアカウントが60日間の発言停止とされました。このアカウントは100万人のフォロワーを持つほどの人気なのですが、メンバーの誕生日を祝う際、韓国の航空会社の飛行機にメンバーの名前や写真のラッピングを施す資金を募り、1時間で約3900万円を集めていました。しかし、当局の指導を受けたウェイボが「非理性的な行為は厳正に処理する」と規制の対象になったわけです

FNN北京支局 山崎文博支局長:
他にも、日本でもよくある芸能人の人気ランキングの発表も禁止されました。それから低俗なインフルエンサー(Youtuber)の規制、芸能人への高額な報酬や出演料の禁止など。大規模で様々な規制が突然始まったというわけです

習近平体制が打ち出した「共同富裕」とは?

FNN北京支局 山崎文博支局長:
当然これには理由があります。そのひとつが習近平国家主席が8月、党の重要会議で打ち出した「共同富裕」(みんなが一緒に裕福になる)という方針の影響だと見られています。今の中国は貧富の格差がかなり深刻で、この貧しい人たちの不満を和らげるためにお金持ちの芸能界がやり玉に挙がったというわけです

FNN北京支局 山崎文博支局長:
芸能界では2018年、人気女優のファン・ビンビンさんが約146億円の支払いを命じられた巨額脱税事件がありましたけれども、先日は第2のファン・ビンビンといわれるジェン・シュアンさんの脱税事件も報じられています。巨大IT企業では、アリババなどの大手が独占禁止法違反の疑いなどで相次いで摘発されています。社会的には少数である富裕層に対して圧力をかける一方で、多数派の貧困層にそのお金を回して広く国民の支持を得ようというのが、習金平国家主席の狙いだと見られています

FNN北京支局 山崎文博支局長:
もうひとつは芸能界も含め、共産党への忠誠心を高めようという点です。通達の中では「旗色を鮮明に党への愛 国への愛を確立する」とうたわれています。さらに先程のテレビ出演の規制の通達では「党や国と心が離れている人は使わない」と、日本ではちょっと考えられないような中身が盛り込まれています

中国国民の不満を恐れた“ガス抜き”か

FNN北京支局 山崎文博支局長:
こうして習近平体制が始めた思想や言論の統制は、1966年に毛沢東氏が若者らを扇動して資本主義を批判し、文化人や改革派とされる政治指導者らを弾圧した「文化大革命」に似ていると言われ始めています。今や一強状態といわれている習近平国家主席も、当時の毛沢東氏と同様、より多くの国民の支持を集めて自らの地位を絶対的なものにしようという風に見られています

FNN北京支局 山崎文博支局長:
ただ、国民の支持といってもですね。当然メディアも共産党の指導の下にありますから、日本のように支持率を調べたりとか、国民の不満が紹介されるなどということはありません。つまり中国は「民意を測りにくい」という特色があります。ですから日本と比べて国民がどんな不満を持っているのか、何が改善策なのかがよくわからないという側面があります。今回芸能界に対して行われた規制や引き締めは、習近平体制がさらなる支持を求めるがゆえの、いわば不安の表れという側面もありますし、国民を恐れるからこそ出てきた規制といえるのかもしれません

イット!のスタジオではコメンテーターでジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
芸能界、特にアイドルたちへの規制が厳しくなっている。よく最近ニュースで耳にするんですけれどもどうご覧になりますか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
格差が広がっていて世の中に不平不満がたまっている。そのガスを抜くために、いわば芸能界ってのは見せしめの役割を果たしてると思ったんですね。習近平体制も、来年党大会が開かれてこの後継続するかどうかという非常に重要な節目になってますから。それに向けて今の社会に充満している不平不満に対する危機感の表れが、こういう形になって出てきてるんじゃないかな。思想教育の徹底なんかもその一つの表れだと私は思いますけどね

(「イット!」9月16日放送より)

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