太平洋戦争中に戦地へ赴いたある日本人軍医が、家族に宛てた手紙が見つかり、長崎・諫早市に寄贈された。その一部が公開されている。

父が家族に宛てた300通以上の手紙

大塚梓さんの父・格さんの手紙

十月八日と云へばもうそちらは秋が訪れて居りますね。
   (中略)
こちらは又雨が多くなつて毎日の様に降ります。
降つては照り照つては降る 内地の梅雨期そつくりです。
爆撃も慣れて参りました。
超低空奇襲でジャングルの梢をゆさぶつて轟いて来る様は一寸乙です。

諫早市 美術・歴史館蔵
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諫早市に手紙を寄贈したのは、大塚梓さん(84)。

諫早市に手紙を寄贈した大塚梓さん

合わせて300通以上の手紙とはがきは、軍医だった梓さんの父・格(いたる)さんが家族に送った手紙だ。
2020年、梓さんが亡き母・綾子さんの遺品を整理していた際に、父が戦地から家族に送った手紙が保管されているのを見つけた。

手紙を寄贈した大塚梓さん:
どのくらいあるかは、わからなかったのですが、小さいころから絵はがきを見せられてはいた。こんなに綿密に書いたものが、たくさんまとまってあるとは知りませんでしたね

格さんは諫早市出身の軍医で、1939年から5年間、中国とニューギニアで従軍し、1944年に戦死した。

大塚梓さんの父・格さん

元々、医学の勉強のために臓器のスケッチなどをしていたため、絵がうまかったという。手紙にも、精密かつ立体的な描写が添えられていた。

諫早市美術・歴史館 大島大輔さん:
一級の戦時資料になるのかなと思う。年代的にも、昭和14年の出征から戦死される19年まで300通以上ですから、ものすごく資料的価値があるのかなと

諫早市美術・歴史館 大島大輔さん

「二人だけの秘密」…検閲想定した暗号も

中国からニューギニアに移った格さんが子どもたちに宛てた手紙は、読みやすいよう、カタカナで書かれている。

大塚梓さんの父・格さんの手紙

ナンカイセンセンノオイシイクダモノヲ
ミンコチャンニオクリマス
コレハミンコチャンガイツモ
カアチヤンノイフコトヲヨクキイテ
オリコウサンダカラソノゴホウビナノデス
タロウチヤンアツチヤンカアチヤンモホシガツテオリマスカラ
ワケテタベサシテアゲナサイ

果物の絵が添えられた手紙

手紙を寄贈した大塚梓さん:
家族を本当に思った中身がいっぱい書いてある。戦争に行って、自分の命を(危険に)さらしているはずなのに、戦地の生活を家庭に伝えよう、安らぎがあることを伝えようという風な、そういう努力をしているような気がしますね。しかし、検閲があったはずですから、それに触れない程度に上手に書いたのかなと思いますね

諫早市美術・歴史館 大島大輔さん:
手紙の中には 格さんと奥さまの綾子さんしかわからないような暗号を使って、「今どこにいる」ということを伝えたりとかですね。あいうえお、五十音、12345とか。簡単に言うとポケベルみたいな感じで

夫婦にだけわかる暗号が使われた手紙

暗号を読み解いた手紙

約1カ月後に場所を変わるかもしれない

暗号は“ポケベル”のよう

諫早市美術・歴史館 大島大輔さん:
二人だけの秘密というか。それが漏れてしまうと多分、捕まると思いますので。そういう手紙を通して、二人だけの秘密を共有できたのかなということがわかる

愛情のこもった手紙が戦争の歴史的資料に

大塚梓さんの父・格さんの手紙

今度も亦皆無事だった。
代用客車の鉄板に寄りかかつて落附いたかと思ふと兵隊さんは皆睡つて了つた。
ひどく疲れているのだ。
真に迫った悲壮な姿! これは敗北の凱旋ではなく実に栄えある勝利の凱旋です。
勝つ為には又生きるために如何に真剣なる努力が要ることか!

諫早市 美術・歴史館蔵

諫早市美術・歴史館 大島大輔さん:
お医者さんとして行っている人(格さん)と、第一線で戦う人との視点の違いがあるのかなと

手紙を寄贈した大塚梓さん:
そうですね、それはあるでしょうね。軍隊の行動というのが、いわゆる、その土地に上陸して、そこを占拠していくわけでしょ。それがあたりまえだということで行動しているわけでしょ。まったく考え方が違うんだなと。軍のおそろしさですね、そういうのを感じますね

大塚梓さんの父・格さんの手紙

雨上がりの陽光は燦々と大海原に溢れ、海底に投射し風穏やかに地平の彼方には悠然と雲湧き上る。
此の平和な海原に空襲爆撃などあらうとは思へない程である。
今しも多忙な荷揚げを終つて再び数千里の波濤を乗り越えて我等の故郷の方向へ
帰航の途に就かうとして居る一隻の船がある。
心から航海の安全を祈る。

諫早市 美術・歴史館蔵

手紙を寄贈した大塚梓さん:
こういうのを読むと、親父を近くに感じますね。(手紙が)家にある間は、親父の愛情のこもった伝達道具でしかない。ここに、公に収めた瞬間から戦争の歴史的資料になるんじゃないかな

37歳でこの世を去った父・格さん。梓さんは、戦地から家族へ宛てた300通以上の手紙から、さまざまなことを感じてほしいと訴える。

大塚梓さんの父・格さんの手紙

太郎ちやん
お母さんやおばあちやんやねーちやんの云ふことをよく聞いて
学校からは早く帰りなさい。
梓ちゃん あまり泣かないでください。笑つてばかり居なさい。

諫早市 美術・歴史館蔵

梓さんは、「絵を見て、当時の戦争の状況を感じてほしい。多くの人の目に触れて、後世の平和のために役立ててほしい」と話している。

手紙の一部は、諫早市のホームページで読むことができるほか、8月22日までは、諫早市美術・歴史館で展示されている。

(テレビ長崎)

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