活発な前線が停滞している影響で、九州では断続的に激しい雨が降っている。この雨は西日本から、今後、東日本にも広がり、長期間にわたり災害級の大雨に警戒する必要がある。

そして大雨が長引けば、土砂災害や道路の冠水、河川の氾濫などにも注意が必要だ。状況によっては冠水などに備え、いまのうちに家屋への浸水対策を考えておくことも重要だ。

そこで、災害級の大雨の可能性がある今、2020年9月に「埼玉県草加市が勧める水のう」を紹介した記事を再構成し、改めて大雨への備えとしてほしい。

「水のう」は家庭で簡単にできる浸水・逆流対策

災害級の大雨や台風がくる前にどのような備えをすればよいのか?

埼玉県草加市が、備えの一つとして活用を勧めているのが「水のう」だ。

台風や集中豪雨などの大雨の際、家の中への浸水を防ぐためには、一般的に「土のう」が使用されるが、「土のう」は女性やお年寄りが取り扱うには重くて大変。
 
この「土のう」の代わりとして、家庭にあるもので簡易的に作ることができるのが「水のう」というわけだ。

玄関前に置くことで“家の中への浸水”を防ぐだけでなく、洪水の際に懸念されるトイレや風呂場、洗濯機などの排水口からの“水の逆流”を防ぐこともできるのだという。

草加市HP
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草加市HP
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草加市はこの「水のう」について、HPに『水のうで我が家を守ろう! ~家庭での簡易水防~』と題した資料を2020年7月9日に公表し、活用を呼びかけている。

「家庭用ゴミ袋」と「水」だけで作れる

作り方は簡単。

用意するのは、「家庭用ゴミ袋(45リットル程度)」と「水」だけ。

家庭用ゴミ袋と水(ホース)だけ(草加市HP)
家庭用ゴミ袋と水(ホース)だけ(草加市HP)

まず、ゴミ袋を2重にし、中に半分程度の水を入れる。

水を入れる(草加市HP)
水を入れる(草加市HP)

そして、袋の中の空気を抜いて、口を結べば、完成。

完成(草加市HP)
完成(草加市HP)

水を入れるときにホースを使えば、「水のう」を設置したい場所で作成可能で、運搬が不要になるため、より便利だという。

より強固な「止水壁」も作成可能

さらに「水のう」に段ボールを組み合わせると、より強固な「止水壁」を作ることもできる。

まず、段ボールを用意し、設置したい場所に並べ、「水のう」を作る。

そして、段ボールいっぱいに「水のう」を詰め、段ボールのふたを閉めたら、「止水壁」の完成。

止水壁(草加市HP)
止水壁(草加市HP)

これを玄関前に置くことで“家の中への浸水”を防ぐことができる。

「土のう」と比べて、3つのメリットがある

草加市が「水のう」を勧める理由は、取り扱いが大変な「土のう」に比べて、明確なメリット
が3つあるから。

1つめは「持ち運びが不要」。

「土のう」の場合、消防署などに自分で取りに行く必要があり、しかも1袋約20キログラムあるため、運ぶのが大変。さらに、配布できる数に限りがある。

これに対し、「水のう」は、家にあるもので、しかも、設置したい場所で作ることが可能。さらに、必要な数を作ることができる。

2つめのメリットは「片づけが簡単」。

「土のう」の場合、返却ができないため、使用した後は自分で保管しなければならない。このため、保管場所に困ることになる。

これに対し、「水のう」は、ゴミ袋に入った水を流せば、片付け終了。片付けが簡単なのだ。

3つめのメリットは「再利用が可能」。

使ったゴミ袋は、乾かせば、本来の用途であるゴミ袋として使用できるのだ。

草加市HP
草加市HP

「土のう」に比べて、メリットが多いという「水のう」だが、なぜ草加市が勧めるのか?何かきっかけがあったのか?

埼玉県草加市の担当者に理由を聞いた。

草加市が「水のう」を勧める理由

――草加市が「水のう」を勧める理由は?

2019年、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風19号を受け、草加市でも水害への備えをしっかりやっていこうと考えました。

そして、家庭でできる備えとして、「土のう」よりも「水のう」の方がメリットが大きいと考え、そのメリットや使い方、活用法を周知してもらうため、『水のうで我が家を守ろう! ~家庭での簡易水防~』と題した資料を公表しました。


――玄関前やトイレ、風呂場、洗濯機にはどのようなタイミングで置けばよい?

「水のう」は雨が降り始める前に置くのが理想です。

事前に置くのが難しい場合は、ニュースや自治体の呼びかけを参考に、水位が上がり、浸水・逆流する恐れが生じたときに置いてください。

 

線状降水帯による記録的な大雨も予想される中、今後の雨のピークは、一番影響が長引きそうな中国・四国・九州で週末にかけて。東海・近畿は14日まで、北陸・東北も13日午後から大雨となるため、広範囲にわたって影響が出てきそうだ。日に日に雨が強まっていくと、大雨が蓄積されて災害の危険性が高まるため、警戒が必要になる。

この対策は今回の災害級の大雨だけでなく、台風でも有効となる。これまでの常識が通用しない自然災害が増えている中、このような知識を身につけ、できる備えを早めにしておくことがより重要になってくる。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。