新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。

シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は、福岡県飯塚市にある、飯塚病院感染症科部長の的野多加志先生に、誤った情報もある新型コロナウイルスの予防策と、変異株の今後、また抗体カクテル療法など抗コロナ薬の現状などについて話を聞いた。

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マスクを外して他人としゃべらない

飯塚病院感染症科部長・的野多加志先生: 
新型コロナウイルスの感染伝播の特徴や今後のことをお話しします。

まず、例えば、飲食の有無とか、夜お酒を飲んでないからとか、換気が良いのでバーベキューは大丈夫といった議論は実は誤っています。

今回の新型コロナウイルスはとても特徴的で、普通のウイルスは咳、痰、くしゃみ、いわゆる本人がウイルスを外に出すような飛沫を飛ばしたときに感染するのが特徴ですが、今回の新型コロナウイルスは唾液で検査するほど、唾液の中にウイルスがいます。

つまり、咳や痰を出してなくても、唾を飛ばせば相手にうつしてしまうという特徴がこれまでと大きく違うので、マスクを着けましょうという話になっています。

不織布マスクとウレタンマスクの飛沫の予防効果は、3割ほどウレタンマスクは落ちるといわれています。

ですので、ウレタンマスクを不織布マスクに替える。同居している家族以外とマスクを外して唾を飛ばすような会話が感染のリスクと言われているので、県境をまたぐ移動がどうこうとか、ある程度リスクが高いところが一人歩きしていますが、そうではなく、端的にマスクを外して他人としゃべらないようにすることが感染対策になります。

もう1つ、今ワクチンがだいぶ広まっていますが、2回打っても予防効果は100点ではないということが注意ポイントです。

発症をゼロには出来ないので、感染対策を続けながらワクチン接種も受けるといった2段階、3段階の対策をとる必要があります。

変異株はどこまで強くなる?

新型コロナウイルスは2週間おきぐらいにどんどん顔つきを変えていると言われています。
ウイルスにとっては都合の良い、我々にとっては都合の悪い変異を持っているわけです。

世界で注目され、日本でも増えているデルタ株や一時期前に流行ったアルファ株などがそういった変異になります。

当初アメリカは、ワクチンを打った人はマスクを外して良いというキャンペーンをやっていましたが、デルタ株が出てきて表明を変えました。つまり、推奨を変更しました。

相手も変異してるので、人も変化していくのが必要ということです。

ウイルスは変異をし過ぎると弱くなってしまい、あまり生きられなくなると言われています。

今回のデルタ株などは感染力が強くなる変異を認めていますが、理想的には重症化しないような変異がさらに入ってくると、ウイルスにとっても人を殺すことなく拡がる。人にとっても重症化しないで済む。

すなわち、ただの風邪のような形になっていくことが期待されています。
過去のウイルスも数年以上かけて悪い方向に向かっていった変異は過去にないです。

いつかは落ち着いて人間と共存していくようなウイルス変異が大半なので、今はその過程の途中を見ているのであろうという推察、希望はあります。

しかし、新型コロナウイルスはまだわからないところがたくさんあるので、過去のウイルスの通りになっていくのかどうかは、時間が経ってみないとわからない。
そういった意味で、来年、再来年に新型コロナウイルスが今後どうなっていくのかという道筋が何となく分かってくるのではないかと思っています。

抗体カクテル療法の可能性と欠点

最近話題の「抗体カクテル療法」ですが、2種類の抗体を入れているのでカクテル療法という名前になっています。

2つの種類の抗体がウイルスのスパイクタンパクにくっついて、人の細胞の中への侵入を防ぐ。
つまり、ウイルスの量を減らすということです。

時間が経って重症化してから投与する薬ではなく、発症して7日以内に投与する薬ですので、感染した当初にウイルスの量を減らすための薬です。

この薬は、入院や重症化を7割ほど落とせると言われているので、重症化する因子がある程度ある方に優先的に投与する薬剤です。

欠点は、数が大量にあるわけではないので、発注してから来るまでにタイムラグがあります。
早々と打ちたい薬なのに到着するまでに時間が経ってしまう薬なので、まだまだ100点とは言いがたいと考えています。
 

その他の「抗コロナ薬」といわれている薬は、日本でも世界でも今治験が進んでいます。

薬の形態は注射なのか飲み薬なのか、いろいろと種類がありますが、外来などで使い勝手が良い飲み薬も日本でも研究が進められていて、実際に人に対して治験が始まっているところです。

まだ治験段階ですので、どの薬がどれぐらいの効果があるのかはまだわかっていませんが、少なくとも開発段階を終えて、人に投与する段階に来ている薬剤は世界にいくつかあります。

"withコロナ"の未来

新型コロナに限らず感染症の原則は、川に例えると「上流で感染対策をする」。
ウイルスの入口や出口を塞ぐ。

上流から中流にかけてでワクチンを打つ。
仮に感染対策を突破されても自分の免疫で何とかなる。

そして仮に発症してしまった下流で、重症化させない、入院させないなどの対策が大事になってきます。

目指すべきゴールは、ワクチンと治療薬で新型コロナウイルス感染症を「入院しないような病気」にできれば、コロナを風邪にできる、つまり共存できるということになります。

新型コロナウイルスで亡くなる率が減りました、というところがゴールではなく、「入院しないような病気になりました」というのが我々の目指すゴールです。

そうするときちっと診断も治療もできて、かつ一番大事な予防もきちっとできる。
それが、今後の目指すべきゴールだと考えています。

敵はウイルスで、人や政治ではないわけです。皆が戦うべきはウイルスです。

そして、皆の行動が最終的には社会を動かしますし、社会を変える原動力になっていくと考えているので、今一度感染対策のポイントをきっちり捉えて、強化していただく必要があると思います。