南海トラフ地震に備えようと、7月29日 静岡県で開かれたオンラインの研修会で、岩手・陸前高田市の男性が講師を務めた。体に障がいがある男性は、皆が助かるための備えの大切さを伝えた。

障がい者の避難の難しさ…震災体験を語る

津波で被災した高田小学校の跡地に完成し、2021年5月から利用が始まった陸前高田市役所。
7月29日、展望ロビーの一角でパソコンの画面に向かい、自らの震災体験を語る男性がいた。

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高橋未宇さん:
地震発生時、机の下に私は隠れることができませんので、補助の先生に頭をかばっていただきました。そのあと揺れが収まってから、補助の先生に抱きかかえられて校庭まで避難しました

市内の高齢者介護施設で働く高橋未宇さん(21)。高橋さんは生まれつき手と足に障がいがあり、日常生活では車いすが欠かせない。

東日本大震災が発生した時は小学5年生。通っていた高田小学校は、校舎の1階まで津波が押し寄せた。
一刻を争う状況の中、体の不自由な高橋さんは教員たちに助けられ、高台に避難することができた。

高橋未宇さん:
当時の先生方の判断と連携は、本当に見事に避難訓練の成果が出た。素晴らしい避難だったと思います

しかし学校より海に近かった自宅は全壊。もし自宅に一人でいたら無事ではなかったと、障がい者としての避難の難しさを振り返る。

高橋未宇さん:
東日本大震災を生き延びたものとして、災害で犠牲者を出したくないという想いが非常に強くありますので、自分の想いを発信する機会をいただけたことが光栄です

画面越しに高橋さんの話に耳を傾けていたのは、静岡・袋井市にある特別支援学校の教職員約100人。この日、障がい者の防災について学ぶ研修会が開かれた。

「体験をした人の言葉は重いもの」

高橋さんが参加するきっかけをもたらしたのは、現在 静岡県内で小学校教諭を務める中川優芽さん。2020年まで2年間、釜石市で防災教育を学んだ中川さんの活動を岩手めんこいテレビの番組で知った高橋さんとの間で、交流が生まれていた。

高橋さんは自らの体験をもとに、防災への想いを伝えた。

高橋未宇さん:
「怖い」のは何をどうしていいかわからないからです。つまり、少しでも災害に対して「こうしよう」と考えると、「怖い」ということに少しずつハードルが下がっていくと考えている。「皆で備えて、皆で生き延びる」という心構えが大事

高橋さんは、障がい者が災害を生き抜くためには、様々な障がいへの理解と地域全体で見守ることが必要と語り掛けた。高橋さんの言葉は”南海トラフに向けた貴重な学び”となったよう。

静岡県立袋井特別支援学校・岩附祥子校長:
実際に体験をした人の言葉は大変重いものです。具体的にご自身が避難したことを、ご自身の言葉で語っていただき、それも大変心強く思った

高橋さんは震災の被災者であり、障がい者でもある自分だからこそ、積極的に防災に関わりたいと考えている。

高橋未宇さん:
自分が車椅子ユーザーということで、自分を含め一人でも多くの人、可能ならば障がいがある人全員が助かる。そこに少しでも近づくことを目指していきたい

(岩手めんこいテレビ)

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