熱戦が続く東京オリンピック・パラリンピック。スポーツが持つ力は、私たちを勇気づけるだけでなく、聴覚障害への理解にも期待が寄せられている。
「私もホームランを打ちたい」障害者野球チームの選手たち
香川県丸亀市で懸命に野球に取り組むのは、手や足などに障害がある選手たち。2021年4月に設立された障害者野球チーム「香川チャレンジャーズ」だ。
![今春に設立した「香川チャレンジャーズ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/700mw/img_ed097d4cccc5661d02d31e9bb680f474672454.jpg)
メンバーは、選手やサポートスタッフ約50人。週に1回汗を流す彼らにとって、東京オリンピック・パラリンピックは大きな励みになっている。
香川チャレンジャーズの選手:
今すごくスポーツに注目が集まっている時期ですので、そういう中でその年にチャレンジャーズが生まれてスタートしたということは、非常に大きなことだと思いますし、うれしいことでもあります
香川チャレンジャーズの選手:
パラリンピックもあるので、こういう身体障害者スポーツとしての野球も、パラリンピックの種目になればなと思っています
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香川チャレンジャーズには、聴覚に障害がある選手がいる。高松市に住む須田和昌さん(56)だ。
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生まれつき聴覚に障害のある須田さんは、ろう学校中学部でソフトボールと出会い、卒業後は聴覚障害者の仲間と野球に励んでいるが、立ち上がったばかりのチャレンジャーズにも加入した。
須田和昌さん:
やっぱり野球が一番楽しい
――オリンピックは見ますか?
須田和昌さん:
はい。ソフトボールでホームランを打ったのを見て、私もホームランを打ちたいと思った
![仲間と野球に励む須田和昌さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/2/700mw/img_d2b6cc91e1af2760c38b1d2b1ab05639730645.jpg)
世界的スポーツ大会「デフリンピック」 2025年の招致目指す
パラリンピックも楽しみにしている須田さんだが、実は聴覚障害者には、パラリンピックの参加枠はない。
同じ障害者スポーツといっても、身体と聴覚ではコミュニケーションの壁があり、唯一の聴覚障害者メンバーの須田さんも、練習の時にはサポートスタッフの手話が頼りだ。
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須田和昌さん:
最初は(チームメートの)言っていることがわからなくて、みんなの様子を見て同じことをしていた
聴覚障害者にとっての世界最高峰のスポーツ大会「デフリンピック」は、オリンピックと同じように夏季・冬季の大会があり、それぞれ4年に1度開催される。
![提供:一般財団法人 全日本ろうあ連盟](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/b/700mw/img_0b93066cebcb25792821478379f409ed529791.jpg)
会場では国際手話が使われ、競技のスタート音や審判の声などは、目で見てわかるように対応している。
![提供:一般財団法人 全日本ろうあ連盟](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/700mw/img_43b3def2691ba703d4f22e5b6a9161a2674560.jpg)
2017年の大会で日本は、バレーボール女子で金メダルに輝くなど、過去最多の27個のメダルを獲得した。
全日本ろうあ連盟 デフリンピック準備室・久松三二室長:
ろうのアスリートは、オリンピック・パラリンピックと比べて非常に知名度が低いです。ろうのアスリート1人1人が一生懸命努力している、頑張っているという状況について、なかなか皆さんに見ていただく機会はございません
実はこのデフリンピック、全日本ろうあ連盟が日本での初開催となる2025年夏季大会の招致を目指していて、オリンピックによるスポーツへの関心の高まりに期待を寄せている。
全日本ろうあ連盟 デフリンピック準備室・久松三二室長:
自分が頑張る力、生活をしていく力、そして、そういうものを身につけていくのと同じように、聞こえる人たちの皆さんに対しても、元気や勇気を与えることにつながっていくことが期待できます
![全日本ろうあ連盟 デフリンピック準備室の久松三二室長](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/700mw/img_ae8550ad6fb89755241e7cfead3c55ce380853.jpg)
デフバスケ選手の発掘に向け 日本代表監督の活動
一方で、招致に向けて早くも動き出している人がいる。
バスケットボールの指導のため、和歌山県から定期的に岡山県津山市の岡山県作陽高校を訪れる上田頼飛さん(39)。聴覚障害者が行うデフバスケットボール男子の日本代表の監督を務めている。
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デフバスケットボール男子日本代表・上田頼飛監督:
全国各地に指導に行かせていただいていて。その理由としては、やはりデフ選手の発掘。(ここでは)健常者の方を教えているんですけれども、そこから(聴覚障害者に)情報の呼びかけをたくさんしていきたい
上田さんが訪れたのは、岡山県聴覚障害者福祉協会。国内の競技人口が男女合わせて150人程度というデフバスケの選手発掘が狙いだ。
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デフバスケットボール男子日本代表・上田頼飛監督:
小さい子どもたちの憧れを作っていって、お互いに楽しめる世界を作りたいと思います
岡山県聴覚障害者福祉協会・佐藤美恵子事務局長:
(ろう学校では)1人、2人でできる競技が増えています。陸上とか
岡山県内では、ろう学校の生徒数が年々減っているため、団体競技よりも個人競技を選択する傾向にあり、バスケを選択しづらい現状があった。上田さんは、体験会などを通じてデフバスケを周知したい考えだ。
岡山県聴覚障害者福祉協会・中西厚美会長:
情報が増えて、自分で何をやりたいか選択の幅が広がって、参加するきっかけができることがいいと思います
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デフバスケットボール男子日本代表・上田頼飛監督:
トップアスリートを目指す方もそうですし、これから聴覚障害があるけれども、バスケットを始めたい子どもたちであるとか、そういった人たちの環境づくりに少しでもなれば
![デフバスケットボール男子日本代表の上田頼飛監督](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/4/700mw/img_d437805f5165d0e7361e283be49a7dc8273356.jpg)
スポーツの力を信じて…障害者スポーツの普及へ
オリンピック効果で、普及に期待がかかる障害者スポーツ。
結成から4カ月がたった香川県の障害者野球チームでは、聴覚に障害がある須田さんと他の選手との間で、手話でのコミュニケーションが少しずつ増えていた。
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香川チャレンジャーズの選手:
多様性とか共生社会の実現というのが、障害者スポーツの大きなテーマだと思いますので、(チームの中に)いろんな仲間がいるというのは、とても大事なことだと思います
須田和昌さん:
いろんな障害者が参加できるスポーツが増えてほしいなと思う
![障害者スポーツの普及について語る須田和昌さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/a/700mw/img_8a85e211483276b8fd5678a5c03233c3941258.jpg)
熱戦が繰り広げられた東京オリンピックと、その後に続くパラリンピック。スポーツの力はさまざまな障害への理解にもつながるはずだ。
(岡山放送)