菅首相『重症化リスク7割減』、トランプ氏も頼った抗体カクテル療法とは
「重症化リスクを7割減らす新たな治療薬を政府で確保しているので、この薬についてこれから徹底して使用していく」
菅首相も期待を寄せる「抗体カクテル療法」と呼ばれる点滴薬が、先月、厚生労働省で特例承認された。
抗体カクテル療法は2つの中和抗体、「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を組み合わせた点滴薬で、投与すると抗体が新型コロナウイルスの表面に存在する「スパイクタンパク質」に結合し、ウイルスの増殖を防ぐとされている。重症化リスクを持つ軽症、中等症の患者が投与の対象となっていて、国内で初めて軽症患者に使用可能な治療薬が登場したことになる。
海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクが7割減ったという高い効果が示されており、アメリカのトランプ前大統領が感染した際に投与したことでも知られている。

抗体カクテル、自宅療養者に投与は?
抗体カクテル療法をめぐって、重症化予防への期待が持たれているが、実際の運用には、課題もある。
日本では現状、安定的な供給が難しいことから、軽症、中等症の患者のうち、重症化リスクのある入院患者を投与の対象として限定している。ただ感染の急拡大によって入院ができず、自宅やホテル療養をせざるを得ない人も増えていて、希望する人に投与されない恐れも出ている。
この点について、千葉県の熊谷知事は、重症化リスクのある患者が自宅やホテルで療養しているケースが増えているとして、外来患者などに対する、抗体カクテル療法の活用を求める要望書を厚生労働省に提出。専門家からも外来や在宅で使えるようにすべきという声があがっている。
これ対して、菅首相は、「重症化リスク7割減らす画期的な治療薬について、50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し在宅患者も含めた取り組みを進める」との考えを示している。

効果的な投与タイミングは?週末配送の問題も・・・
また投与時期の問題も指摘されている。
発症7日までの投与が推奨されているが、入院調整が長引いた結果、発症から入院まで時間がかかると効果が期待できなくなってしまう。
さらに、現在は、国が治療薬を買い上げて医療機関に配分する形を取っているが、土日を挟むと、発注から納品まで時間がかかるケースもあるという。
これについて田村厚労相は次のように話している。
田村厚労相:
基本的にご連絡いただいた次の日には配送できるという体制をお願いしているが、土日を挟むとその分遅れるということで、感染から5日以上経っても届かずに、結果的には使ってもあまり効果が期待できないというご心配かと思う。比較的利用される患者さんの多い医療機関、こういうところには一定のストックを置いていただけるようなことも含めて早急に対応してまいりたい。
関係者によると、政府は、抗体カクテル療法について、年内に20万回分の調達を予定しているとのこと。コロナへの切り札となるためには、必要な人に行き届くよう、さらなる体制整備が必要であろう。
フジテレビ社会部・厚生労働省担当 高沢一輝