内容は「イギリス」・・・異彩放つ中国語ツイート

防衛省の公式ツイッターに突然中国語の文が投稿された。

五輪で活躍する自衛隊員の紹介や静岡県熱海市の土砂災害対応に当たる自衛隊の活動など通常の日本語の投稿に混じって現れたもので、異彩を放つツイートだ。

内容は7月にイギリスのウォレス国防相が来日したことを伝えるもので、アカウントが乗っ取られたわけではない。9月にイギリス空母「クイーン・エリザベス」が日本に寄港することや、「日英両国は、悠久の歴史と伝統を持つ日英防衛協力が『新たな段階』に入ったことを確認した」という日英防衛相会談の成果などが綴られている。

日英防衛相会談の内容が中国語の字幕付きで説明されている
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また関連の動画には全編中国語の字幕が付けられている。

双方は『自由で開かれたインド太平洋地域』のビジョンを実現するために、英国の参加が極めて重要かつ不可逆的であることを確認した」、「日英両国は共通の同盟国であるアメリカと緊密に協力する」「イギリスは、アメリカに次いで我が国とともに戦闘機の合同訓練を行った2カ国目となった」などと日英防衛当局間の緊密ぶりをアピールする内容に終始している。全て中国語にも関わらず、中国については全く触れていない。

日露戦争の連合艦隊旗艦、現在は横須賀で公開されている戦艦「三笠」はイギリスで建造された
戦闘機の日英合同訓練もアピール

防衛省関係者は中国語のツイートについて「広く国際社会に防衛省・自衛隊の活動を伝える目的」と説明するが、誰に向けた発信かは一目瞭然だ。しかも、台湾や香港マカオで使われる「繁体字」ではなく、主に中国大陸で使われる「簡体字」が使われていることからも、中国大陸を念頭に置いた発信だということがわかる。

中国では、ネット規制によりツイッターは通常閲覧出来ないが、多くの人が抜け道であるVPN(仮想プライベートネットワーク)を介して海外のサイトにも接している。実際このツイートに対しても、「驚いた」「中国の属国になりたいのか?」など多くの中国語のリアクションがあり、「中国に向けて発信したいならウェイボアカウントを開くことを勧める」といったご丁寧な助言まで投稿されていた。

中国向けの「日英連携アピール」意味することは

「自由で開かれたインド太平洋地域」とは、安倍前首相が提唱した日本発の外交構想で、アメリカが採用したことで、各国にも浸透していった。「賛同する国とは協力する」として表向きいかなる国も排除していないが、「ルールに基づく国際秩序の確保」や「航行の自由」などを掲げており、中国を念頭に置いているのは明らかだ。中国が掲げる「一帯一路」構想との対抗色を帯びていることから、日英が「自由で開かれたインド太平洋地域」構想に向けて協力をアピールすること自体、裏テーマが中国とも言える。

英空母打撃群のインド太平洋派遣に中国語で歓迎メッセージを発信

防衛省統合幕僚監部も7月公式ツイッターで「イギリス空母打撃群がインド太平洋地域に向かっている。自衛隊は心から今回の派遣を歓迎する」と中国語で投稿した。この動画の中でも中国語の字幕で「イギリスは我が国が推進する『自由で開かれたインド太平洋地域』ビジョンの強力なパートナー」とアピール。また、日本・イギリス・アメリカ・オランダ4か国による海賊対処の共同訓練の映像も掲載し、「グローバル問題において同盟国やパートナー国と各レベルでの緊密な協力が必要だ」と強調している。動画の最後には握手のイラストに4カ国の国旗を並べ、「志を同じくする国とともに、発言や行動を通して引き続き意思を伝えていく」と表明した。全て中国語にも関わらず、中国については一言も触れておらず、明らかに「志を同じくする国」とは異なる扱いをしている。

日米英オランダ4カ国による共同訓練
「志を同じくする国」として並ぶ4カ国の国旗。中国の五星紅旗はない

中国語発信の狙いは・・・

 防衛省はこれまで防衛白書なども英語版、中国語版で発信している。2021版防衛白書では、台湾情勢について踏み込み、中国については「安全保障上の強い懸念」などと指摘しているが、当然ながら中国語版でもそのままの表現で記載している。

中国人民解放軍は各レベルで国外の情報を幅広く収集しており、公開情報も重要な情報源としている。一方で、日本の政治家の発言や、メディア、ネット世論など、中国に関する情報や言論は膨大にあり、中国も何が正確な情報か必ずしも精査しきれていないようなフシがある。中国軍にとっては言うまでもなく米軍が最大の脅威だ。同時にアメリカの同盟国がどれほど足並みを揃えているかなど、その微妙な距離感も注視している。こうした中での中国語での発信には、日本の安全保障政策について、防衛省・自衛隊の考えを正確に中国側に伝えようという狙いがあるようだ。

(フジテレビ政治部デスク・高橋宏朋)

高橋宏朋
高橋宏朋

フジテレビ政治部デスク。大学卒業後、山一証券に入社。米国債ディーラーになるも入社1年目で経営破綻。フジテレビ入社後は、社会部記者、政治部記者、ニュースJAPANプログラムディレクター、FNN北京支局長などを経て現職。

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