けん引役の個人消費が伸び悩み
新型コロナの感染拡大がこれまでにないスピードで続くなか、国内景気の持ち直しの鈍さが浮き彫りになった。
16日朝、内閣府が発表した2021年4月から6月のGDPの速報値は、物価変動の影響を除いた実質で、前の3カ月と比べ、プラス0.3%だった。
このペースが1年間続くと仮定した年率換算ではプラス1.3%だ。2四半期ぶりのプラス成長に転じたが、伸び幅は限定的となった。

4月から6月は、緊急事態宣言が東京や大阪などに発令され、飲食店の時短営業、大型商業施設の休業などが相次いだ時期にあたる。
高齢者を中心にワクチン接種が本格化したものの、外食や小売などのサービス消費が打撃を受け、景気回復の動きは力強さを欠く結果となった。

項目別では、輸出が、好調な海外経済を背景にプラス2.9%の伸長を見せ、企業の設備投資もデジタル化などへの対応でプラス1.7%だったが、GDPの半分以上を占める個人消費が、外出自粛などの影響で、プラス0.8%にとどまり、全体の伸びを鈍らせた。
日本と欧米の回復力の差
一方、欧米は、日本に先んじて、4月から6月のGDPを公表しているが、景気の改善傾向が見てとれる。
アメリカは、実質の成長率が年率換算で前期比プラス6.5%と、4四半期連続のプラス成長となった。ワクチン接種の進展と大型の経済対策が功を奏して、個人消費が2桁の伸びを見せ、GDPの規模はコロナ禍前の2019年10月から12月の水準を上回って、過去最大となった。
ユーロ圏も、年率換算でプラス8.3%と、高水準を記録した。接種が進み、落ち込んだ経済活動が正常化しつつある結果で、国別では、ドイツが6.1%増、フランスが3.8%増、イタリアが11.1%増などとなっている。イタリアは回復が遅れていた分、伸びも大きく出た。
イギリスも、プラス20.7%と、個人消費の好転を背景に、突出した成長率となった。
国内景気は回復軌道を描けるか
日本と欧米との間で景気の回復力の差が鮮明になった格好だが、ワクチン接種で先行していた欧米でも、このところのデルタ株の流行により、景気改善への楽観的なシナリオに疑問符がつくようになってきた。

接種の進捗度合いで後れをとったうえに、デルタ株の広がりという新たな下押し要因に直面することになった日本の国内景気は、本格的な回復軌道を描いていけるのか。
先行きリスクがくすぶる局面で、予断を許さない状況が続く。
【執筆:フジテレビ 経済部長兼解説委員 智田裕一】