静岡・熱海市の土石流から9月3日で2カ月が過ぎた。死者・行方不明者は27人に上る。
違法に置かれた盛り土が土石流の要因と指摘されているが、発端は大雨だ。過去10年で最大となる499ミリ(7月1日午前4時~発災までの期間雨量)が降った。

静岡県内の土砂災害の危険個所は、実に1万8000カ所に上る。
台風シーズンを迎えたいま、あなたの住まいは大丈夫なのか。

熱海市の土石流 39年ぶりの事態に

7月3日に静岡・熱海市で発生した土石流。住宅、車、住民をも巻き込み、坂の町・熱海の斜面を駆け下りた。

発生は午前10時半頃。

異常事態発生の一報が県に伝えられたのは午前11時45分頃のこと。
その直後、正午に県は災害対策本部を設置。土木分野に精通した難波副知事がすぐ熱海へ向かった。

熱海市を襲った土石流(視聴者撮影)
熱海市を襲った土石流(視聴者撮影)
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午後4時過ぎ、多くの職員が集められ、県庁をあげた対応が始まった。

静岡・川勝平太知事:
12時15分位に斉藤熱海市長から私に連絡があり、伊豆山が崩壊している。家が土石流とともに流され20名弱の人が安否不明の状態であると

幹部職員が集められた(静岡県庁7月3日)
幹部職員が集められた(静岡県庁7月3日)

知事は自衛隊に災害派遣を要請。警察、消防、国交省など全国から救援の手が入ることに。

死者・行方不明者が10人を超える災害。それは県内では39年ぶりの事態だ。

静岡・川勝平太知事は自衛隊に災害派遣を要請
静岡・川勝平太知事は自衛隊に災害派遣を要請

地震に加え、風水害にも備え進めてきたが…

1982年9月に県内を襲った台風18号。
この時、当時の清水市や焼津市などで浸水被害や土砂崩れが相次ぎ、14人が死亡、1人が行方不明となった。

地震に加え、風水害に対してもさまざまな備えを進めてきた静岡県。

死者・行方不明者11人を出した台風18号(1982年)
死者・行方不明者11人を出した台風18号(1982年)

伊豆山地区は土石流の恐れがあるとして、土砂災害防止法に基づく警戒区域に指定してきたが、今回の災害の規模と被害の大きさに県も驚きを隠せない。

静岡県・杉山隆通危機報道官:
私たちの静岡県内でこのような災害があるということは、非常にショッキングな出来事

災害の規模と被害の大きさが行政にショックを与えた
災害の規模と被害の大きさが行政にショックを与えた

1万8000カ所の土砂災害危険箇所

加藤洋司記者:
市役所の屋上から眺めてみると、海沿いや市街地のホテルやビル、そして山がいかに迫っているかよく感じ取れます。土砂災害の危険があると指定されている区域は熱海に301カ所、県内では合わせて1万8000カ所に上ります

熱海市が作った土砂災害ハザードマップ。
伊豆山地区は土砂災害防止法に基づき、土石流のおそれのある「警戒区域」、住宅への危険もある「特別警戒区域」にも指定されている。

熱海市の土砂災害ハザードマップ
熱海市の土砂災害ハザードマップ

警戒レベルを上げる判断「難しかった」

梅雨前線の影響で7月1日から降り続いた雨。
静岡県の35市町のすべてに大雨警報が出され、午前10時の時点で19の市と町が「警戒レベル4・避難指示」を出す中、熱海市は「レベル3・高齢者等避難」に留まっていた。

熱海市・斉藤栄市長:
それまでの雨量と予測、地中の含有量からそういった判断をした

熱海市は雨の降り方、防災気象情報について、3回気象台から電話で連絡を受けていた。

熱海市の警戒レベルは「レベル3・高齢者等避難」に留まった
熱海市の警戒レベルは「レベル3・高齢者等避難」に留まった

静岡県・杉山隆通危機報道官:
雨が降った時の安全確認をもう少し徹底して意識していれば、被害の軽減につながった。これはいま結果として思うことで、その時の判断としては難しかったかと思う。
災害が頻繁に起こっている地域ではないので、確かにハザードマップで警戒区域に指定されていたけれど、これまでの経験値では大きな災害が起こるとは思っていなかったという状況もあります

静岡県・川勝平太知事:
土石流災害の直接の原因は長雨、蓄積型の豪雨。上流部で施行されていた盛り土の崩壊が被害を拡大させたと推測しております(県議会)

被害を拡大させたとされる盛り土については、造成の経緯と合わせ、影響についても詳しい調査が進められている。

自然災害に絶対的な安全安心はない

しかし災害を引き起こした原因そのものが「大雨」であることに変わりない。その対策が必要だ。崖崩れ、地すべり、土石流。こうした土砂災害の危険のある場所は、県内で1万8000カ所に上るからだ。

静岡県・杉山隆通危機報道官:
地震対策はさまざまな対策を講じてきたが、自然災害においては絶対的な安全安心はないことを改めて認識して、防災対策をハードとソフトの面からしっかり整えていかないといけないと感じています

静岡県・杉山隆通危機報道官「自然災害においては絶対的な安全安心はない」
静岡県・杉山隆通危機報道官「自然災害においては絶対的な安全安心はない」

「防災アプリ」の活用

自分の住む地域にどんな危険があるのか。
それを知るために、県は「防災アプリ」の活用を呼び掛けている。ハザードマップの確認に加え、出されている気象警報、川の水位の状態なども確認することができる。

この夏、全国各地で相次ぐ大雨による被害。
熱海で起きた現実を自分の地域のことと受け止め、備えを考える必要がありそうだ。

◆県防災アプリ◆
どの地点にどんな危険があるのか、土砂災害の危険個所1万8213カ所については県のホームページで紹介されている(土砂災害(特別)警戒区域の指定状況)。

またスマートフォン向けの「県防災アプリ」でも危険個所がわかるほか、防災学習やトレーニング、現在地の危険度、警報や水位情報を確認できる。

県防災アプリは無料で利用することができる。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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